Sad Echo編
第三十話 Sad Echo
「そ、そんなの急に言われても!!」
「ビームだ!奴ら、ビーム撃ってくるぞ!」
「うだうだ言わない!振り切るわよ!」
グン!と首を持っていかれそうな操縦だ。
しかし贅沢は言っていられない。
二発目のビームをスレスレで避け、その衝撃を利用してなんとか逃げ切った。……いや、見逃してくれたのだろうか。
「ムジナ、アンカーを!」
「はーい!」
ムジナが放り投げたアンカーは見事に洞窟の入り口付近にかかったが、引っ張られた衝撃で俺とムジナの意識は吹き飛んでしまった……。
__________
誰か……女の子が洞窟に入ったようだ。
中破した木製の大きな船が不時着した。
あぁ、また客だ。
宝が力を発現するぞ。
何か良いものはないかと、俺は船の外側に刀を刺してロッククライミングの感覚で乗り込んだ。
床は先程まで浸水していたのか、少しだけ濡れている。
樽が転がり、静まり返っていた。
「……誰か倒れてるのか」
床にセーラー服を着た男の子と、コートを着た男の子が倒れていた。
その顔を見た俺は驚いた。
「君たちは……!」
俺は刀をしまい、二人の体を交互に揺さぶる。
その体は冷たかった。それに加えて木の破片で怪我もしていた。
「おい、起きろ!」
「……」
「う、うぅ……」
黒髪の少年だけが目を覚ました。
頭を強く打ってしまったのか、俺が誰だかわかっていない様子だった。
「動けるか?」
「ギリギリ……」
「それはよかった。この子も起こしてくれ」
「うん……って、月光さん!?……夢じゃない?」
「夢じゃないよ」
「……ん……」
無事に赤髪の少年も目が覚めた。
しかし、すぐに苦痛に顔を歪ませた。
「う、ぐ……!……は……ぎゅぅう……」
「ヘラ!?」
歯を食いしばり、ギュッと目を閉じる。
その体は震えていた。
「脇腹に木片か……。この船に包帯は?」
「あったはずだよ。ヘラの裁縫キットに入ってたと思う」
「ほう、お裁縫をするのか……じゃ、礼代わりに何か作ってもらわないとな。ダッシュで取ってきてくれないか」
「任せて!」
多少フラフラしながら遠ざかっていく姿を見たあと、ヘラと呼ばれたこの赤髪の少年の容態を見続けた。
人間ではないからだろうか。少しだけ回復しており、表情もさっきよりかはマシになっていた。
「……ヘラ、というのか。皮肉にも神と同じ名前なのだな」
「ぅ……だ、れ……」
「話さない方がいい。今はゆっくりしていろ」
「……ん……」
無抵抗だ。
ここまで弱りきっているなんて、誰に攻撃されたのだろうか……。
「持ってきた!」
「貸してみなさい」
「……あ……」
包帯を受け取ろうと手を差し伸べたが、黒髪の少年は、渡すのを渋った。
「どうしたんだい?信じられないのかい?」
「……う……」
……静かに頷いた。
確かに第一印象は最悪だった。
普通この見た目の年齢の子供が見たらトラウマになるだろう。
それを引き起こした男に助けを求めるのは馬鹿がすることだろう。
……だが、今はそれにすがる他ない。
それは、彼もわかっていることだった。
「……はい。変なことしないでね」
「しないしない。……さぁ、抜くよ。深く息を吐いて……そうだ、上手だ」
慣れた手つきで包帯を巻いていく。
幸い、消毒液を常備していたので助かった。
「よく頑張ったな」
ヘラの頭を優しく撫でる。
彼は弱々しく笑い返してくれた。
あの警戒していた子がここまで心を許すとは……これを知ったらあとでどんな反応をするのかを見てみたいところだ。
さて、と思い、右を見るともう一人の男の子が頬を膨らましていた。
「オレも頑張ったのに、ヘラだけずるいー!」
「はは、君もよく頑張ってくれたよ。えらいえらい」
「ふふーん♪」
……満足したようだ。
というか、こんなことをやっているほど俺は暇ではない。
そう言おうとしたその時だった。
『お集まりのお客様方。そろそろ上映の時間になります。ご覧になられる方、そうでない方も速やかに洞く……クツ……にニニ____』
「な、なに!?」
「くそ、始まるか!二人とも、掴まれ!」
「だ、だからなんだってんだよー!!」
俺は自分で動くことができない、できたとしてもまともに掴むことができないヘラを庇った直後に洞窟の中に吸い込まれた。
抗うことはできない。それは物理的な問題ではなく、概念的な力だからだ。
洞窟に入ったあと、後ろを振り向く。
入り口は崩壊し、出られなくなっていた。
「え?え!?」
「落ち着きな、ムジナ。ただ洞窟に吸い込まれただけだ」
「吸い込まれた!?」
「あー……とにかくそういうものらしいんだ」
ぐったりとしているヘラを背負い、とりあえず洞窟の奥を目指すことにした。
「ねぇ、月光さんはここに来たことあるの?」
「……ついさっき来たばかりだ。ここにある宝を求めていてな。入ろうとしたら君たちの船が墜落してきたんだ」
「そうだったんだ……。あ!もう一つ船見なかった?」
「船?……いや……見なかったな。おじさんは落ちてきた音で初めて船が来たとわかったんだよ」
「そっかぁ……」
ムジナは残念そうな顔をし、洞窟内をキョロキョロと見回した。
すると、ビクッ!と体が跳ねた直後、俺にしがみついてきた。
「うわわわ!月光さん!!」
「……始まったか。はぐれないようにね」
「う、うん」
『お集まりの皆さん!ようこそ!トゥルースシアターへ!』
爆音の女性の声のアナウンスが流れる。そして洞窟という最悪の場所でそれは響き渡った。
「だー!!うるさーい!!!」
『本日上映しますは……史上最悪・星殺しの裏切り者、アシリア・L・オリオンの物語です!』
「アシリア!?それに、オリオンって____」
ムジナの声は、アナウンスのあと間髪入れずに巻き起こった歓声に掻き消された。
「誰が言ってるんだ!どうしてアシリアがオリオンなんだ!答えろ!」
「……ダメだ、ムジナ。これは宝が見せた幻。でも、真実を映す鏡でもある。だから……」
ムジナたちが何を目的に旅をしているのかはわからないが、この『Sad Echo』にある宝の特性からして「アシリアは何かを裏切り、そしてその星を滅ぼすためにムジナたちを仲間にした」と伝えているのだ。
……となると、答えは一つ!
「アシリアってのを追いかけるぞ!この星はムジナたちの敵だ。この星がそう訴えてるからな」
今やこの星は汚染されてしまっているようだ。
もしムジナたちが正義のために戦っているというのなら、この星の宝は悪の代弁者だ。
この星が敵だと見なした人物をとことん悪に見立て、語り継ぐ。それがこの『Sad Echo』の役割だ。
危険すぎるということで、宇宙に放り出された宝から溢れ出した膨大な力が地を生み出し、洞窟という形を作り、そして小惑星にまで成長した。……事前調査で知ったことだ。
「わあっ!さっきのだよ、月光さん!」
ムジナが指す先には、長方形のモニターがあった。しかも一つではなく洞窟の壁一面に、だ。
もちろん機械のモニターではなく、宝が生み出した触るとすり抜けてしまう類いのモニターだ。
水色の髪の少女が、彼女のお父さんであろう男に叩かれている映像が流れている。
同時に、それに似合わないトランペット主体の讃美歌のような華やかな曲が流れている。
先程のムジナの反応からして、その「オリオン」とかいう組織が反乱分子を痛め付けているという内容なのだろうか。
俺でも目を背けたくなるような内容を、こんな少年たちに見せて面白がっているのだろうか。
あいにく、この洞窟を爆破できるようなダイナマイトは持ち合わせていない。ならばやることは一つだ。
「ムジナ、ヘラ。耳を塞ぎなさい。それか目を閉じな。こんな最悪なものは見なくていい。教育に悪いからな」
そう言って着物の帯を外し、ヘラを固定した。そして有無を言わさずムジナを持ち上げた。
「!?」
帯が無くなったことにより着物自体を固定するものが心許なくなったが、今は我慢だ。
心配そうな顔をして、それでも体をよじるムジナ。俺は彼にぎこちない笑みを向け、言い放った。
「暴れんなよ……!今さら人助けなんてしてもお天道サンは俺を許しちゃあくれないが……今回だけ大サービスだ。行くぞ、二人とも!!」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




