ハードコア編4
第十二話 緩やかなひととき
「____ってことなんだ!」
オレはまるで異世界のような反転地域の話をした。理解できていないヘラは時折アシリアにアイコンタクトで助けを求めていたが、残念ながらアシリアもあの光景を見たので、諦めろとばかりに首を横に振った。
「聞いてた?ヘラ」
「信じらんねぇ……馬鹿馬鹿しい。だが、アシリアが求めてるアンカーがそこにあるとすると行くしかないよな。完全な防御を誇ってるならそこに置かれてても仕方ないし」
「さすが!話が早いね!早速明日にでも行こう!時間無いんでしょ、アシリア」
「え、えぇ……いいの?準備とかしないといけないんじゃない?」
「大丈夫です。来るべき時のために準備はしておきました。お手数ですが、同盟の魔の手からハードコアを守ってください」
アンドロイドが頭を下げる。
オレはヘラの顔を見たあと、アンドロイドの手を握って微笑んだ。
__________
翌日、朝六時。
俺は商人ちゃんに聞いた時計塔を見ようと部屋の窓から外を覗いていた。
まだ二人は眠っている。できるだけ起こさないようにしないといけない。
と、そこでアンドロイドが肩を叩いてきた。アンドロイドには睡眠というものはないのだろうか。
「お早いのですね、ヘラさん」
「だろ。……お前、俺をスキャンしたとき、どう思った?」
「はい?」
「異常とかじゃなくて、ステータス的に、だ」
「非常にハイスペックだと思いましたよ。ですが……無理はなさらないようにだけお願いします」
「……やっぱお前もそう思うか」
俺はアンドロイドの方から窓の方へ向き直った。
人工的な太陽だろうか、巨大な光源が工業地帯から顔を出してきた。
それだけでもここは宇宙のどこかの星だということ、地球とは別の場所だと思い知らされる。
下手したら帰れないデスマッチ。どうしてこんなことに首を突っ込んでしまったのだろうか。どこで道を誤ったのだろうか。
「精神的な不安定を確認。二度寝を推奨します」
「お気遣いありがと。それはお前の言う『ご主人様』にだけ向けとけ」
「それはできません。ご主人様からはパルスが確認されませんので」
____それってもうアンドロイドって言ってるのと同じな気がするが……。
「……何かご不明な点でも?」
「お前の全てが不明な点だよ、もう……」
一度分解してイリアかマリフに明け渡したいほどだ。
俺は窓から離れ、暖かみも何もない鉄の椅子に座ってアシリアの地図を広げ、これから行くところの予習を始めた。
「ヘラさん、私にも一つ不明な点があるのです」
「ん?」
「その地図ですが、どうしてアシリアさんが持っていらしたのでしょうか」
「俺にもわからん。つい最近知り合ったばっかりだしな」
アシリアには不明な点しかない。
宇宙人なのだとしたら、どの星からやって来たのか、そもそも本当に宇宙人なのか。
空飛ぶ木製の船はどこから仕入れてきたのか。まず宇宙に木というものがあったことに驚きだ。
……疑い出したらキリがない。
「……そうですか。では、私は食堂にて朝食を用意してきますので、八時くらいになったらみなさんを連れてきてくださいね」
アンドロイドはお辞儀をし、部屋の外に出ていった。
宇宙に出て、初めてのまともな相手との戦いだ。気を引き締めないといけない。
あの聖女はノーカンとしておこう。あれは思い出したくない。リメルアのように狂っていたから。
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朝八時半。
オレはヘラに揺さぶられて目を覚ました。
ヘラは八時から起こしていたのに全然起きなかったぞ、ちょっと体調を見直したらどうだ、と言ってきた。
……だからだろうか、夢の最後の方が悪夢だったのは。
上に乗られていると悪夢を見ると言われている。
胸の上に乗られているのは「インキュバス現象」と呼ばれているらしいが、ヘラに関してはモノホンのインキュバスだ。おのれ、夢魔め。これ以上ないリアルなやつじゃないか。
「朝ごはん用意してもらってるから早く行ってこい」
「んん……ヘラは?」
「食べた」
「アシリアは?」
「さっき行った。あとはお前だけだぞ。急ぎすぎて喉に詰まらせないようにな」
「うーん、急かしてるのか心配してるのか……どっちなんだ……」
ヘラに背中を押されながら廊下を進む。
……と、途中であの車椅子のおじいちゃんに出会った。
相変わらず口以外が機械になってしまっている。もしかすると仮面かもしれない。
「おはよう、おじいちゃん!おじいちゃんはご飯食べたの?」
「おぉ、ムジナとヘラ……と言ったかな?ずいぶんとうなされておったみたいじゃのう」
「あ、わかっちゃった?ヘラってばひどいんだよ!人が寝てるのに上に乗ってくるんだ!」
「俺のせいかよ」
「だってぇー!」
「仲が良いのは良いことじゃ。O-57が待っている。朝食を食べてくるといい」
おじいちゃんも促してくる。
オレだって早く食べて出発したいのに……。
「……ムジナは行っててくれ。さっきも言ったが、俺はもう食べた。このおじいさんと話させてくれ」
「うん、いいよ。またあとでね!」
「……さて。まずは時計塔のことだが____」
階段を下り、食堂に向かう。
ドアを開けると、ステンレス製の食器が数枚並んでいた。さすがハードコア。目がチカチカする。
「おはようございます、ムジナさん」
アンドロイドのO-57が一つの大きなピンクの三つ編みを揺らし、振り向く。
彼女はエプロンを身に付けていた。
「わぁ、エプロン姿も似合ってるね!」
「ありがとうございます……?」
「あ、そっか……欠如してるって言ってたもんね。でも似合ってるのは間違いじゃないよ!……さーて、ごはんは何かなー?」
「ふふ。ムジナさん、昨日と同じく、地球のデータを見本とさせていただいた食料を出させていただきました。お口に合えばよろしいのですが……」
「努力してもらったのなら、それ相応の反応をする。それが生き物ってものなんだよ!ありがとね!」
オレは部屋と同じ鉄の椅子に座り、ナイフとフォークでステンレス製のお皿に乗ったパンケーキを切って頬張った。
お店に出してもおかしくないほど美味しい。
これがデータという名のうろ覚えとは信じ難い。
「んー、美味しい!スクーレとかが好きそう!」
「こちらはごはんというよりスイーツというものに近いようです。情報によると、女性に人気だとか」
「だろうね!でもこれだったらオレも大好きだよ!」
「そうですか。それはなによりです」
あとでこっそり商人ちゃんにも教えてあげたいな……って、あの情報通ならオレらより詳しそう。
あの帽子とか結構おしゃれだから何も気にせずにいろんなお店に行ってそう。
「____ムジナ、食べ終わったか?」
しばらくしてヘラが部屋に入ってきた。
その表情は真剣そのものだった。
「ヘラ!こんなに美味しいなら早く起こしてくれても良かったのにー」
「だ、れ、が!いつまで経っても起きなかったんだ!!」
「ごめんってばー!アシリアも、いつまでも怒ってないで行こうって言ってよ!」
「ムジナが悪いんでしょ?」
「ひゃー!ひっどぉーい!」
オレたちが騒いでいると、アンドロイドがニコニコ笑いながらやって来た。
「まぁまぁ、みなさん。出発の準備は出来ているようなので、バイクをお出ししますね。バイクには私のチップを入れておきますので操作の心配はありません」
「「「あぁ、あの千手観音……」」」
「みなさん、その話は忘れてください!!それに息が合いすぎですよ!」
だってインパクトが強すぎたんだもん、と三人で顔を見合わせる。
もし地球の技術が宇宙旅行まで追い付いたならば、真っ先に『ヤバすぎるバイクの星』とパンフレットに載るはずだ。
「よし、じゃあ出発だ!みんなでハードコアを守るぞー!おー!」
どうも、グラニュー糖*です!
現在、「怪奇討伐部完結直前・pixivと同じところまで進める祭り」を開催しております!
こっちでは表紙を載せられないことが本当に残念ですが、楽しんでいただけると幸いです。
本当はイラストを見て読むほうが良いんですけどね!
なお、pixivからそのままドンしてるのでルビやら何やかんやがpixivのコマンドのままになっている場合があります。それを見つけた際はお手数ですがお知らせしていただくととても嬉しいです。もちろんコメントなどもお待ちしております!
ではでは〜




