27 初めての態度
宝探しゲームが始まり、私たち生徒会のメンバーは見回りをしています。イーリス殿下と、フラン様は講堂で宝を見つけた生徒の対応をすることになっていますので、講堂に待機しています。
「ヴィル様は私のせいで、生徒会のメンバーに含まれてしまっている感じになってしまってますね...申し訳ありません...」
「いえ、楽しんでやらせてもらってますし、簡単なパシり程度の仕事ですから、気にしないで下さい」
「はい、ありがとうございます!」
私が学院に入学してからというもの、ヴィル様は必ずいるので、イーリス殿下に指令を出されることが多く、書類の配達や私と行動するときの荷物持ちなどをしてもらっています。
申し訳ないという気持ちがありますがと、一緒に作業が出来て嬉しいという気持ちもあります。
今回もイーリス殿下の指令で、見回りのメンバーに組み込まれたヴィル様は、私と一緒に学舎棟を見回っています。学舎棟は他にテオバルト様が見回りをしていて、ギュータス様とフリード様は特別棟の見回りをしています。
「先輩が後輩たちに教室の説明をしたり、貴族の方々が奨学生枠で入った平民の方たちと問題を解いたり、いい感じにコミュニケーション取れていますね」
「はい‼ちゃんと計画した通り、コミュニケーションが取れてて嬉しいです‼」
「良かったですね」
私が笑顔で返事をすると、ヴィル様も微笑みながら頭を撫でて下さいました。
その後も学舎の棟を見回り、終了まで15分というところで、遠くの方に一人でいる人が見え、近くに急いで行き声をかけました。
「大丈夫ですか?」
「あ!ヴィルさん!私チームの人と離れちゃったんですが...きゃっ!!」
声をかけると相手の方が振り返ったことで、マリーレーヌさんだと分かりました。マリーレーヌさんは私の後ろにいるヴィル様に駆け寄ろうとして、転んでしまわれました。
「大丈夫ですか?マリーレーヌさん」
「...大丈夫です‼」
私がまた声をかけると、マリーレーヌさんは私を睨み付けながら「大丈夫」と言われましたが、立ち上がろうとしませんでした。
「足とか捻ってしまったのですか?手を貸しますよ?」
「...リーナ、私がやるよ」
「ありがとうございます‼」
私とマリーレーヌさんとの一連のやり取りを聞いていたヴィル様が、顔をしかめながら、マリーレーヌさんに手を出していました。
それに喜びながら、マリーレーヌさんはヴィル様の手をつかみました。
「ヴィルさん、私と一緒に保険室へ行ってもらってもいいですか?」
「...はい、...では...行きましょう...」
「ヴィル様?」
ヴィル様が私に声をかけずにどこかへ行かれることが、今までなかったので驚いてしまいました。さらに、ヴ ィル様に声をかけるとヴィル様は振り返ることもせず、マリーレーヌさんの手を引いて、歩いて行かれました。
代わりにマリーレーヌさんが、後ろを振り返り私のことを見て笑っていました。
ヴィル様とマリーレーヌさんが居なくなってしまい、ヴィル様の態度がおかしかったことを考えながら、歩いているとギュータス様とテオバルト様とフリード様が私のところにやって来ました。
「お~い、もう終わりの時間だよ~。特別棟は生徒が居なくなったのが確認済みで、こっちも終わったから戻ろ~」
「え、...あ、はい‼」
「ど、どうしたの。元気な、無いようだし。ヴ、ヴィルさんは?」
「大丈夫です!元気ですよ~。ヴィル様は転んでしまった生徒さんに保険室まで、付き添っているんですよ~」
先程のヴィル様の様子が気になってしまい、空元気の状態でしたが、「そうなんだ、じゃあ、とりあえず講堂に戻ろっか」とギュータス様に言われ、講堂に皆で戻りました。




