【5人全員】短編は難しい・2
午後9時00分。
「せーのっ!」
折った紙切れを広げる真央以外の4人。
「私が起か……」
額に手を当てる紗弥菜。その横では上機嫌の香夏がいた。
「私は承」
「薫は転だね」
薫は眉間にシワを寄せている未波を見やる。
「アタシが結はなぁ~……気楽に書きたいのにぃ」
未波は唇をとがらせて、テーブルに突っ伏す。離れた所でノートパソコンに向かっていた真央が、顔を出してきた。
「それじゃ、決まったところでみなさん、がんばってくださいねっ!!」
紗弥菜が手のひらを広げ、真央の顔面をわしづかみにした。それから、指先に力を込める。
「いいからアンタは明日の9時までのレポートを仕上げなさい」
「痛い痛いっ……すいません……がんばります……」
* * *
「テーマはどうする?」
紗弥菜が3人に水を向ける。すぐに薫と未波の意見が一致した。
「男はいらない」
「はいはい。香夏は何かある?」
「特には……ただ、みんなの足を引っ張りそうだなぁ」
香夏の顔色が冴えない。未波は香夏の背中を軽く叩く。
「キョー姉、ノープロノープロ! だんだん慣れてきたんだし、思いついた単語をテンプレにはめ込む! それでバッチグーでヨッチャンよ」
「うん、まあ……ね。ありがとう、みぃちゃん」
「ほら、テーマどうするのよ?」
紗弥菜が長くなりそうなやりとりをぶった切る。薫が待ってましたとばかりに提案する。
「ちょうどカレー鍋を食べたんだし、カレーでもいいんじゃないかしら?」
「いいですね。んで、今度はジャンルだけど……」
「恋愛もの!」
今度は香夏と未波の声がそろう。
「じゃあ、それで進めてみようか」
* * *
午後11時30分。
「文章を組み合わせてみたけど……まあ、いっか」
紗弥菜が妥協すると、3人も一斉うなずいた。
「最高の最低限を果たせたつもりよ」
薫が胸を張ると、香夏も同意した。
「最善は尽くしたつもり」
「アタシは不完全燃焼かなー。やっぱ、ホラー要素分がたりないって」
「どうしたかったの?」
「『隠し味はあたしの血♪』とか書きたかった」
「その一文ですべてが台無しだわ。そういえば、真央は――」
「寝てるわよ」
薫は、座ったままの体勢の真央を横に寝かせ、頭の下に座布団を置く。
「レポートはできてます?」
「一応、文字数はたりてるみたいだけど……あまりにも無茶苦茶な構成だから、直さなきゃいけなさそう」
「もう……何やってんだか」
「こっちは薫がやっておくから、みんなは休んでていいわよ」
「ありがとうございます。とりあえず、できたブツを印刷してカバンに忍ばせておきますね」
「罪滅ぼししないと」
「……がんばってください」




