車酔いの少女11 ~さわやかな?朝~
視点がかなめ→森川になった。ヘンだけどそのまま投稿します。
森川との付き合っていることがバレてしまった翌日の朝練。
かなめはいつものバスに乗り、いつものように本を読み、いつものようにバスに酔った。
バレてしまった部員と会うのが照れくさいのだが、それを表に出すのがなんとなくイヤでいつもの通りに振る舞ったら…結果はやはり車酔いだった。
森川は途中からバスに乗り込んでくるが、本に夢中なかなめは気づかない。これもいつものことだ。
「俺を気にしていたら、内容が頭に入らないだろうから、気にするな」
出来た彼氏がそう言ってくれたので、その日もかなめは森川に気付かず本を読んでいた。
森川は一人用の座席に座っているかなめの前に立つと、彼女の読んでいる本をチェックしているのだが、かなめは気づいていない。
今読んでいるのは文字が小さく、いつもより早めに酔うだろうな…と思っていると、かなめは5つ前のバス停で本を閉じた。
いつも3つ前まで読み続けるので、森川のカンは当たったようだ。
森川は降車ボタンを押すと「降りるぞ」と小さくつぶやいた。
かなめは、本をカバンにしまうとノロノロと定期券を取りだす。
そこは市役所前で6時代の時間帯では他に降りる人もいなかった。
「おはよう」
「おはよう、森川くん……」
森川は、かなめと付き合い始めてから、数個前のバス停で降りるようにしていた。
二人きりの時間を作りたいということもあるが、少しあるけばかなめの車酔いもマシになるからだ。
学校まで乗ってしまうとかなめは部活で使い物にならない。
以前学校前で降りて部活に行くと、大友が「どうした、水野!? 顔が真っ白を通り越して紫がかっているぞ!?」と大声で叫び、野々宮がかなめをお姫様だっこして保健室に連れて行った経緯がある。
かなめと付き合っているのは自分なのに、なぜ野々宮が名前を呼び合ったり、お姫様抱っこ出来たりするのか、内心不本意であったのだが、昨日ハッキリ言ったので、野々宮も遠慮するだろう…いや、遠慮するタイプじゃないから、今後は意識的に邪魔する可能性が高い。
野々宮のかなめに対する態度は「小動物を思い切り構う小学生」的なものだと森川は思っている。実際そうだろう。
小動物なら、野々宮から逃げるが、かなめは野々宮の押し付けがましい行為に戸惑い、受領している。
彼女の中では野々宮は『すごくフレンドリーな部長』といったところか。
かなめは告白でもされない限り、男子を異性として意識しないタイプだ。
森川もハッキリ言うべきか思案したのだが、なんとなく波長で気づき合い、なんとなく付き合いはじめた。
(……いずれ言わなくてはいけないとは思っていたが、今でもいいんじゃないか?)
森川はかなめをみた。
車酔いで顔は白く、目はうつろだ。
車酔いであって、病気じゃない。ベストタイミングではないが、バッドタイミングでもない。人通りもなく、さわやかな朝だ。
朝のかなめは車酔いのせいで、動きと返事は鈍いが、頭は働いている。
特に返事をもらうつもりではないし(観察していれば彼女の好意は感じられるし)、やはり言っておこう。
「俺はかなめが好きだぞ」
かなめの歩みが止まった。
森川は3歩分ほど距離の空いた状態で振り返って、さらに言った。
「大事な彼女だ」
真っ白かったかなめの頬に、少し赤味がさした。
「………ありがとう」
「ああ」
森川はスッキリして歩き始め、かなめも後から付いてきた。
部室で「おい、水野!? 顔が赤い通り越して赤黒いぞ!?」と大友が騒ぐまであと15分。
勢いで書いたので、改稿するかもしれません。
かなめが読んでいる本は『ジェノサイド』。
昨日読み終わったので、記念☆ 中学生には難しいことは承知だ!