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第六話「輪廻外の決戦」

最近書くモチベーションが上がらなかったのですが、この話の構成もすべて固まってようやく書き終わりました。

「牧野、野伊。今回の任務は国内最王手の塾を潰すことか。」



ここは国内最王手の魔術塾、「染井魔術塾 白樺キャンパス」だ。

牧野と野伊は見るからにもはや撲滅組織で成り上がる意思など微塵とも感じられないが、生き残る為には上に従うしかないのだろう。



「夏目、野守、何の用?もうあんたたちには僕たちの邪魔する意味なんてないと思うけど?」


「魔術撲滅は気に入らないけどね。私たち、これからあんたたちのボスを倒しに行きたいの。」


「正気か?お前ら。居場所は教えないぞ。」


「なら力ずくで教えさせるよ。」


「僕たちにとって十年前のリベンジだね!」

「俺たちの腕は確実に上がっている。組織のカリキュラムの訓練をしていないお前らより圧倒的に勝っているはずだ。」


「やってみないと分からんよな。五分で終わらせてやるからちょっと時間をくれないか。」


「過度な自信は慢心だぞ。まあ、五分くらいなら付き合ってやろうか。」




―――――とある廃墟 二階



「先手は譲ろう。こっちは後手が有利な戦法に変わったからな。」


「後手が有利な魔術なんて聞いたことないけどー?舐められてるのかな。」

「こっちが五分で勝つかもな。行くぞ、晶。」


牧野と晶は詠唱を始める。

続いて、玲音も詠唱。俺は魔術を使わず前線に立つ。


牧野は物理にも特化しているが、片手に魔導書を持っている上視線の向かう先は魔導書だ。

俺は二刀流を完全に会得した上、更に新たな戦法をたくさん盛り込んである。

俺たちは研究者になったとはいえ、戦闘にもかなり気を配っている。

目指すは森の会長でも雲のボスでもない。人間を超えた、魔術起動装置相手に勝つことだ。


「五分もかかんないかもね!」


牧野は俺たちに向けて魔術弾を大量に発射する。

野伊は俺たちの両端から魔術弾を大量に発射する。


向こうのコンビネーションは最強だ。だがこちらも負けれられない。


玲音の詠唱は終わっている。

玲音はバリアを張り、前方に向けて道を作る形に変形させる。


俺は前方から向かってくる魔術弾を二本のナイフで斬りながら突進する。

そして、二本のナイフを投擲。自分の意志で起爆させる。

十年前は衝撃によって起爆する形に落ち着いたが、今の瞬発力、思考速度なら自分の意志で起爆させるタイプのほうが使い勝手がいい。


二本のナイフによる連鎖爆撃が始まる。


「十年前と戦法が全く変わっていないな。まあ当然か。」



投擲時に受け流した魔術弾は、玲音が処理する。


「私がナイフで本気で戦うのはこれが初めてだね!焦らなければこの程度の速さの弾は斬れる!」


玲音は危険な弾だけを選別し、次々斬っていく。


「キャスターがナイフを使うだって?あんた恥ずかしくないの?」


玲音は魔導書を使わずに詠唱し、ナイフを三本作る。

そして、持っている一本は投擲する。


「連鎖爆撃の弱点は高密度持続攻撃。今晶が詠唱しているのはそれだろうな。」


「戦法が変わってないのはそっちなんじゃないのか?」


晶の詠唱が終わり、高密度のビームが向かってくる。

十年前の俺らならピンチだったが、今はこの程度どうってことはない。

玲音の投げたナイフが連鎖爆撃の中に触れる。


「ビームの方向を間違えたようね!」


玲音の投げたナイフはクラッキング用ナイフ。それも昔のとは違う。

連鎖爆撃に仕込まれたリーダーによって読み込んだ魔術を、バリアが全て防がれる前に俺が解読し、俺がクラッキングの魔術を変更する。

俺が魔導書も使わずにほんの少しの詠唱をするだけでクラッキング内容を変更できるように作られているのだ。

初心者向けのクラッキング魔術システムをさらに洗練させたものである。


「もうビームをクラッキングされた!?」


俺は二本のナイフで牧野に立ち向かう。

玲音は一本のナイフで野伊に立ち向かう。


良い感じに相手の魔術装甲が壊れてきたところで、玲音が風圧の魔術を魔導書を使わずに詠唱する。


牧野と野伊は吹き飛び、壁に体を強打した。



「もう降参したほうが身のためだぞ。ボスの居場所はどこだ。」


「ボスは当然、一か所にずっと留まるなんてことは絶対にしない。だから別に教えても俺たちが殺されるとかいうことはないんだがな。」

「ボスに仇を討ってもらうしかないね、これ・・・ 言っとくけど、あんたたち死ぬよ?ボスを舐めてるでしょ。」


「森の会長と互角かそれ以上。俺たちはもう十年前の会長の強さを超えている。」


「もう勝手にしろ。場所はここだ。」


牧野は魔術メッセージで居場所を伝える。

距離はかなり遠いが、十年前の俺たちとは移動速度が桁違いだ。

さくらの魔術を最高の状態で保つためにも、急いで行かなければ。

あいつら二人相手にさくらの魔術膜をほとんど消費しなかったから、まだまだ耐久力は残っているはずだ。



―――――高級ホテル 秘密の地下室



「あれ、お父さん!?」


なんと、野守会長がそこにいた。


「夏目、玲音、来たか。ここから先は危険だぞ、逃げたほうがいい。」



前方から、異様に身長が高くプロレスラーのような人間が迫ってくる。


「よぉ、野守のもり 宗一そういち。どうやら、今日が最終決戦になるらしいな。」


「ここで最終決戦に持ち込んだのはお前だな、東雲しののめ 竜郎たつろう。おかげで単騎で挑むことができた。」


「森の皆は全員防衛ってわけだな。いいじゃねぇか、一対一で思いっきりやろうぜ?」


防衛・・・? まさか、襲撃か?


「防衛?森の皆は無事なの!?」

「安心しろ、玲音。森は数時間耐えられるうえ、こいつを倒せば雲は壊滅だ。」


「つまり、俺が生き残れば森は壊滅ってわけか。遅延戦に持ち込んでやりてぇところだが、お前のその面、早くぶっ潰してやりてぇんだよな!」


雲のボス、東雲が詠唱を始める。

それと同時に森の会長、宗一も詠唱を始める。

もちろん玲音も詠唱をしている。


先に宗一が詠唱を終える。バリアの魔法だ。

次に東雲。体中に強い電力を纏わせる。

そして玲音。バリアの魔法で俺と玲音を守る。


流石は雲のボスだ。宗一相手の戦法を分かり切っている。


宗一は再び詠唱を始める。

東雲は体中の電力をうまく使い、バリアに向けて体術と爆発を混ぜた強力な攻撃を何発も打ち込む。


宗一の詠唱は一瞬で終わった。水を生成する魔法である。


「放電させるつもりか。でも甘かったな。こっちの詠唱はもう終わる。」


東雲は体術と電力の攻撃をしながら詠唱を行っていたのだ。レベルが高すぎる。


無音のものすごい爆発。全ての電力を含めた爆撃だろう。宗一のバリアはほんんど破壊された。


宗一が詠唱を始めるが、詠唱が終わる前に東雲が宗一に強い一撃を与える。

このままでは宗一が危ない。俺はこの展開を予想していた。


「おらぁっ!」


俺はナイフ二本で東雲の攻撃を宗一から守る。


「夏目、何を!」


玲音は宗一を左へ吹き飛ばす。


ナイフ二本は当然折れる。だが、折れる瞬間まで耐えられれば十分。連鎖爆撃の始まりだ。

さくらの防護膜で自分の爆撃を耐える。

東雲も爆撃を喰らうが、吹き飛ぶだけで傷一つ無い。防護膜が相当強力なのだろう。


宗一の魔術弾が東雲に向けて発射されるが、拳法で全て破壊される。


全く勝ち目が見えない。宗一が居てこれだ。悪の組織のボスを完全に舐めていた。

こんなんでは、起動装置相手に勝つなんて到底無理だ。



それから三分ほど攻撃戦を続けた。持久戦は意味が無いからだ。


「そろそろ終わりにしようじゃねぇか。お前らの戦法、しぶといくせに単純すぎて飽きてきたぞ。」



「終わるのはそっちよ。」



東雲の強力なビーム攻撃が宗一のバリアを貫くとき、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。


謎の衝撃波の魔術が東雲のビームを押し返す。



「お前、あの被験者だな?なんだこの魔術、見たことねぇぞ。」


「瑠音・・・ それ、さくらの魔術!?」


瑠音だ。なんと、さくらの魔術に似たものを使ったのだ。



「全部思い出したよ。悲しい記憶、苦しい記憶、辛い記憶、そして魔術の記憶。全てを思い出した。さっきのは折田が発動させようとして失敗した魔術よ。」


「瑠音!思い出したのか!」


「私の名前は大橋おおはし 瑠音るね。幼い頃に火災で両親を失ったから親の記憶はないの。大橋って苗字は父のもの。」



「起動装置経験者はこんなに強いのか・・・!これを知った上でもっと生きられれば、雲散霧消に革命が起きただろうに・・・!」


「これ以上私みたいな子を増やすなんて絶対に許さない。ここで死になさい。」


瑠音は魔導書も使わずに短い時間で詠唱を終える。

ものすごい衝撃波。東雲に為す術はなかった。


「魔術は・・・ この世から・・・ 消しさ・・・ うっ。」



東雲との対決は、瑠音一人で倒すという結果で終わった。

だが、それができたのは俺たちが倒れずにに戦い続けられたからだろう。

こうして、雲散霧消という組織は、この世から消えて無くなった。




大橋おおはし 瑠音るね


3歳の時に、両親を火災で亡くす。

その後、孤児院で暮らし、キャスティング能力があったため、中学から魔術学校に通う。

キャスターとして非常に良い成績を残していた瑠音だったが、スランプで伸び悩む時期が続き、それからキャスターとしての腕も落ちていった。

そこに折田が漬け込み、魔術起動装置の被験者となったのだ。





―――――牧野宅



「さくらにはお礼しないとな。あの防護膜がなかったら俺たち死んでたぞ。」

「そうね。って、あそこにいるの誰だろう。」

「良く観光客は来てるみたいよ?心霊スポットになったらしいわ。」


俺と玲音と浩美は、さくらに報告とお礼を言いに来た。


「ここの家の方ですか?あそこに幽霊が二人いるので、近くに行きたいのですが。」


黒い長髪の無表情の女性。怪しいとしか言いようがないが、危険物みたいなものは持ってないし、大丈夫だろう。


糠烏ぬかえ、どんな幽霊だ?」

「現世から遠い幽霊が一人、現世にものすごく近い幽霊が一人。現世に近いほうはものすごく眩しい。」


「本当に見えてる感じね。」

「浩美、牧野の代わりに侵入許可取れるか?」

「もちろんよ。」


「では、失礼します。」


女性はまず手で空を触る。恐らく幽霊に触れているのだろう。


「魔術の詠唱を止めなさい!」


玲音が叫ぶ。詠唱?魔導書も無しに?こいつはエリートキャスターなのか?そうは見えないが・・・

俺が向かった頃にはもう遅かったようだ。だが・・・


「きゃっ!」


自分の魔術で自爆した・・・?


「さくらが守ったの!?」

「さくらはこの場所でのみ魔術を使えるのよ。」


なんで浩美がそんなこと知ってるんだ。実は遺書に何か書いてあったのか?


「お前ら、もう二度とここに来るな。」


「すいません・・・」


男性と女性は残念そうに帰っていく。



「やっぱり、魔術は脳で発動してるんじゃないんだな。じゃあ魂か?」

「なら起動装置はなんなのさ。あれは脳を操作する魔術でしょ?」

「脳に魂があるんじゃ?」

「その理屈だと脳が無かったら魂が無いでしょ。」

「浩美、ちょっとでいいので情報を・・・」

「私も理屈はよく分からないわ。」

「これは研究するしか無さそうだな・・・」



魔術、脳、魂の関連性。そして植物。

俺たちが研究しなければいけないことは山積みだ。

でもまだ人生は長い。

その上、さくらや瑠音という、普通の人間では絶対に会わないであろう人間に会っている。

結局、俺たちは治安部隊ではなく、研究者だったのかもしれない。

それならそれでいい。研究だって連携がとても大事だ。

戦闘によって得た信頼、心の繋がり。

俺と玲音で、これからも研究を続けていこう。

亡くなったさくらの為に、魔術起動装置の犠牲になった人々の為に。



きっと、それが俺たちの使命なんだ。







「越村、幽霊が魔術を使ったぞ。これは大発見だ。」

「それも興味深いが、もっと興味深いものを見つけてしまってな。これを見てくれ。」

「なんだこれ!?ホムンクルスか?」

「あの幽霊と同じ表情をしてる。」



佳乃よしの・・・ あと一年だよ。あと一年で・・・」






「なあ玲音、昨日牧野に会ったんだけどさ、とんでもない話聞いちゃったよ。」

「ホムンクルスのこと?」

「まあ、それもそうなんだけど、オルタナティブワールドっていう単語を聞いた。」

「何それ。霊界のこと?」

「霊界とか空想上の単語を出すな。なにやら、固有結界らしい。」

「固有結界って伝説上の単語じゃない。」

「霊界という概念は無いって結論に達しただろ。固有結界は理論上可能だ。」

「理論上可能なのはタイムマシンも同じでしょ。」

「魔術じゃ時間に触れられないからそれは科学の分野だな。まあ実現は不可能だろうが。」

「固有結界は実現可能なの?」

「魔術起動装置にさくら。あれだけの魔術があれば可能なんじゃないか?」

「ただでさえ研究内容が山積みなのに、まーた増えるの?はぁ・・・」

「まだ霊界の研究だけだぞ。へこたれるな。さっさと終わらせて植物の研究だ。」

「さっさとって何十年よ・・・」

「俺たちまだ30代だろ。それに、魂の研究が進めば不老不死の魔術も実現可能かもしれないぞ。」

「涼太なら本当に不老不死の魔術を作っちゃいそうで怖い・・・」

「不老不死も固有結界もさくらの魔術も、俺は全部作れるようになるつもりなんだが?」

「言ったね?私、どこまでもついていくんだから!」

「まず試作のさくらの魔術の発動からだな。」

「どんどんかかってきなさい!最強のキャスターになってやるんだから!」



まだまだ謎は多い魔術の世界。

全て暴かれた時、世界が向かうは幸せか破滅か・・・

最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。

明らかに続編があるような終わり方にしましたが、当然続編を考えています。

今はキャラクターや構成を練っている段階なので、投稿はかなり後になると思います。

次回作も絶対エタりたくないので、構成、流れ全て完成してから書き始める予定です。

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