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第四話「究極の真実」

今回はBL、GL要素もりもりです。

ものすごく奇怪なストーリーですが、真顔で書きました。

―――――瑠音の魔術機動装置を外すのに成功した時、彼女は記憶喪失だった・・・



これが装置による脳の酷使のせいなのか、俺の魔術に欠陥があったのかどうかは分からない。

でも、彼女の記憶は未だに戻らない。

一つだけは言えることがある。


今の彼女は、俺たちの味方だ。



「ふぇっくしょん!」

「玲音、このままだと俺たち風邪引いちまうな。今のうちに風呂に入ろう。」

「涼太、先入ってきていいよ。私は瑠音を見てなきゃ」

「いや、瑠音はもう俺のことを怖がっていない。泥水をたくさん浴びた玲音のほうが体温が冷えているはずだ。」


「私が見てるから、ふたりで一緒に入ってきて。ふたりがいいんでしょ。」


さくらに二人で入ることを提案された。

俺は別に構わないし、さくらも見る限り人を保護するのには慣れている。

それに、さくらがいれば誰かが来ても簡単に対抗できる強さがある。片方になった俺たちが足手まといにすらなりえるのだ。


「俺たちどちらか残っても敵が来たら足手まといだしな。玲音、二人で入ろう。」

「えっ、え、ちょっと、心の準備が・・・」

「玲音の恋心の準備より浩美を助ける準備のほうが大事だ。風呂入る準備をしてくれ。」

「わ、分かったよ!」


風呂は玲音の魔術によって一瞬で掃除が終わり、お湯も一瞬で溜まる。


俺は髪を結んだ後風呂に入ると、バスタオルに身を包んだ玲音が入ってくる。


「バスタオルしてたら汚れが取れにくいんじゃないのか?」

「い、いや、恥ずかしいでしょ!?」

「分かった。体洗うときだけ取るんだぞ。」

「見るんじゃないよ!?」

「あのさ、俺たち恋人関係になるんだぞ。裸見合うくらい恥ずかしがるな。」

「涼太は男の子だからいいけど、私は・・・」

「玲音、綺麗な体してるだろ。なにも恥ずかしがることないのに。」

「そういう問題じゃなくて!それに、私胸ないし。Aカップだし。」

「巨乳だったら痛くて機動力を売りにできないだろ。それに、小さい胸は可愛い。」

「可愛いだなんて。・・・まあ、ありがとう。涼太も細身だけど結構しっかりした体してるじゃん。いつのまに鍛えてたの?」

「前衛に立つライターだからな、そりゃあ筋力は必要だ。俺が森に入る前から鍛えていたぞ。そういえば俺の裸をちゃんと見るのは初めてか。」

「これからはお互いに守りあうから、私も鍛えないとね・・・ そろそろ体洗うね。お風呂のお湯汚れてるから一回取り換えるよ。」

「ああ、ありがとう。前衛もできるキャスターか。キャスティングの練習が疎かにならないなら是非目指してもらいたい。」


「見ないでね?絶対見ないでね!?」

「ああ。分かってるよ。・・・あっ」

「もう!!!話すとき相手を見るのはいいけど、今は違うでしょ!」


華奢な体に、細く長い綺麗な手足。恐らくこの体を鍛えたら、まさにあれだろう。

エロス。

って俺は何を考えてるんだ。顔に出てしまうぞ。


「いやらしいこと考えてたでしょ!もう、魔術で壁作るからね!」


魔術で玲音が見えなくなってしまった。



「先着替えてるよ。」

「ああ、風呂出るときに壁は消してくれ。」

「着替えてから消す。」

「はぁ・・・ 分かったよ。」



そして、玲音も俺も風呂を出て、着替えが終わった。



「玲音、そのヘアピン・・・ それは恋の象徴か?」

「あのね、ハートは心の象徴でもあるのよ。浩美を助けるって意味を込めてるの。」

「恥ずかしがって隠しても無駄だ。ピン自体が月の形をしている、これはもう言い逃れができない。」

「涼太、結構鋭くなったじゃない。そうよ、恋の力で絶対に浩美を助ける。」

「でも、月だけの夜空は寂しいな。星のヘアピンを貸してくれないか。」

「結構センスあるのね、涼太。ほら、これ付けてあげる」

「一等星と三日月か。玲音にとっての一等星であれるように、輝き続けなければな。」

「自惚れるんじゃないよ、これは二等星のヘアピン。涼太はまだ二等星よ。」

「俺は変光星か。かつて北極星は一等星だったが、二等星に格下げされた。」

「涼太は逆よ。どんどん輝きが増していっている。今はまだ二等星だけど、いつかは私の太陽になってもらうんだから。」

「その時の玲音はスーパームーンだな。太陽と月、男性と女性。」

「男性と女性、ね。なら牧野と野伊はどうなるのかしら。」

「別になんでもいいんじゃないのか?むしろ、俺たちだって太陽と月にこだわる必要ないんだし。」

「涼太は月がいいとかそういうのあるの?それか私が星がいいとか。」

「うーん・・・ 欲を言えば、玲音も太陽であってほしいな。女性としての玲音というより、人間としての玲音を愛しているから。」

「それだと太陽が二つになっちゃうね。おとぎの国なのかな?」

「おとぎの国でいいんじゃないのか?魔術なんて、一部の人しか使えないおとぎ話みたいなものなんだし。」

「太陽と月なら光と影。でも太陽と太陽だと、光しかないよね。影があるからこそ光が輝くって話もあるけど。」

「影は牧野と野伊でいいだろう。影から生まれた桜は、光によって美しさを増す。」

「もうあいつらも、完全な敵ではないもんね。話はこれくらいにして、浩美を助けに行かなきゃ。」

「そうだな。玲音、瑠音の保護を頼めるか?俺とさくらで取り返しに行く。」

「涼太一人だと心配だけど・・・ それが最善だもんね。うん、任せて。」



「さくら、では行こうか。」




―――――折田の潜伏場所へ進む道




「りょうた、一人であの男の相手できる?」

「さくらの魔術防護膜は十分強力だ。さくらまで守り切るのは無理だが、俺一人だけで戦う分には十分だ。」

「私のことは心配しないで。あんなの敵じゃないから。問題は・・・」

「作戦か・・・ さくらが魔術を書けない以上、俺のクラッキングは使えない。折田を脅すか、あるいはさくらが自身の魔術でクラッキングするしかない。」

「私の魔術じゃ、ひろみが助かるかどうか分からない・・・」


「こんばんは。おっと、珍しい二人だね。」


「牧野か。今のお前に勝ち目は無い。邪魔するんなら気絶するまでこらしめるぞ。今度は後遺症が残っても知らない。」

「このひとは邪魔にしにきたんじゃない。」


「さくらの言う通りだ。俺は助けを求めている。野伊が操られちまったんだ、お前らも同じような目的だろ?」


「おいおい・・・ 二人助けなきゃいけないのかよ・・・ こりゃ作戦考えるの大変だぞ」

「りょうたはこの人信じられる?私は大丈夫だけど」

「ああ。さくらが信じるなら俺も信じるさ。」

「今だけ協力関係になるだけだからな?この件が終わったら敵同士だ。」

「申し訳ないけど、この件が終わったら俺たちに関わらないでくれないか。俺たちはお前らを殺すつもりはもうないんだ。」

「なら、お前らは俺らの活動を邪魔しないということだな?邪魔するんならぶっ潰すからな。これが俺らの組織の方針だ。」

「たしか、雲散霧消は脱退したら暗殺されるんだっけ?俺は組織のリーダーを倒すところまで考えてるけどな。」

「それで負けたのがお前の組織なんだろ。お前らの実力じゃ俺らのボスを倒すなんて無理だ。」

「森の会長の妻、野守(のもり) 琴子(ことこ)が何故死ぬことになったのか、お前ももう気付いてるんだろ?」

「わたしが・・・ 私がいなければ・・・」

「そりゃ気付いてるさ。さくらをいくら手懐けようと、血縁関係のある俺らを守らずにはいられない。これはさくらの理性じゃどうにもならない。植物によって動かされているのだよ、さくらは。」


植物は、植物同士で魔術による交信をしていると言われている。

さくらも例外ではないのだろう。


森の会長の妻、玲音の母。野守(のもり) 琴子(ことこ)が死ななければいけなかった理由。

それは、野伊を倒す際に謎の力が働いたせいで形勢を一気に崩されたから。

謎の力の話は、俺の親友、天見の弟がいつものようにばらしたことだ。森の最重要機密だったらしいがな。

謎の力は、さくらの魔術に違いない。



さくらが生きている限り、俺らは勝てない。

牧野、野伊が組織に属している限り、雲散霧消側で戦わなければ組織に殺される。


俺らが勝つ方法。それはただ一つ。さくらの魔術に打ち勝ち、雲のボスだけ倒すことだ。

正直、どうすればそれが叶うのかさっぱりだ。玲音には勿論相談するが、魔術の森にも助けを求めなければいけない。

雲のボス、東雲(しののめ) 竜郎(たつろう)と対等に戦えるのは森の会長、野守(のもり) 宗一(そういち)だけだ。



「まあ、この話は後回しだ。今は折田をどうするかを考えよう。」

「言っとくが、俺はお前の魔術は発動できないぞ?玲音を連れてこないのか?」

「玲音は魔術起動装置を外した後記憶喪失になった少女を守っている。だが、この状況だとあいつらに同行してもらうのもありだな。」

「るねも大切な子だよ。二人は私がなんとかする。」

「さくら、何か手があるのか!?」

「玲音がいればたすかる。」

「牧野に基地がばれるのはあまり良くないが・・・ まあ今はそれよりももっと大事なことがある、行こう。」


瑠音を同伴させるのは心配だが・・・ さくらが言うのなら、何かすごい案があるのだろう。

なんせ、さくらの魔術には到底届かない玲音だ。

その玲音が必要とされている。玲音にクラッキングさせるとか、そんな単純なことではないのだろう。




―――――玲音の基地



「やっぱり私の力が必要だった?・・・って、牧野!?何でここに?」

「野伊が魔術起動装置で操られてしまった。」

「野伊まで!?こんなに連続で成功するのを運とはいいがたいよね。もしかしたら装置に操られてるのはもう二人なんてもんじゃないんじゃないの?」

「玲音の力があれば、わたしが一瞬でみんなたすけられる。」

「私が・・・?うん、分かった。瑠音ちゃん、体調はどう?」

「・・・大丈夫です。何が何だかわかりませんが。」

「それも仕方ないよね。でも、ここに一人残すわけにはいかないから、ついてきてほしいの。」

「・・・分かりました。」

「さくら、どこに行けばいいんだ?」

「お母さんのところ。咲人、お母さんのところに行ってもいい?」

「別に会いに来ちゃいけないなんてことはないんだがな。野伊を助けるためだ。連れてってやる。」




―――――牧野宅への道



「さくらのお母さんかぁ、美人なんだろうな・・・」

「さくらのお母さんって牧野か野伊じゃないのか?」

「男同士で子供が作れるわけないでしょ。」

「なんだ。お前ら聞いてなかったのか。さくらのお母さんのこと。」

「さすがに複雑な事情だろうし、さくらも話したくないでしょ。」

「複雑というより・・・ 怪奇だな。まあ、俺の家につけば分かることだ。お母さんは俺でも野伊でもない。さくらのお母さんは美しいぞ。」

「大体想像はつくな。怪奇ってところが引っかかるが。」

「そういえば、瑠音ちゃんはお父さんお母さんのことまだ思い出せない?」

「はい・・・ そもそも、いたのかどうかすら分からないくらいです。」

「さすがに親がいない子供なんていないよ。そのうち思い出せるんじゃない?」

「はい・・・。」




―――――牧野宅



「ここが牧野の家か、立派な一軒家だな。こんなに大きな木、久しぶりに見たぞ。」

「お母さんはこの家にいるのね。早く会ってみたい・・・」

「本当に何も知らないんだな。お母さんならここにいるってのに。」

「まさか・・・ 幽霊なの!?」

「いや、この桜の木のことを言ってるんだろう。」

「桜の木の下に埋まってるってこと?やっぱり幽霊じゃない!」

「そうじゃなくてだな・・・」

「この桜の木が、私のおかあさん。お母さん、会いに来たよ。ひさしぶり。」

「えっ!?え、木がお母さん?じゃあお父さんは?お父さんも木?いや、それだとさくらも木じゃないとおかしい・・・」

「科学と魔術の力でこの桜の木から卵子を作り出し、野伊の精子を受精させた。そして野伊の人工子宮の中でさくらは育ち、生まれた。」



何とも信じ難い話だが・・・

これが技術の進化しすぎた「現実」だ。

これがさくらの魔術、いや、さくら自身に隠された究極の真実。





――――――――――十五年前 九月



十三歳の牧野と十六歳の野伊、桜の木の下にて。


「男同士って、やっぱり世間に認められないんだね。何がいけないのかな・・・」

「宗教、教育、生理的嫌悪・・・ そして、全ての元になっていること、それは子供が作れないということ。」

「でも、魔術ってこーんなにすごいんだよ!きっと、男同士だって子供が作れちゃうよ!」

「魔術は簡単に金が稼げるから金の問題は無い・・・ あとは研究と人生経験だな。」

「ねえねえ咲人、今から研究しようよ!僕たちの子供を作ろうよ!そして皆に知らしめてやるんだ。男同士だってやればできるんだって!」

「晶がそういうんなら、俺も本気でやるよ。俺たち、成績トップだもんな!」

「ありがとう、咲人。僕のこといつも助けてくれて、ありがとうね。」

「可愛い晶のためだ。いつだって助けるよ。俺は晶のことが大好きだから。」

「僕も咲人のこと、大好きだよ!」



――――――――――十三年前 四月



十四歳の牧野と十七歳の野伊、桜の木の下にて。


「咲人と僕の子供は作れなかったけど、この桜と、僕の子供。意外なものが出来上がっちゃったね。」

「ああ。まさかこんなに早くできるとはな。この研究結果は俺たち二人の秘密。いつか本当に作ろうか。」

「いつかって、もう作る準備しようよ!咲人は十四歳だけど頭いいし、大人びてるし。お金は僕が稼げる。精子は僕のものを使って、出産も僕。」

「精子の提供と出産が同じ人・・・ なんか不思議だな。まあ、この桜は俺の家族みたいなもんだし、俺が精子を提供するのもおかしいんだけどな。」

「男同士って、すごく複雑だよね。でも、それだけ可能性があると、僕は思うんだ!」

「本当に今作るのか?そして晶、お前産めるのか・・・?死んじゃったりしないよな。」

「うん、今から作ろう?ほら、僕こんなに女の子みたいな見た目だし、体形も割と女の子っぽい。きっと無事に産めるよ!」

「まあ、晶が女だとしたらもう子供産める歳だし、大丈夫なのかな・・・」



――――――――――十三年前 六月



「手術、成功したのか!?晶、何か悪いところはないか?」

「大丈夫。科学の力ってすごいね、男に子宮まで作れちゃうなんて。院長も、君の体なら産めるって言ってた!」

「男は体の作りが違うから産めないって話を聞いたことがあるが・・・ 本当に大丈夫なんだな?」

「女より負担が大きいから、陣痛も出産も女よりはるかに辛いって言われたけど、僕は耐えてみせる。」

「晶、本当に強いもんな。俺も出来る限りの事をするよ。」

「ありがとう。じゃあ、受精、しよっか。」



――――――――――十二年前 四月



野伊の絶叫が止まった。


「患者が気絶しました!!これ以上続けると患者が命を落としかねません!帝王切開しましょう!」

「ちょっと待ってください!晶は耐えられます!医学的には大丈夫なんですよね!?」

「牧野さん、医学に例外はつきものです。臨機応変に対応していかなければいけません。」


晶は言った。俺は絶対に産むと。

ここで諦めるのか・・・?


「先生、晶のような体の帝王切開の経験は?」

「ありません。でも、帝王切開をしたほうが野伊さんの命が助かる可能性が高いです。」

「聞きましたよ。男性の人工子宮による出産の帝王切開の方法は確立されていないこと。」

「私の腕を信じてください!」

「信じられません。僕が信じるのは晶です。」



俺は、さくらのお母さんにも応援してもらう為に桜の枝を一つだけ折って持ってきた。

俺は気を失った野伊の元へ行き、彼にその枝をやさしくかざす。



「牧野家の桜には他の植物と交信できるという逸話がある。お腹の中のさくらに届け、この想い。」


晶のお腹が一瞬動いた気がした。


「はっ!うああああぁぁぁぁあ!!!!」


「晶、目を覚ましたか!もう少しだ、もう少しだからな・・・!」



野伊の掠れた絶叫に負けぬように、医者が大きな声で言う。


「今更無痛出産に切り替えるのは不可能ですよ!出産時の痛みはさらに強いものです!本当に産むんですね!?」

「はい!お願いします!」






――――― 一時間半後



「さくらちゃん、ほら泣いて。」


先生がさくらのお尻を軽くたたく。


「お、おぎゃああぁぁ!あああ!」


「さくら・・・ 自分の娘がこんなに可愛いものだとは。先生、障碍とかは無いんですね?」

「はい、脳も体も健康です。私もびっくりですよ。」


「さくら・・・ 産まれたんだね・・・ 抱いてもいいかな・・・」


晶は力が抜けきった体で放心しながら言った。


「野伊さん、無理しないでください。後で抱くことはできますから、今は見るだけで我慢です。」

「なら、僕が抱きます。ああ、なんて可愛らしいんだ・・・」



二人は望んだとおりさくらを生んだ。さくらも生まれることを望んでいた。

でも、現実はもっと厳しいものだった・・・






「どうして、みんなはわたしをさけるの・・・?」


「どうして、わたしはおとうさんがふたりいるの?」


「どうして、おとうさんはかなしいかおでわたしをみるの・・・?」


「おかあさん、おしえて。わたしはどうしたらしあわせになれるの?」



―――魔法の力、それは人を幸せにする力。さくらはもう6歳だから、そろそろ覚えてもいいと思うの。ほら、心で感じて。



「これが、まほうのちから・・・ おとうさんがつかっているものよりももっとすごい、まほう。」




「どうして・・・ まほうでみんなをたすけても、だれひとり私をみとめてくれない・・・」


「みたこともないまほうは、こわがられる・・・」


「みたこともないかぞくは、きみわるがられる・・・」



「助けてくれてありがとう、怪我する所だったわ。すごい魔法じゃない、私もこんな魔法が使えればいいのに。」

「私がこわくないの・・・?」

「私のことを助けてくれたじゃない。それに、こんな美しい魔法、初めて見た。ねえ、もっと見せて。」

「みんな、私にころされるってにげてくのに・・・」

「あなた、優しい子でしょ?人を殺すようには見えないけどね。名前は?」

「うん。私はひとをころしたりしない。私はさくら。」

「さくらって言うんだ!可愛い名前じゃない。私はひろみよ。」



「さくら、こんなところに居たのか。いくら魔術が使えるからって、一人で勝手にこんな遠いところまで来るんじゃない。」


「さくとお父さん、ごめんなさい・・・」


「あら、すいません。」


「気にしなくていいんです。この子、すぐどっかほっつき歩いては人を助けてるんで・・・」


「隣にいる方は?とても仲が良さそうね。兄弟って感じでもないけど・・・」


「僕の恋人です。」

「初めまして、野伊晶です。」


「さくとお父さん、なんで言っちゃうの・・・?」


「さくら、これは何も恥ずかしいことじゃないんだ。皆の理解が足りないだけ。」


「やだ・・・ ひろみに嫌われちゃう・・・!」

「私の思った通りね。そう、なにも恥じることじゃない。私は女性が好きなのよ。」


「まさか・・・ さくらを誘拐する気!?」


「私はひろみについていきたい」




まさかそれが現実になるとは。




「私はさくらをあなたたちの家から奪うわ。さくらもそれを望んでいる。」


「仲良くやっていけると思ったんだけどな。流石にそれは許さない。」


「追ってくるなら、この刀で相手するわよ。」


「そんな刀一本で何ができるってんだ。さくらだってまだ攻撃魔術は未熟だろう。」

「咲人、この女ただもんじゃないよ。あの刃、一本に見えるけど魔術の見えない刃がもう二本はある。」


「みんなやめて!ひろみも、たたかうなんてやめよう?」

「ごめんね、さくら・・・ さくら、最後に聞くよ。本当に家出して大丈夫なんだね?」

「うん、ひろみとなら大丈夫。」


「魔術も中途半端な十七のガキにさくらを預けることはできないな。お前はさくらを本当に幸せにできるのか?」


「あなたたちはさくらを幸せにできたの?出来る限りのことを本当に尽くしたの?」


「ああ、もちろんだ。」


「なら、なんでそんな若さでさくらを産んだわけ?あなたたちがもっと大人で経験をたくさん積んでいれば、もっと良い結果になってたわよ。」


「くっ・・・」


「いきましょう、さくら。」

「うん。どこまでもひろみについていくよ。」



さくらと浩美は簡単に逃げ切れた。

それから人から隠れて生活をすることになった。



「さくら、この生活、さくらにとって幸せ?」

「うん!とても幸せ。怖いこともおおいけど、ひろみがいるからだいじょうぶ。ひろみは?私のこと好きなんだよね?」

「なら良かった。私も安心して暮らせるわ。さくら、好きにも色々あるけど、私の好きは何だと思う?」

「れんあい?」

「・・・さくらって本当鋭いよね。私がこんなに小さな子に恋するなんてなんかおかしいけど・・・ さくらのことが好きなのよ。」

「おかしくないよ。私、ひろみに愛されてとてもうれしい。でも、私、ひろみのこと恋人としてすきなのかどうかわからない。だから、どうすればいいんだろう・・・」

「そんなに深く考えなくていいのよ。好きっていうのはとても曖昧な気持ちなの。今までと何も変わらないんだから、それが嫌じゃなければそれでいいと思う。」

「ぜんぜんいやじゃないよ。むしろうれしい。ひろみ、大好き!ぎゅっ!」

「もう、年頃の女の子が好きな子に抱きしめられるって、どんな気持ちかまだ分からないだろうね、さくらは。気持ちが抑えきれなくなっちゃいそうだわ。」

「きもち、おさえなくていいよ。」

「さくら、大人の恋愛っていうのは甘いものじゃないのよ。抑えなきゃいけない気持ちもあるの。」

「うーん・・・ よくわからない。」


浩美はさくらに本気で恋をしていた。

でも、さまざまな壁が立ちはだかっていることは全て承知だった。

それでも、浩美はそれを悪いことだとは思わなかった。

もちろんさくらも。

年齢も性別も種族も関係ない。恋とは実に不思議なものだ。





―――――現在、牧野宅



「ひろみを、絶対にたすける。玲音、瑠音に使った魔術をこの木におねがい。」

「お母さんって呼んでいいんだよ。空打ちでいいのかな?」

「ありがとう。お母さんに空打ちしてほしいの。」

「分かった。十五分かかるから、しばらく待ってね。」



―――――十五分後



「ふぅ・・・ やっぱり十五分は疲れる・・・」

「十五分の魔術をミス無しで詠唱し続けるなんて人間に可能なんだな。お前らを見直したぞ。」

「負けたやつが見直したなんて言葉を使うな。」

「さくらちゃん、どう?」

「魔術、完成したよ。これでひろみとあきらを助けられる。」

「さくら、もしかして魔術の変換をしたのか?」

「うん、そうだよ。」

「産まれたときからこの桜と共にいて、植物の研究もしてきたというのに、俺にはどういう理屈なのか全くわからねえ。」

「牧野さん、これはきっと理屈じゃないのよ。植物は、なんかこう・・・ 魂みたいなものでつながっているんじゃないかな?」

「そう、たましいでつながってる。」

「魔術界の革命だな、これは。そちらの方面の研究もできることならしたいんだがな。」

「なら尚更、雲のボスを倒すことを本気で考えないとな、牧野。やるときはちゃんと手伝ってもらうからな。」

「俺らの組織はそんな甘いもんじゃないぞ。夏目、お前は俺のこの魔術の防護膜を解読できるのか?」

「自爆装置が仕掛けられているのは、自身を失ってまで敵を倒すためじゃなくて・・・ まさか裏切らないための呪いなのか?」

「自爆戦法もあるが、メインはその呪いってやつだ。かつて会長の次に優秀だったライターが書いたクラッカーですら、クラッキング時の自爆を避けられなかった。」

「それは会長が書いたものなんだろ?会長が死ねば呪いは解けるように見えるが。」

「その通りだ。だが、会長、俺、野伊、さくら、その他雲のメンツ。そいつらにお前らは勝てるのか?」

「お前、自分の娘の大事なところすら見逃してるんだな。まあ、戦略なんて当然教えないが、勝ち目は十分にある。」

「なるほどな。俺も当然分かっているが、だからといって勝てるとは決まっていない、」


「二人とも、その話はいつでもいいでしょ?早く行きましょう?時間が無いことくらい分かってるでしょ?」

「ああ、すまない。急がなければな。さすがに現地に瑠音を連れてくのは危ない。ここからは俺と牧野とさくらの三人で行く。」

「そうね、瑠音ちゃん、調子はどう?」

「大丈夫です・・・ 相変わらず何が何だか分かりませんが。」

「私がついてるからね。何かあったら、すぐに言ってちょうだい。」


「んじゃ、いくか。」

「お前は折田を殺すつもりでいるか?」

「いや、自由を奪った状態で生かしておくつもりだ。」

「ああ、そうか。なら俺も賛成だ。」

「ころさないんだね、よかった。」



三人は、大事な人を取り返しに折田の元へと向かう。

瑠音の記憶はいまだに戻らないまま。

不安を抱えながらも、準備万全の状態で現地に到着する。

前回の投稿から十日程立ちましたが、無事投稿できました。

七話完結予定でしたが、話の流れを練っていると六話完結になる可能性が出てきました。

どっちみち完結はさせるので、よろしくお願いします。

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