空を見上げれば光が
「条件って何?お金?お金なの!?それとも私の体を一生弄ぶとか?」
「そんな怖い顔しないでくださいよ、楓さん!それも良いかもしれないと思ったんですけど、残念ながら違います」
いいと思ったんだ、こいつ。潰す。
「条件っていうのはですね・・・」
「だから、何なの?」
条件というのは、お金でもなく、ましてや私の体を一生弄ぶとかいうそんなものではなかった。
「バンド、組んでください」
「・・・えっと、言ってる意味がよくわかんないんだけど・・・」
「だから、俺とバンドを組みましょうって言ってるんですよ」
私はつくづく頭おかしい奴だと思った。
「なんでバンドなの?」
「それが、俺の夢だからです」
夢だから。
「・・・夢・・・ね」
「俺、知ってるんすよ・・・楓さんが歌、すごいうまいってことを」
「なんで?どこで・・・?」
「昔、友達に誘われて行ったライブハウスで見たんです、まるで本物の歌手のような・・・いえ、あれは歌手でした」
私も夢を追って東京に来た。
大学に進学するというのは口実で、上京して音楽がしたかった。
最初は、ライブハウスなどで歌ったりしてたけど、この軽音楽サークルに入ってから変わった。
軽音楽サークルというのは名ばかりでただの飲み会サークル。
大学で好きな人ができた。
年上の人。
フラれてやけになって音楽をやらなくなって飲み会ばかりに行くようになった。
私は音楽のことを4年間ずっと忘れていた。
それなのに、今更?
今更しても何にもならない。
私は夢を捨てたのよ。
戻ってはいけないのよ・・。
でも、やりたい。
それが私の答えだった。
もう一度、夢にかけてみようと思った。
名前も知らなかった、先月知り合ったばかりの男だけど、事故で寝た男だけど、何故かこの男に夢を、私をかけようと思った。
私は、また走り出した。