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メインストーリーの、そのあとで  作者: 山楽かかし
序章:心に眠る炎
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第6話:夢の『魔法』への第一歩

 翌朝、俺は朝日の眩しさに目を覚ました。

 まだ見慣れない木目調の天井をぼんやりと見上げながら、寝ぼけた頭を無理やり起こしてベッドから降りる。


 身支度を済ませてリビングへ向かうと、そこにはすでにクレスさんが待機していた。

 リリィさんはと言えば、昨日の「師匠」としての顔などどこへやら、ソファの上で完全に猫のように丸まって二度寝をかましていた。


「……おはようございます、クレスさん」

「おはようございます、ショウト様。……朝からお見苦しいところをお見せして申し訳ありません」


 クレスさんがため息交じりにリリィさんを見やる。昨晩の威圧的な空気を知る俺としては、今のこの脱力した師匠の姿にどう反応していいか正直悩むところだ。


「ほら、リリィ様、起きてください。ショウト様が来られましたよ。」


 未だに二度寝を続けるリリィさんを起こそうと、クレスさんが優しく揺する。俺が来たと聞いたリリィさんは「しょうとぉ…」と呟くと、眠そうにまぶたを擦りながらソファから降りる。


「はぁ、ショウト様まずは講義から始めましょう。こちらへどうぞ」


 俺はクレスさんに連れられ、家の外にある広い訓練スペースへ向かった。


 リリィさんも半分目を閉じながら、ふらふらと危ない足取りで俺たちの後に付いてきている。


「さて……まずは、この世界の基本となる『魔力』や『魔法』の話から始めるよ」


 ようやく完全に目が覚めたのか、リリィさんは少しだけシャキッとした姿勢をとって話し始めた。


「ショウト。君たち元の世界にはあった概念かは分からないんだけど、この世界に生きる生物は、『魔力』と呼ばれるエネルギーを生み出すことができるんだ。そして、その『魔力』を緻密に操作して体外へ放出すると、大気中に満ちている『魔素まそ』というエネルギーと反応して、イメージした事象を発現できるんだ。この『魔力』と『魔素』を反応させることを『魔法』って言うんだよ」

「……な、なるほど。魔法っていうのは、自分のエネルギーと外のエネルギーを組み合わせて、新しいエネルギーを作るみたいな感じなんですね」

「おっ、飲み込みがいいね!  大体そういうことだよ!」


 リリィさんは「ま、私もあんまり魔法について詳しくないんだけどね」と小声で言いながら満足そうに頷くと、腕を組みながら俺の前に立った。


「まずは君自身の中に眠る『魔力』を知覚することから始めようか。やり方としては瞑想をするのが一番の近道なんだけど……ちょっと失礼するよ~」


 そう言うと、彼女は俺の手を取り、手のひらを自身の額に当てるように導いた。


 俺の手のひらがリリィさんの額に触れた瞬間、手を伝って微かな温もり――いや、もっと激しく、内側から細胞を揺さぶるような『力』の奔流が、じわりと俺の体内に流れ込んできた。


「……っ!」

「慌てないで。これが『魔力』の感覚だよ。体の中心、胸のあたりをゆっくりと意識してみて」


 リリィさんの導きに従い、俺はそっと目を閉じて『魔力』を感じるために集中した。


 トクトクと、力強い心臓の拍動とは違う、別の鼓動。確かな熱を持った、けれど冷静なエネルギーの塊。


 どれだけ時間が経ったのか、リリィさんが額に触れていた俺の手をそっと離した。


「じゃあ、あとは自力でその感覚を掴んでみて! 私は……ちょっとあそこの木陰で休憩してるから」

「えっ、休憩!?」

「大丈夫、すぐ近くにいるよ〜。クレス、後はお任せした」


 そう言って、リリィさんは本当に木陰へ向かい、あろうことか草の上に寝転がって「……すぅ」と寝息を立て始めた。


「……ほ、本当に寝た」

「……すみません、ショウト様。リリィ様のマイペースぶりは、もはやどうしようもなく……」


 クレスさんが苦笑しながらも、俺の横に控える。


「さあ、ショウト様。気を取り直して修行を続けましょう。瞑想に集中してください」


 クレスさんの凛とした声に励まされ、俺は再び目を閉じる。


 さっき感じたあの感覚……胸の奥にある、熱いエネルギーの塊。それを必死に追い求める。


 1時間、2時間。


 どれくらい時間が過ぎたのか分からない。


 額から汗が流れ落ち、集中力も限界に近づきかけたその時だった。


(……あった)


 心臓のすぐ近くで、ピクリと小さく脈打つエネルギー。それは、昨日まで存在すら気づかなかった、俺自身の命を動かす別の力。


「……ッ!? リリィさん、クレスさん! できました!」


 俺が叫ぶと、木陰からリリィさんが「うふふ、おめでとう〜」と寝返りを打ったのが見えた。


 師匠リリィさんの態度は相変わらずだが、俺は確かな手応えを感じていた。


 異世界での第一歩。俺の魔法使いへの道は、こうして手探りながらも確実に始まりを告げたのだった。

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