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恐怖の洞窟 2

「間違いないわ、魔鉱石ね」

「それに、この山吹色に光ってるとこ……これ、金じゃね!?」

「え? どれ? こ、これは……そうね、金だわ!」

 どうやら文字通りの()()()な鉱脈の様だ。両人の目が、鉱石以上の輝きを辺りに撒き散らしている。

「すっかり夢中ねぇ」

「正に、目の色変えてってヤツだな。原因究明はどこ行った?」

「どうする?」

「待ってても仕方がない、反対側へ行ってみんか?」

「そうだな。こっちはこっちで動くか。メイスさーん、おれたち、反対側調べますんで! いいですかぁ~!?」

 はーい! メイスは、ほぼ上の空丸出しの声で返事を返してきた。


 途中、身体に異常・損傷があって置いてきぼりを食ったアンデッド(連中に相互補助精神は有るまい)をいくつか排除しながら、光一たちは前へ進んだ。

 良介の再現したM4がサプレッサ込みであったのは助かった。亜音速弾では無いので効果は限定的だが、狭い坑内では音量が少しでも減れば耳に優しくなる。

「ねぇアズマ?」

「ん? なんだい?」

()()が多くない?」

 由美が地面を照らしながら聞いてきた。光一もそれに倣う。

「随分ボロく劣化してるけど……布生地?」

 照らされた地面には、そんな布の切れ端や、絡まった紐、頭髪が散らばっていた。

「ここが起点?」

 ヒトの踏み入れられない自然の鍾乳洞に、そのような人工物など有る筈は無い。おそらくは、あのアンデッドらが生前纏っていた衣服であると考えるのが妥当であろう。

 そしてこの高密度の魔石による魔素が遺体に纏わりつき、アンデッドとなる……光一はそんな風に考えた。

 だが、妙だ。

「でも、その遺体は、どこからここに集まったのかしら。ここは山肌から深い地中だし、地震で崩落が起こるまでは通路も無かった訳だし」

「上を見てみよ」

 二人は上を見た。ライトを当てる。

「風穴、かしら? でも大きいな」

「そうだな……奥は真っ暗だ」

 直径にして3m強程度であろうか? ライトの光が奥まで届かないので何とも言えないがこの穴、垂直ではなく斜めに伸びているようだった。

「結構長そうだけど、地上とは繋がって無いように見えるけどな?」

「穴が開いたのではない。底が抜けたと考えよ」

「あ!」

 モノの見方の反転、そんなヒントを受けて、光一は閃いた。

「戦場墓地だ! デミウル神父が言ってた、大昔の遺体を埋葬した場所がここだったんだ。そして長年掛けて、ズルズルと浸食して底が抜けたんだ」

「そっか! そのままここに落ちて来て! だからここに、着ていた服の残りカスがたくさん集まってたのね!」

「魔素の集束でアンデッド化したけど獲物なんていないからずっとこの中で……」

「でも、支坑がここまで伸びて来て、鉱夫さんたちの気配に反応したアンデッドたちが蠢きだしたんだわ! で、その声や白骨の音が鉱夫さんたちを悩ませていた、と」

「多分、それで正解だ。それが一番辻褄が合うよな」

「やるじゃんアズマ、さすが筋金入りのオタ!」

「変な褒め方すなって! つか、お前のヒントで閃いたんだ。お前のおかげだよ」

「は? 何言ってんの?」

「え? お前が言ったんじゃないか。上を見ろとか、底が抜けたとか?」

「はぁ? あれ、あんたが言ってたんでしょぉ?」

「いや、俺は何も言ってねぇよ。あのアドバイスが無きゃまだ頭捻ってたし」

「ちょ、何言って!」

「我だよ」

「……」

「……」

 聞き慣れぬ一人称に、光一と由美の眉が歪んだ。そんな眉間が寄ったままの顔で見つめ合う二人。

 自分たちはもちろん、この空洞に居るメイスやヨミも、デミウル神父も鉱夫たちにも己の事を「我」と呼ぶ者はいなかったはずだ。

 ――誰だよ……

「聞こえんかったか? 我がアドバイスしたんだが?」

 再び話しかけてくる()()()

「何者だ!」

 パシ!

 ガシ!

 光一は由美と背中合わせになってM4を構えた。

 声からして、自分達に攻撃の意思アリとは認められないものの、あまりにも得体がしれない。

「どこにいる!? 姿を現せ!」

 光一はその得体のしれない何者かに詰問した。とにかく口から出てしまった。

 今まで見分した漫画や小説、映画に有るようなセリフだが頭に浮かんだまま、過ったまま、口走った。このような状況ならば、このセリフが当て嵌まるだろうとばかりに。

 由美にまた、オタ脳と言われても已む無しではあるが、その由美も一気に緊張が走っており、そんなツッコミも起こせない。まあ、ちょっとは脳内の片隅で連想したかもだが。

「どこにって、まあ、目の前に……かな?」

「ふざけるな! 見えるところに出てこい!」

「だから目の前に。いや、後ろにもいると言えるかな? あるいは上に、そして下に……」

「なにワケ分かんないこと言ってんのよ! 出て来いって言ってんの!」

「どうしてもと言うのなら……そのまま奥に進んでくれるかな? 大きな岩の有るその左奥だ」

「奥?」

 光一と由美は顔を見合わせた。

 思わぬこの状況に、どう答えを出したものか脳内の整理が追いつかない。が、今のところ、奥の大岩の影に何が見えるのか? それを確認する以外の選択肢は思いつかない二人である。

「是非も無し……か」

「行くしか無いわね~」

 二人は周辺を警戒し、不意の襲撃に備えながら指定された大岩に、じりじりと近寄って行った。


「こ、これって……」

「我だ」

「え、だってこれ……し、死体じゃない!」

 指示された場所に来た光一&由美。

 そこで見たものは、地に身体を横たえたまま息絶えて久しいと思われる亡骸であった。

「つ、つまり……?」

「どう、いう事だってば、よ!」

 光一の声は前半と後半で裏返っていた。斯様に喉のコントロールもままならない衝撃が彼を襲っていた。

 己を「我」と呼称する正体不明の個体。ヤツはこの目の前に横たわっている、いつ息を引き取ったか分からないが、その亡骸を「これが自分の正体だ」などと宣うのである。

 と言う事は?

「あ、あああんた。ゆ、ゆゆゆ、ゆう……」

「待て由美! その結論は待て!」

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