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恐怖の襲撃 4

 ズゴォー! ゴゴン! 


 一辺十数cmの角材が閂として通された。だが、

ドオォン! ガン! ゴン!

内部ではアンデッドによる打撃が繰り返されている。一体々々は大した打撃力は持たないはずだが、とにかく数が多い。圧が波の如く扉を軋ませ、疲労させていく。

「ヤバいか?」

「あれだけ数が集まると……」

 ギシッ! ギシギシ!

「おい、蝶番もヤベぇぞ。浮き始めてやがる!」

 突破されるか? なにしろ相手は不死のアンデッドだ。水や食料が無くても活動し続けるやっかいな魔獣だ。

「町に入れさせるワケには行かねぇ。ここで食い止めるぞ!」

 鉱山長フロンコが鉱夫たちに檄を飛ばした。

「町の派遣隊や冒険者、防衛団にも知らせろ! いや、手隙の者は出来るだけ招集するんだ! 坑内はともかく、街道や鉱石仕分場、広い場所なら大勢でも戦える!」

「ヂョロを運んだ連中が町にも説明してるはずだ。今頃態勢を整えてるはず!」

「念のためだ。伝令を走らせとけ。残りのモンは得物を持て! 町を守るのは俺たちだ! ラフロ鉱山夫の底力、見せる時は今だぞ!」

 おお―――!

 鉱山長の鼓舞に応じ、鉱夫たちはそれぞれに猿臂や大槌、ツルハシなどを手に取り始めた。

「こりゃ乱戦になるな……」

「銃、使いにくいね~。跳弾とか流れ弾とか、同士討ちになっちゃう~」

「給水塔に昇ってはどうか? 高台から後方の個体を削るって方法で」

「お、それならF・F(フレンドリファイア)避けれるな!」

「うん、それ、いいね! それで行く?」

「よっしゃ! 扉、破られる前に上がろうぜ!」

 光一と由美は、火器と弾薬の入った雑嚢を抱えて、鉱石仕分場の奥にある給水塔を目指した。


 

 扉の閂は、まだ持ち堪えていた。


 バキャ! ガガッ ドガ!


 しかし、蝶番部は限界だった。留めていたアンカーが浮き始めた。やがて、

バキッ ベキベキ! ドドオォーン!

ついに扉が破られた。右の蝶番が剥がれてしまい、扉は右から波打つように倒れていき、そのあおりを食って応力が集中した左の蝶番も弾き飛ばされた。


 ぐぅおああぁぁ

 ぼぉぅおおおおおぁ

 がぅあああ ぶぉがぁあ


 唸りとも言えない、咆哮とも言えない不気味な声を発しながら、アンデッドは坑道外に湧き出してきた。

 アンデッドどもは獲物である人間を求めて町に向かい、前進を始めた。

 喰らったところで栄養にも滋養にも成りはしないのだが、ただ、食うという本能のみが暴走した下等な魔獣の姿。元は人や獣の死体であり、光一・由美にとっては哀れさも感じないわけでは無いが、そこはそれ、ここは別世界。

 むしろ彼奴等の弱点である頭部・頸椎を粉砕し、迷わず安らかに眠って貰うための一撃だ――手に手に得物を持って迎え撃たんとする鉱夫たちの認識は、そんなモノかもしれない。

 鉱山入口の扉が破られた頃には、町からの増援も到着していた。

 派遣隊一個中隊の内、歩兵一個小隊40名も参戦。防衛団は自分以外の武器――剣や槍、戦斧や金砕棒等も持ち込んで、鉱夫たちにも配った。不足に備えて(くわ)(すき)や牧草用のフォークなどの農機具も武器として運ばれた。

 相手はアンデッド。頭部や頸椎を砕くことが出来れば、農機具でも十分に戦える。数は少ないが冒険者ギルドからも10人前後が得意とする武器を携えて駆けつけてきた。

「かかれー!」

 うおおおおお――――――!

 飛び出してくるアンデッド。

 迎え撃つ派遣隊・防衛団、鉱夫集団。彼らは自分らの家族、街を守るために果敢に突撃していった。

 敵は幽霊のような曖昧模糊とした正体はもちろん、存在すら怪しい相手ではない。弱点を持ち、そこを突けば無力化できる存在だ。

 霊にビビッてしまっていた鉱夫たちも、正体がアンデッド(こいつら)であれば問題無し。その自慢の肉体と筋力で彼奴らを次々粉砕していく。

 もちろん、油断はできない。

 アンデッドに噛まれたり、引っ搔かれて裂傷を負えば、そこから一気に腐食が始まる。治療が遅れれば、やがて噛まれた被害者は死を迎え、それもまたアンデッドとして蘇生してしまう、とはJ・Vのシオンにレクチャーを受けていた知識。

「負傷者は速やかに後方へ移動・搬送しろ! 神父(ファーザー)ヨミ(シスター)が聖水で治療して下さるからな!」

「負傷者の方はこちらへ! すぐにお清めいたしますわ!」

 後方では、デミウルとヨミの親子が負傷者の救護に当たっていた。

 患部に聖水を振り撒き、毒素を中和・洗浄の上、包帯を巻く。ヨミの指導に則り、ヨミのママン以下、町内の婦人会も応急処置や炊き出し等の支援に出張って来ていた。


「ほうぉ~。ヨミさんしっかり修道女(シスター)モードだなぁ」

「町人向けには、あれもんなのかしらね~。あたしたち向けとは雲泥ねぇ~」

「ま、それでこの町が上手く回ってるなら、よそ者のおれたちがとやかく言う事じゃ無ぇわな。よし、こっちはこっちで義理果たすか」

「動きはそれほど早く無いからね~。移動目標の狙撃にはいい練習台だわ~」

 バシィッ! バシィッ!

 M4で次々とヘッドショットを決めていく由美。精々100~150mの距離だと彼女なら千里眼を使うまでも無かった。

「バケモン一匹、バケモン二匹、あんよがお下手は、どのバケモン? と」

 バシィ!

 由美絶好調。ヒット率は8割を越えていた。対して光一は、

バシィ! バシィ!

「くそ~」

バシィン!

「当たったー! クソ、ホント頭って狙いにくいなぁ」

命中率は2割程度だった。

「アンデッドが相手じゃ、盗賊の時みたいに腹を狙って……は効果無いもんね~。脊髄や関節に当たれば下半身の動きは封じられるけどね~」

「この距離だと散弾は、ひ弱だしなぁ。ホントお前の射撃センス、すごいわ」

「褒めても何も出ないよ~。ほいっ」

 バシィ!

 首にヒット! 被弾したアンデッドの頭部は地に転がり、身体は糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた。

「見事だなぁ。それに引き換え……凹みそ!」

「こういう時に練習すんのよ。こないだの盗賊みたいに抵抗無いでしょ?」

「でも、結局は才能じゃね?」

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