第二十話 悪魔の塔へ
四人とは門のところで別れる。
「じゃあ、みんなはどこか高いところから見ていてくれ。失敗するかもしれないが、死ぬわけじゃないし、とにかくやってみるよ」
ルーミエが心配そうに俺を見る。
「……まあ見てる分にはいいんだけれど、本当に大丈夫?私たちは行かなくていいの?」
「大丈夫だよ、行ってくる」
「あっ、待って」
ルーミエたちが一人ずつ順番に抱きしめてくれて、俺の武運を祈ってくれた。エスタの時もそうだったな……。
「あ、いいな私もする~」と、言ってレイラも最後に長めのハグをしてくれた。
「みんな、ありがとう。例によって終わったらうまいもの食べようぜ」
エスタの時もこれで乗り越えられたんだ。験担ぎのつもりで、みんなに伝えた。
「とびきりのおいしい料理を用意するよ、アキト!いってらっしゃい」と、四人とも笑顔で送ってくれた。
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走って街から離れ、近くの森の中で箱魔法を展開する。街から離れるように上昇し、塔が豆粒くらいの大きさになったら塔の真上に移動する。
悪魔の塔の攻略の鍵はMP消費と回復量だ。ステータスを変更する。
◇ ◇ ◇
Lv82 HP820/MP820
強さ:280 守り:280 器用さ:320 賢さ:280 魔法耐性:240 魔法威力:420 ボーナス:0
◇ ◇ ◇
”魔法耐性”の240を100まで下げ、浮いた140を”強さ”へ振る。”魔法威力”の430を300に下げて浮いた130も”強さ”へ振った。
◇ ◇ ◇
Lv82 HP820/MP820
強さ:540 守り:280 器用さ:320 賢さ:280 魔法耐性:100 魔法威力:300 ボーナス:0
◇ ◇ ◇
MP・HP自動回復が540まで上げる。
今回は少し強引なやり方のため、タオルで顔を隠す。全ての準備が整ったので、塔の最上階に向けて降下を始める。
『さあ、始めようか……暴食の炎アズアフィア』
MPを400消費して、ワンフロアを覆う大きさの青い炎を呼び出した。同時に意識が飛びそうになるくらいの痛みを頭に感じる。痛む頭を手でおさえて今回の標的を伝える。
『食いごたえありそうだな、行くぞ。魔力を注げよ』
『了解!』
アズアフィアを塔へ向かわせた。
最上階を青い炎が覆い尽くし、塔を丸ごと飲み込んでいく。MPは毎秒5消費している、一分で最大300消費で許容範囲内で問題はない。
一分が経過しMPが補充される。頭の痛みもずいぶん楽になり、アズアフィアにMPを充填できる余裕もでてきた。青い炎は、ずずずずっと餅か何かを飲み込むように塔を飲み込んでいく。
最上階を飲み込み、しばらくする双子の悪魔の一体を倒したログが流れ、レベルが82から一気に114にあがる。
ボーナスをすべて”強さ”に振り860にする。
◇ ◇ ◇
Lv114 HP1140/MP1140
強さ:860 守り:280 器用さ:320 賢さ:280 魔法耐性:100 魔法威力:300 ボーナス:0
◇ ◇ ◇
これによりMP回復量が毎分860となった。余裕があるので万が一の時を考え、毎分MP消費180の継続治癒魔法を発動させる。
高層階の窓からワイバーンやハーピーやら翼をもったモンスターたちがわらわらと出てきたが、全て青い炎が吸い込んでいく。様子を見ながらアズアフィアへMPを充填する。
今回の作戦で一番気が引けたのは塔の中にいる冒険者だ。
こいつらには悪いが一回死んで教会に戻ってもらう。この世界には加護を受けたものは四回まで死んでも大丈夫というルールがある。次で五回目で本当に死んでしまう奴らが、籠っているかもしれないが、そこは諦めた。
レイラの不安をすぐに解消してやりたかった。……しかし、今後の事を考えると”分析能力をベースとした建物内やダンジョン内の人数を把握できるスキャニング能力がほしい”
よし、強く願っておく、明日の朝には備わっているはずだ。
そんなことを考えているうちに、塔の地上部分は飲み込み終わった。間髪入れず地下部分に取り掛かっている。一緒に竪穴に入り下りていく。
律儀にも地下のフロアの広さと地上のフロアの広さは同じだった。
そりゃそうだよな、どちらが早く百階層を作るかで勝負してて、フロアの大きさがバラバラだったら確実に物言いがつくもんな。
ごっそごっそとアズアフィアは地下フロアも地面をえぐりながら突き進んでいく。味方ながら恐ろしい。どんだけ食うんだよ。
縦穴の中は炎で大変高温だが箱魔法で外気はシャットアウトしているので問題ない。俺は竪穴の中を見渡し、横に通路が伸びていないか確認していく。横道は作られていないようだ。
上を見ると地表の入り口が光の点になっていた。
『食った食った。なかなかうまかったぞ、また頼む』と、言ってアズアフィアは消えた。
頼むのは俺の方なんだが……。こういう討伐案件もあるから召喚できるようになったのかもしれないな。
双子の悪魔の残っていた方も倒したことを知らせるログが流れて、レベルは147となった。
あまり攻略した感じがしないが、うまく塔を破壊することができて良かった。
地上に出ると縦穴の周りには人だかりができていたので、箱の色を黒く変え、人が見えなくなるまで上空に昇る。そして来た時の逆のルートで街に戻る。
街に向かって歩いていくと、四人がこちらに向かって歩いてくる。
「ありがとう、アキト。まさか一日で私を悪夢から解放してくれるなんて思いもしなかったよ」
レイラが目に涙を浮かべながら笑顔で歩み寄ってきた。そして俺を抱きしめて胸に顔を埋めた。塔を無理やり破壊した後ろめたさは一気に吹き飛んだ。時間に余裕があれば、別の方法も取れたのかもしれないが、今回はこれしか方法がなかったんだ。
「アキトさん、どうやったらこんなに強くなれるんですか?」
「ノイリのおかげだよ、エスタの時に言ってくれただろう。”アイディアしだいで強くなれる”って」
「そうは言いましたけど、あんな青い炎見たことないですよ」
続いてルーミエが俺に抱きついてきた。
「おかえりなさい、さすが私のアキトだわ」
「いーや、さすがユウキのお兄ちゃんだね」
変なライバル意識を燃やす二人だったが、レイラがその様子を見て呆れて笑っていた。




