手紙
いろいろあったパーティーを終え、仲間を見つけハイテンションで眠りについた私は目が覚めてから思った。
もうシャルル様と会う機会なくない?と。
シャルル様は隣国の公爵様だ。シリウス様のおともとしてやって来た。
シリウス様たちは城に滞在しているらしいから会うには城に行かなくてはならない。
シャルル様に会いたいが、城なんて気軽に会いに行けるような場所ではない。
ああ……なんと言うことだ。せっかく仲間を見つけたというのに、私はもうシャルル様に会えない。
ああ……せつない。
私は昨日のハイテンションが嘘のように落ち込んだ。
深く深く落ち込んだ。
落ち込みすぎて部屋に籠っていると、アレク兄様がお菓子を差し入れてきた。
そのまま部屋に入ろうとして来たのでお菓子だけ奪って追い返した。
悩みなんてアレク兄様に聞いてもらう必要なんてありませんから!
ああ……。もう会えないのか……。
そう悲しみに暮れながらお菓子を貪っていると、私はあることをひらめいた。
リーゼロッテ姉様だ!と。
●〇●〇●
「リーゼロッテ姉様!」
私はリーゼロッテ姉様の部屋に駆け込んだ。
するとリーゼロッテ姉様は優雅にお茶をしていた。
「リーゼロッテ姉様!シリウス様とはどうなりましたか?!」
「なあに?突然」
そう言いながらも、どこか嬉しそうな顔に私も嬉しくなる。
これは、きっと上手くいったに違いない!!
「上手く言ったのですね!?」
「もちろんよ!わたくしが狙った獲物を逃す、なんて間抜けな真似をするとでも思って?」
「ええ!ええ!さすがリーゼロッテ姉様ですわ!」
よし!リーゼロッテ姉様はシリウス様ともう一度お会いになるはずだわっ!
だって、二人の仲が上手く言ったのだ。
リーゼロッテ姉様の言葉が本当ならここに来たのは、奥様を探すことが目的。
それならば上手くいったリーゼロッテ姉様に音沙汰なし、なんてことはないだろう。
「で!?いつシリウス様とお会いになるのですか?!」
「ふふん。三日後に会う約束をしたわ」
「まぁ!さすがですわ!」
三日後!十分に時間がある!
「リーゼロッテ姉様!手紙を渡していただけませんか!?」
「は?!あなたもシリウス様をお慕いしていたの!?」
「まさかっ!違います!私は彼と共にこの国に来たシャルル様と友人になったのです」
「シャルル……様?」
そんな方いたかしら?とリーゼロッテ姉様は首を傾げている。
ああ、やはり私たちは仲間ですねシャルル様!
キラキラにより作られた影。認識すらされない私たち!
やはり私たちは貴重な仲間……!
「まあ、いいわ。手紙だったかしら。渡してあげる」
「ありがとうございます!」
「いいのよ。幸せはお裾分けしないとね」
その幸せそうな笑みに一瞬イラっとしたが、まあ、今はのろけさせてやろう。
シリウス様を自分のものにできそうなのだ。
それは浮かれても仕方ないだろう。
「では、リーゼロッテ姉様。失礼いたしますね」
「ええ」
私は上機嫌でリーゼロッテ姉様の部屋を退出した。
●〇●〇●
スキップしたい勢いで部屋へ戻っていると、部屋の前に何故かアレク兄様がいた。
え?まさか待ち伏せ?
私が部屋から追い出して、おやつだけ奪ったのを怒って?
やだ、こわい……そう思いながら声をかけると、何故かほっとしたような表情を向けられた。
「よかった……もう治ったな」
「は?なんのことですか?」
いったい何の話?
そう考えてあ、もしかして……とひらめく。
「もしかして、心配してくれてました?」
私が落ち込んでいたのを心配していたのでは?
お菓子も差し入れしてくれたしね。もしかしたら心配をかけていたのかもしれない。
すると、その考えが命中したのか、アレク兄様は顔を赤くした。
うわぁ、さすがイケメン。顔が赤くなってもイケメンだわ。
私は密かにそう関心する。
「べ、別に!少し気になっていただけだ!」
そう言ってアレク兄様は背を向けて行ってしまった。あらら。
とりあえずありがとうございます!とお礼を言っといた。
アレク兄様が一瞬つまづいたのを見届け、私は部屋へと入った。