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仲間を得ました!

沈黙が二人を包む。

ああ!勢いで来てしまったけれど、いったい何を話せばいいのだろう。

彼を見れば彼もやはり何を話さばいいのかわからないようだ。

気まずそうな顔をしている。

だめだ!こんなところで貴重な仲間を無くす訳にはいかない!

私は確信したのだ。

彼のあの諦めたような顔を見た瞬間。

あのキラキラを眩しそうにしていたのを見た瞬間。

彼は私と同じだと!!

分かり合える存在だと!!



「あ、あの……!キラキラ……眩しいですよね……!?」



や、やらかしてしまった!!

何か言わなきゃ!何か言わなきゃ!と焦るあまり私は直球過ぎて意味不明なことを言ってしまった!

いくら仲間だったとしても、これはわからないかもしれない!

どうしよう!変なやつだと思われたかもしれない……!

彼も驚いたように目を丸くしている。

そして、彼は随分な間の後……口を開いた。



「ああ……。眩しい。あいつらの顔は凶器だ」


「……!」



その言葉に私はぎゅっ!と両手で彼の手を握る。



「ええ!ええ!わかります!!わかりますわ!!あなたの気持ちが痛いほどに……!」


「……!そうか……!」


「ええ……!」



その瞬間二人の間にあった壁は取り除かれたのだった。



●〇●〇●



「あいつと俺は従兄同士なんだ……」


「まあ……。そうだったのですか」



あの後、打ち解けあった私たちは自分の身の上話を始めていた。



「あいつの母と俺の母が姉妹でな。幼い頃からよく共に遊んでいた。あいつも俺も兄弟が多くて、遊ぶ時はいつも大人数だったな。小さい頃には綺麗な顔だとあいつらが噂されているのが単純に嬉しかった……」


「あの……少しよろしいですか?」


「ん?なんだ?」


「えっと……あいつら、ということは……」


「ああ……俺の周りは美形ばっかりだったんだ。弟たちも、あいつの弟もみんな……」


「……っ!」



ああ!なんということだろう!

こんな……こんなところまで……似ているなんて……!

私は幻の涙を心の中でぬぐった。



「気づいたのは……いつくらいだったかな。たしか社交界に出始めたころらへんか。あいつと共に居て、まるで俺はいないもののように扱われた……」


「わかります……。彼らに、悪気はないのですものね。本当に隣にいることに気づいていないだけ……」


「ああ……だから怒るに怒れず……。惨めになるだけ……。真っ直ぐに見てくれたのは……お前くらいだったな」



そう言われて、私は優しく微笑む。



「わかります。だって……私たち、仲間でしょう?」


「ああ。そうだな。……お前の話を聞かせてくれないか?」


「ええ。私はエクラリュウール家の娘です。えっと……エクラリュウール家をご存知ですか?」



そう問えば、彼は驚いたような表情をしていた。



「あ、ああ……エクラリュウール家の噂は俺の国にも流れている。実際目にしたのは初めてだったが……お前もエクラリュウール家だったのか」


「ええ。見えないでしょう?」



そう自嘲するように笑う。

言われ慣れている言葉だ。

もしかしたらいまだに私のことをエクラリュウール家の娘だと認識していない人もいるかもしれない。



「だが、俺はお前が、エクラリュウール家の者に見えないお前がエクラリュウール家で良かったと思う」


「……え?」



その言葉に驚いて、彼を見上げると、彼は優しげに微笑んでいた。



「そうじゃなきゃ、俺はお前と仲間、になれなかったからな」


「……っ!そ、そうですね……!良かった……です!!」



良かった……。良かった……。初めてそんなふうに思った。

やはり仲間は素敵だ。



「えっと……エクラリュウール家をわかっていらっしゃるのなら後はあなたとだいたい同じです」


「そうだな。だいたい……わかった気がする。話してくれてありがとう」


「いえ、こちらこそ」



そこで会話が途切れた。

再び沈黙が二人を包む。

今度の沈黙は何か話さなくては!と焦るものではない。

とても穏やかなものだ。

彼も同じ気持ちのようで、ちらりと見た横顔は穏やかなものだった。

しばらくその心地良さに浸っていると、ふとあることに気づいた。



「あの……」

「リリアンナ!」



疑問を解消しようと彼の方を向いたその時、名前を呼ばれる。

振り向くとそこにはアレク兄様がいた。



「どうかしたのですか?」



その顔がどこか怖くて私は首をかしげる。

いつもふざけている時に見せる怒り顔じゃない。

なんだ。何を怒っている。

さっき足を踏まれた怒りが今頃でてきたか。

だが、今はアレク兄様にかまっている暇はない!キラキラ顔の人は去れ!

そんな視線を送っているのに、アレク兄様には全く通じない。

やっぱり私たち通じ合えないんだね。足を踏ませてくれるほど仲が良かったはずなのにね。

そんな悲しみを感じていると、アレク兄様が私と彼の間に入ってきた。

ちょっ!邪魔ですよ!アレク兄様!!

しかも私の名前を呼んだくせに私に背中を向けるとか意味がわからない。



「こんばんは、シャルル様」


「…………。こんばんは」



アレク兄様が彼にそう挨拶する。

彼は……シャルル様というのか。そういえば名前聞いてなかったな~と思って聞こうと思っていたところだったからちょうど良かった。

今さら名前を聞くのもなぁと思っていたのだ。ナイス!アレク兄様!



「二人がなかなか出てこないから少し心配になりまして。リリアンナが何かシャルル様にご迷惑をおかけしませんでしたか?」


「別に。そういったことはなかった」


「それは、良かった……。シャルル様。失礼は承知なのですが、リリアンナを返していただいてもよろしいですか?父が呼んでおりまして……」


「え?父様が?」



答えたのはシャルル様ではなく、私の方だった。

父様に呼ばれるようなことを私は何かしただろうか。

まさかアレク兄様……今日のことを父様にチクったんじゃないでしょうね……。

パーティーの席で兄の足を踏もうと奮闘していたなんて知られたら……怒られるに決まってる!

ダメです!シャルル様!断ってください!!

そう念を送ったはずなのに、キラキラの壁に遮られた私たちの心は通じ合うことはできなかった。



「かまわない」


「ありがとうございます。ほら、行くぞ」



アレク兄様は私の手をつかみ歩き出した。

いやぁ!行きたくない!!

そう思うのに、アレク兄様の力が強くて転ばないために私は早歩きをするしかない。

ちょっ!離せ!アレク兄様!!

なんとか手から逃れようとするが無駄に終わり、バルコニーを出てしまおうとしたその時。



「リリアンナ!」



名前を呼ばれ、振り向く。

声の主はシャルル様だった。



「また、会おう」


「ええ!また!」



引っ張られていない方の手でガッツポーズをきめ、私は仲間と別れを告げた。

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