素敵な出会い
「で、リーゼロッテ姉様?いったいどうしたのですか?」
そう訊ねるとリーゼロッテ姉様はあのね!と顔を近づけた。
それは……きついです……。リーゼロッテ姉様。ま、眩しい……。
苦しんでいる私に気づかないリーゼロッテ姉様は無邪気に言った。
「協力してほしいの!」
「協力って……いったい何をですか?」
そう問うと「あれ!」とリーゼロッテ姉様は小さく指を指した。
そこには美しい青年がいた。
金の髪に青い瞳。白馬にのっていそうなその人は……あれは……。
「ユリシス王子……?」
「そう!」
そこにいたのは今日のパーティーの主役。隣国の王子だった。
最初に紹介されていた時にはかなり遠目だったのでわからなかったが、近くでよく見ると……かなりのイケメンだ。
レベルでいったら、我が家族と同じくらいだろう。つまりかなりのイケメンだ。
よく周りを見れば、次話しかけようとぎらぎらとした目で狙っている女の人たちがあちこちにいる。
「ユリシス様が、どうかしたのですか?」
「わたくし……恋に落ちてしまったの……!」
「……は?」
突然の予想外の言葉に思考が一瞬止まる。
誰が誰に何をしたって……?
たっぷりと間を置き、私は考え……
「正気ですか……!?リーゼロッテ姉様!」
「なっ!?何よどういう意味!」
「相手は王子ですよ!?しかも隣国の!それにあの国はこんな大きくも小さくもない中途半端な国でなく、いくつもの国を属国に持つ大国ですよ!」
無謀だ。無謀すぎる。
たしかにリーゼロッテ姉様は綺麗だ。
傾国の美姫、と言われてもおかしくないくらいに美しい。
だが、しかし身分が違いすぎる。
きっとリーゼロッテ姉様は知らないのだ。
美人だけではどうにもならないことがあるということを。
「ふっふっふっ!あなた知らないの?」
「何をですか?」
「ユリシス様が奥様を探してここまで来たってこと!」
「はあ?なんですか、それ」
そんな話は初めて聞いた。
そもそもなんであんな大国の王子がわざわざこんな国に来て嫁を探しに来るのか。
自国で探せ自国で。
私の本音が聞こえたのだろうか。リーゼロッテ姉様は首を傾げながら言う。
「なんでも自国では望む形で探せないからとかなんとか?」
「大丈夫なんですか?それって」
実は自国ではものすごく評判が悪かったりするんじゃ……。だから噂の回って来ないここにきたのでは?
やっぱりやめといた方が……そう思うがリーゼロッテ姉様の話は進んでいく。
「いい!リリアンナ!あなたは私の隣に居てくれるだけでいいの!それだけで私は引き立つわっ!」
「はぁ!?」
リーゼロッテ姉様のとてつもなく失礼な言葉に私の考えは吹き飛ぶ。
確かにその通りだけれど!そんなにはっきりと言う!?
私はリーゼロッテ姉様のことを考えていろいろ考えているのに!
もう!リーゼロッテ姉様なんて振られて泣いてしまえばいいんじゃないかしらっ!?
「あ!シリウス様が話を終えられたわ!行くわよ!!」
「えっ!?ちょ!だから引っ張らないでください!」
リーゼロッテ姉様はずんずんと進んでいく。
周りの人達はリーゼロッテ姉様がシリウス様の元に向かっていると知ると、歩を止めている。
ええ、ええ。わかるわ。その気持ち。
この顔と比べられるなんて嫌ですものね!私は今から引き立て役でいきますがね!
やめて!そんなあの子可哀想……ていう目!
げっそりとしながらシリウス様の元に行く。
どんどん近づいていく美形の顔に目を細めながら、覚悟を決めた。
「はじめまして、シリウス様」
リーゼロッテ姉様がにっこりと微笑む。
だめよ!私!今隣を見ては!!
目を焼かれるわ!
今きっとリーゼロッテ姉様は計算されつくした完璧な笑顔を浮かべているはず。
そんなの見たら私は失明してしまうかもしれない!
私はとりあえずリーゼロッテ姉様の笑顔を直に見たであろうシリウス様の顔を見ることにした。
この人も美形だからこの攻撃は効かないだろう、そう思っていたのに……
「は、はじめまして……」
シリウス様の声が震えた。
え?今、絶対ドキッてしませんでしたっ!?
え?シリウス様ちょろくない?!まさかお父様と同じ同族レベルの顔じゃなきゃ愛せない方!?
うわぁ……明らかに照れてる……うわぁ……リーゼロッテ姉様やれるっ!て声に自信が出てきてる……
うわぁ……。これ私完全に邪魔物じゃない?
周りに哀れられて終わるって……
「はぁ……」
「はぁ……」
誰かのため息と重なり私は驚いて視線を上げる。
すると、シリウス様の隣に立つ、先程までシリウス様と話していた方と目があった。
そして時間が止まったような気がした。
たしか彼はシリウス様と共にこの国へやって来た方だ。
シリウス様のお伴としてやって来た次期公爵様。
その方を一目見た瞬間私は目を奪われた。
金の髪に青い瞳。
シリウス様と同じ色を持ち、その顔立ちもどこか似ているところがある。
もしかしたら親戚の方なのかもしれない。
そう思わせるくらいに似ているところがあるはずなのに……彼には輝きがなかった。
キラキラと光れていなかった。
まばゆく光る者の影となってしまっている。
決して見れない顔ではない。
平均よりは上だろう。限りなくイケメンに近い。
それなのに隣の輝きに埋もれてしまい、まったく目立っていない。
いや、目立っていないだけではない。
彼は……見事な引き立て役となっていた。
電撃に打たれたような衝撃が私の中に走る。
あれは!あの諦めたような顔は!
キラキラを眩しそうに見るその表情は!!
彼は……彼は……きっと……!
私と同族!!
この沸き上がる感情は親近感!!
彼もそれを感じたのだろう。
驚いたような表情で感動に震えている。
私たちはその瞬間通じあった!!
お互いにアイコンタクトをとる。
そして隣のキラキラに小さく耳打ちをした。
「リーゼロッテ姉様。上手くいっているようでよかったです。私はお邪魔のようなので離れておきますね」
「ええ。ありがとう、リリアンナ。わたくし頑張るわ!」
そう小さくガッツポーズをするリーゼロッテ姉様を細めで見て、私はその場を去る。
ちらりと彼を見ると彼もシリウス様から離れたところだった。
私たちはまたもやアイコンタクトをとり、バルコニーへと別々で向かう。
来なかったらどうしよう、なんて思わない。
彼は来る。必ず来る。
同族の彼ならば必ず。
バルコニーには人が誰もいなかった。
秋も終わりに近づいたこの頃。夜風は冷たく、好き好んで来る者はいないのだろう。
私はそこで彼を待つ。彼はすぐに現れた。




