第1話:空が割れた日、疲れ果てた少年が降ってきた
皆さん、はじめまして。本作の作者、スパラグモスと申します。
私が執筆を楽しんだのと同じくらい、皆さんにこの物語を楽しんでいただければ幸いです。
この第1話は、二人の主人公の個性を紹介し、同時にこの世界の美しく魅力的な情景を皆さんの目に届けられるよう、描写に心を込めました。
もちろん、今後の章で世界のさらなる秘密や詳細が明らかになっていきます。
私が用意したこれからの展開を、ぜひ楽しみにしていただけると嬉しいです。
応援よろしくお願いいたします!
エーテルの密林の上の空は、本来割れるようなものではなかった。
しかし、その日の午後は違った。
――パリ、ン。
最初になったのは、ガラスが石で叩き割られたかのような、硬く冷たい音だった。
どこまでも青かったはずの空の真ん中に、突如として黒くギザギザとした「亀裂」が走り出す。
その裂け目は見る見るうちに広がり、周囲の光を吸い込むような、完全なる漆黒の深淵を覗かせた。
その数百メートル下。
そんな天変地異など知る由もないアカシャは、精神修行――という名の、精神修行――という名の、肺炎を回避するための過酷な戦いの真っ最中だった。
(さ、寒い……っ)
アカシャは、激しい滝の水圧が叩きつける平らな岩の上で、必死に結跏趺坐を組んでいた。
北方の霊峰から流れ落ちる水は氷のように冷たく、彼女の肩を容赦なく打ちつける。あまりの冷たさに、彼女の唇はすでに青ざめ、白いショートヘアは頭にぴったりと張り付いていた。赤い瞳をきつく閉じ、ただひたすらに歯の根が噛み合わないようにこらえる。
修行の際、偉大なる「雲裂きの剣士」である師匠はこう言っていた。
『心を研ぎ澄ませ。滝と同調し、己の内に脈打つエーテルを感じるのだ』
彼女は師匠の教えを信じたかった。立派な弟子になりたかった。
だが、現実問題として、指先の感覚はとっくに消え失せ、背中にかかる凄まじい水圧で息をするのもやっとなのだ。
その時だった。
――ヒュオオオオオオオオ!
滝の轟音とは明らかに違う、風を切る異常な音が響き渡る。
それに続いて聞こえてきたのは、およそこの世界のものとは思えない、ひどく現実的で、情けない悲鳴だった。
「わ、わあああああああああっ!?」
「きゃっ!?」
驚いたアカシャはバランスを崩し、そのまま冷たい水の中へと転げ落ちた。
激しく咳き込みながら水面に顔を出すと、滝の真ん中、最も深い水たまりの場所に、空から何かが凄まじい勢いで叩きつけられた。
ドボォン!! と、巨大な水柱が上がった。
アカシャは滝のしぶきの中で急ぎ立ち上がり、震える手で自分の頭を触った。大怪我でもしていないか確認するためだったが、幸いにもただ驚いただけのようだった。
ドクドクと激しく波打つ胸に手を当て、深く息を吸い込んで心を落ち着かせる。冷たい空気が肺を刺したが、立ち止まっている時間はない。
彼女はすぐさま、何かが落下した場所へと向かった。
(さっきのは悲鳴だった。なら、絶対に人がいる……!)
助けなければ、という強い決意が彼女を動かした。
濡れて滑りやすい川の岩場を、バランスを崩しかけながらも急ぐ。幸い、このあたりの川底はそれほど深くはなく、すぐにたどり着くことができた。
そして、そこにいた。
川辺の石の間に半ば沈むようにして、一人の少年が横たわっていた。
アカシャは彼の奇妙な服装に、一瞬だけ思考を奪われた。薄手の白いシャツに、硬そうでくすんだ灰色のズボン。そして、見たこともない素材の黒い靴。
マントも、革のプロテクターも、防具もない。あまりにも地味で、それでいて奇妙に統一された衣服――それは、元の世界の高校の制服だった。
服への疑問を一度頭から追い出し、アカシャはありったけの力を振り絞って彼の体を冷たい水から引き揚げ、乾いた砂利の上へと横たわらせた。
少年はすぐに反応を示した。激しく激昂するように咳き込み、川の水を吐き出しながら、ゆっくりと目を開けていく。その瞳の下には、若さに似合わぬ深い隈があった。
「え……あ……ここ、どこだ……?」
生気のない、擦り切れたような声だった。
アカシャは寒さに少し身を震わせながら、彼の傍らに膝をついた。
「今はそれを気にしないで。それより……大丈夫? どこか痛むところはある?」
少年は肘を使ってなんとか上半身を起こそうとしたが、すぐに力尽きたように頭を後ろへもたれさせた。
「はぁ……どう見えるよ?」
彼の口から出たのは、シャツの水分すら乾かしてしまいそうなほど乾いた、皮肉に満ちた声だった。
「ずぶ濡れで、寒くて、まるでトラックにでも轢かれたような気分だ」
アカシャは目をパチクリとさせ、心底不思議そうに首を傾げた。
「とら……っく? トラックって何? 地竜の仲間か何か?」
少年は片目で彼女をじろりと見た。そこで初めて、彼女の白い髪、半魔族を思わせる赤い瞳、そしてファンタジー映画のような衣服に気づく。
彼はぎゅっと目を閉じ、諦めに満ちた長い、長いため息をついた。
(最悪だ。どうやら、本当に自分の街じゃないらしいな……)
アカシャは一歩を踏み出そうとしたが、その場で激しくよろめいた。
つい先ほどまで、裾の金のルーン文字によって水を弾いていたはずの白い訓練着が、まるで突然「電源が切れた」かのように、周囲の水気を一気に吸い込み始めたのだ。
綿の生地はスポンジのように冷水を吸収し、重く、冷たく、そして肌に張り付く。
強烈な悪寒が彼女の背中を駆け抜け、頭からつま先まで激しい震えが襲った。
砂利の上でなんとか上体を起こしたオーランドは、片方の眉を上げ、冷徹で分析的な視線を彼女に向けた。
「おい」
自分の濡れた腕をさすりながら、彼は言った。
「氷点下に近い川に入るのに、綿の服を着るなんて、健康上の自殺行為だと思うぞ」
「え……?」
アカシャは困惑した様子で、ずぶ濡れになった袖を見つめた。
「でも……これには『常時撥水の魔印』が刻まれていて……。なんで急にこんなに冷たいの? 何が起きたの?」
オーランドは、哀れみすら感じる乾いた笑いを漏らした。
「どうやら、君の服の『撥水加工』は完全に切れたみたいだな。まあ、これで二人揃って低体温症の危機ってわけだ。お互い様だな?」
「笑い事じゃないわ……。このままじゃ体に毒よ」
カチカチと小さく歯を鳴らしながら、彼女は必死に威厳を保とうとした。
「だ、大丈夫。二人分の『温風の魔術』をかけるから……。これでも、一応は瞑想の修行を終えた身だもの」
彼女は、エリート魔法学校の生徒としてのプライドを取り戻そうと、ぎこちない笑みを浮かべた。
「最初からそうしてくれ」
オーランドは完全に起き上がり、濡れた砂利の上で胡坐をかいた。
アカシャは赤い瞳を閉じた。
風の魔力を練るためには、彼らの流派において「完全なる精神集中、雑念を排した無の境地」が必要不可欠とされる。
彼女は胸の震えを抑えながら深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出して緊張を解いた。
そして、おもむろに右腕を上げる。
しなやかに指先を広げ、温かい空気の流れを誘導するための儀式的な弧を、優雅に空中に描いた。
呼応するように、滝の周囲の風が彼女を中心に渦巻き、数枚の枯れ葉を舞い上げる。
アカシャは手のひらの中心に魔力を集中させ、まっすぐオーランドへと向けた。
大気がかすかにハミングするように振動し、心地よい温風の放出を予感させる。
彼女は、魔力を解き放つ準備を整え、ふっと微笑んだ。
――そして、風はただ、死んだ。
彼女を包んでいた優しい空気のうねりは、パサッという気の抜けた音と共に霧散した。
オーランドの鼻先をかすかにくすぐっただけの、微温い生ぬるい空気は、すぐにただの冷たい川風へと戻っていく。
彼女の袖口に刻まれた金のルーン文字は、本来なら眩しく輝くはずが、灰色にくすんだまま沈黙していた。
アカシャは、魔力を放つ姿勢のまま腕を突き出し、呆然と自分の手を見つめて何度も瞬きを繰り返した。
――何も、起きなかった。




