2.給料を受け取らなかった人
とある日、新入社員が来た。
新入社員と言っても、弊社は田舎の何でも屋。
職安や在籍従業員からの紹介で募集して、面接して、採用するという至って普通の流れで、その人も採用した。大企業的に言うならば途中入社扱いなのだろう。何でも屋だから仕事内容はいろいろで、この日は先輩の横に乗って仕事の流れを確認しつつ、続けていけそうか確認してもらう予定だった。
向き・不向きもあるし、いざ入社したら思ってたのと違うなんてよく聞く話だ。我慢して指導されて使えるようになったと思ったら辞めるなんてことは、本人にも会社にも不利益なので本人にも見極めてもらうし、横乗りの先輩にも後で評価を聞く予定だった。
……そう、その予定だった。
予定は未定とも言うけれど、今回ばかりは未定も未定、いや大誤算っという感じだ。
夕方、特に事故もなく先輩と共にその人が帰社した。
どうだった?辛いこととかなかったかな?仕事内容はどうだった?等々、少数精鋭でやってる弊社は総じて仲がいいというか、往々にしておせっかいな奴が多い。そして厳つい見た目とは裏腹に、不器用ながらも根は優しく、その人を歓迎していた。
だが、今日は珍しく迎えの人数が多かった。
なぜなら、駐車場にはなぜか犬がいたからだ。しかも、ただの犬ではない、コロコロした生後1か月くらいの子犬である。隣の倉庫の木陰で野良犬が子を産み、そろそろ母犬から離せるようになり貰い手を探していると倉庫管理の人が弊社に連れてきていたのである。
可愛いものはそれだけで人を引き付けるもので、弊社社員たちは子犬を可愛い可愛いと誉めそやして終業前に盛り上がっていた。家族に聞いて返事する、飼いたいけどマンション暮らしで無理、家に犬いるからもう1匹はちょっと難しい、お猫様に嫌われてしまう等々、各々思い思いに子犬を堪能していた。そんな中、ひときわ子犬に食いつていたのが本日入社のその人だった。
可愛い可愛いと撫でて抱っこして「この世の天国はここである」かのごとく、もう猫かわいがりである。
いや、猫じゃなくて犬なんですけども。
そんなことをしている間に、社長と横乗りしてた先輩との情報交換は終わり、上層部の評価はとりあえず保留となったらしい。まぁ初日だし本人のやる気も見えるし、判断しようにも今日は補助的な役割しか任せてないし、これだけで判断するのも時期尚早ではと考えた上で保留となった。
・・・はずだった。
ここでまさかの本人から続けられない、無理です、との申告。
いや、何か本人なりに感じるところがあったのかもしれない。だかしかし、判断が早すぎないか?と上層部が首を傾げつつ引き留めようとした時、その人は衝撃的なことを言い放った。
「今日の給料は結構です!でも代わりに、この子犬をくださいっ!!」
かくしてその人は給料を受け取らず
給料代わりに子犬を受け取り
意気揚々と退社して行ったのであった。
2.給料を受け取らなかった人
実際はもっといろいろあったはずなんですが、業務内容も関係してくるしある程度は端折って誇張・創作させて頂きました。
楽しんで頂けたら幸いです。




