第2話 ダンジョンへ
「ナガセ様は水属性ですね!お、しかもSランクじゃないですか!頼りにしてますよ!」
「それでは、皆様疲れてると思うので今日はお休みください。」
まだ状況がわかっていない。
ここはどこなんだろうか、私たちはこれからなにをやらされるのだろうか。
そんな不安の中、私は眠りについた。
次の日、私たちは魔法についての講義を受けた。
内容は、あまりにも私たちのいた世界とかけ離れすぎて、あまり理解はできなかった。
ひとまずはこんな生活を続けるのだろうか。
事件が起きたのは、その次の日の朝。
私たちは、広間に集められた。
「全員集まりましたね。昨日は魔法学園に行ってもらったと思いますが、正直このままだと無理なので、学園に行くのはやめて今日からは実践を通してレベルアップアップしていきたいと思います。」
あれ?三枝君がいない、でも全員って言った?
「すみません。」
「はい?どうしました?ナガセ様?」
「三枝君がまだ来てないんですけど。」
「、、、えっと、、ああ、サエグサ様ですね、私もよく知らないんですが、おそらく昨日の夜に宮殿から出る人影を見たので、出ていってそのまま迷ってしまったんじゃないですかね。」
「聖女様、北東の森でこれが見つかったと報告がありました。」
「それは、制服?」
ここにいる男子生徒は全員制服を着てるから、三枝君のもの、
「北東の森、あそこは凶暴な魔物が出るのに、そこで見つかったということは、もう手遅れでしょう。とても残念です!大事な勇者が1人減ってしまって!」
「いや、まだ生きてるかもしれませんし、捜索を、」
「ナガセ様、私の話聞いてました?時間ないって言いましたよね?はぁ、まぁいいです、Sランクですし、少しくらいわがままでも。では、今日のレベルアップ実習の場所はその魔物の森にしましょう。」
わがままって、なんでみんなはそんな素っ気ない態度を取れるの?
久世君なんて、みんなで一緒に現実世界に帰ろうって言ってたよね?
「それでは、皆さんを指導してくれる人を紹介します。王国騎士団の団長と副団長、あと王国騎士団魔法部隊の隊長です。」
「私は王国騎士団団長の、リベルだ。よろしくな。」
「私は同じく王国騎士団の副団長、エマだ!」
「魔法部隊隊長のアルです。」
「皆さん、ビシバシ鍛えてもらってくださいね!」
「今日はここで特訓をする。だが、まずお前らの実力を知らないことには始まらない。さっき支給した武器、もしくは魔法を使って襲ってくる魔物から身を守れ。ほら、来たぞ。」
指を刺された方向には、狼?のような黒い獣が大量に向かってきている。
「みんな!まず落ち着いて陣形を組むんだ!」
久世君の言葉にみんな集まり、魔物に向き合う。
「指図すんなよ!」
御堂君が獣の大群に向かって行くと、直後、大爆発が起きた。
「いやぁ、すごいね、でも森でこんな火を起こしちゃうなんてね。」
そう言ってアルさんが木に燃え移った火を、魔法で水をかけて消している。
その時、リベルさんの表情が強ばる。
「、、、まさか、お前ら!一旦退避だ!こちらに来い!"魔石持ち"がいる!ナガセ!後ろだ!」
「!?、くっっ、」
何とか剣で受け止められたけど、このままだと押し負ける!
「くっ、、うああぁ!」
その時、持っている剣に水?のようなものが纏い、魔物を押し返すことができた。
グルルル!
こちらを睨み、再び襲いかかってくる。
が、その瞬間、私の前を1本の光が横切った。
その方向を見ると、そこには王塚君がいた。
「魔石持ち?だっけか?周りの雑魚よりも強いのかと思えば、変わらないな。やはりこの俺を満足はさせられないのか。」
「ありがとう!王塚君。」
「気にするな、これで同じSランクでも差があることがわかった。やはり俺とお前が同じなわけないな。」
「オウヅカ!まだ終わってないぞ!」
「ふん、キングディレクション。」
数本の光が魔物目掛けて伸びていき、その体を貫いた。
「さすがだな、これが聖女の言っていたものか。」
「王塚君、こっちも手伝ってくれ!」
「ああ、久世、悪いな、俺は弱いやつには興味がない。その雑魚どもはお前らで何とかしろ。」
王塚君は協力してくれなさそうだし、私と久世君で何とかするしか、
「、、おい、リベル、魔石持ちが大量に来るぞ、」
「エマ、それは本当か!?なら早く退避を!」
「いや、もう間に合わない。」
「さっきの雑魚が大量に来たか、いいだろうこの王塚永久が相手をしてやろう。」
「ねぇお姉ちゃん、なんかいっぱい来たよ?」
「朱莉、やるわよ。」
「長瀬さん!みんなを守るんだ!」
「わかったわ!久世君!」
「リベルさん、魔石持ちが出たそうですが、どうでしたか?」
「凄かったぜ、特にあの4人、あいつらだけでほとんどの魔物を倒した。それにあんたの言ってた、固有魔法だっけか?多分それも見れた。他のやつは、あの4人に至らずとも劣らないやつもいるが、戦闘向きじゃないやつもいるな。まぁこれからだ。」
「それはお任せします。それにしても、もう固有魔法を使えるようになりましたか、これは、今回は行けそうですね。もう行っていいですよ。」
「相変わらず扱いが雑だな。それじゃあな。」
もう固有魔法を使いこなしたのか、これは少し危ないかもな。
このペースで力をつけていったら、もし反逆されたら面倒だ。
闇魔法を持っていた、名前はなんだったっけ、まぁどうでもいいか、あいつも早くも魔法を使っていた。
かつて私に反逆してきた闇魔法使いも成長のスピードが恐ろしく早かった。
だから、焦っていつもより早くあの"処理場"に送ってしまったが、ナガセ以外は気にした素振りもないし大丈夫だろう。
「はぁ、人間って扱いにくくてめんどくさーい。」
後日、またあの森に行って魔物と戦った。
昨日とは違って、戦い方が少しわかってきた。
でも、まだまだ戦い慣れはしていない人が多い。
私は剣道をやっていたから他の人よりは少しこういうのには慣れてるけど。
だけど、問題は恐怖だ。
昨日、1人、腕を失う怪我をしてしまった。回復魔法で、腕は戻るらしいけど、そのせいで怯えている子も多い。
「皆さんお疲れ様です!戦えるようになりましたか?」
「聖女様、疲労が溜まっているものもいます、休みを頂けませんか?」
「うーん、そうですねー、あまりのんびりもしていられないんですが、まぁ勇者お披露目をまだしていなかったのでそれも兼ねますか。では明日は、レユニオンに向かいましょうか。」
「バエル、今日と明日は自由にしていいぞ。金もやるから、好きに使ってこい。ああそれと、服を買って来い、ずっとの薄汚れたローブと布1枚はな。」
「わかった、余った金は何に使ってもいいのだな?」
「ああ、なんか食ってくるのもいいし、何か買ってもいい。」
「わかった。」
そういうとバエルは部屋から出て行った。
俺は、持ってきた本を読み漁っているのだが、基本的な闇魔法が書かれているものが大半だった。
だが、一つだけ異質なものがあった。
魔力増幅装置の作り方と使用法とその注意か。
だいぶ丁寧に書かれてるな、というかなんでおれ異世界の文字読めてるんだろう。
勇者補正か?細かいことはいいか。
それで、必要なものは、魔鉱石と、魔物の骨粉、これだけか。
あとは、それらに、魔鉱石と同じ魔力をかける。
意外と複雑なことはしなそうか。
それで、注意は、この魔力増幅装置は、その属性に対する耐性が必要であり、なければ、装置と皮膚の接点から拒否反応が起こり、触れた部分の皮膚が剥がれ落ちる、怖いな。
まぁ、何度も腕を切断する痛みを味わった今なら皮膚が剥がれ落ちるくらいなんともないか、てか今の俺は皮膚半分くらいしかないか。
あとは、基本的な魔法を覚えたいが、何度やっても上手くいかないんだよなぁ。
バエルが帰ってきたら教えてもらうか。
じゃあ帰ってくるまで暇だな。
俺も観光するか。
こう街並みを眺めながら歩くのもいいもんだな。
日本には無い景観だし新鮮だ。
目に入ってくるのは、武器屋、薬屋、宿屋、飯屋、雑貨屋、服屋。
ゆっくり歩いていると、聞き覚えのある声が入ってきた。
「やっぱりその服が一番似合ってるよ!ね!そう思うでしょお姉ちゃん!」
「ええそうね。それにしても、綺麗な髪と瞳をしているわね。透き通るような透明な瞳と、輝くような銀色の髪。羨ましいわ。」
げっ、なんで東雲姉妹がここに。
いや、確か勇者一行が来るとか言っていたか。
別にそれはいい。あいつらがどこにいようが何をしようが関係ない。
だが、
「そうか、我は服はよくわからないから助かったぞ。」
なんでバエルが一緒にいるんだよ!
話の流れで俺の話が出れば、そいつらからラウムにバレる可能性が高い。
何とかあいつらから引き離さなければ。
「お、おう、"エル"!服を買ったか。」
頼む!バエル!気づいてくれ!
「ん?エル、、ああ、そういうことか、ええっと、、サラか!」
ナイス!よく覚えてくれた!
俺がその場しのぎで適当に言った名前を!
「誰ですか?」
そういえば、俺って人の名前ほとんど覚えてなかった。
東雲、、なんだっけ、、妹の方。
「俺はエルの仲間だ。」
「、、、大丈夫?あの仮面の人に騙されてない?」
なんかすごく怪しまれてない?
まぁ確かに、今思えば、バエルの姿は中学生くらいだし、仮面つけてる男は怪しい人にしか見えないか。
「ちゃんとあいつは仲間だぞ?」
「それなら良かった。てか、名前エルちゃんって言うんだね!私は朱莉って言うよ!」
「私は静香。」
そうだ、朱莉か。
まぁほとんど名前は呼ばないし、覚えてなくても仕方ない。
「アカリにシズカだな、覚えたぞ。」
「エルの面倒を見てくれてありがとうございます。」
「サラさんだっけ?こんな女の子を1人で歩かせるなんて危ないよ!ましてやこんな法もなさそうな世界で。」
「いや、一応大人なので。」
どちらかと言うと俺やお前らの方が子供だけど。
「え!?エルちゃん大人なの?」
「ん?ああ、一応いちまん、、」
「いやぁぁ、ここら辺は初めてですか!?ここらは12歳で大人なので!」
適当だけど、どうせ大丈夫だろ!
てか、16000年って言おうとしただろ!
話をややこしくしようとするな!
「あっ、そうなんですか、でも小さい子なことには変わりないので!気をつけてくださいね!」
「ご忠告ありがとうございます。ではこれで。」
「その手、なんですか?」
東雲姉、静香とか言ったっけ?
この世界の人には何も言われなかったが、やっぱり気になるよな。
「これですか、これは魔法ですよ。」
「それは闇魔法ですか?」
なんかグイグイ来るな。
俺の捜索でもされてるのか?
闇魔法使いは珍しいとか言ってたしな。
「そうですね。でも私がやったわけではなく、知り合いにやってもらったんです。」
「、、、そうですか。すみません、変なこと聞いて。」
「いえいえ、ではこれで。」
足早にその場から去り、他のクラスメイトに会う前に宿に戻った。
「はぁ、まさかあいつらに会うとは。合わせてくれてありがとな。」
「あれが勇者と言うやつか。意外と普通の人間なんだな。」
一応俺も勇者なんだけどな。
「それで、なんで戻って来たんだ?」
「あ、そうだった。魔法を教えてくれないか?」
俺が頼むと、心底ありえないという顔をされた。
「なんだよその顔。」
「ダークヒールもダークカースも使いこなしていたじゃないか。教える必要などないだろう。」
「それはそうだけど、なんか他の魔法は使えないんだよ。」
「古代魔法だとそういうこともあるのか、まぁいい。我は感覚的なところしか言えないが、魔法の基本的なイメージは、魔素を集めて具体化する感じだ。炎を出したかったら、火の魔素を集めて、炎の形をイメージする。そうすればできる。」
「おお。」
「だから、火の魔素を使わなくても、このように闇の魔素を使って炎を作ることもできる。まぁこの炎は熱くはないがな。」
「へぇ、そうなのか。ん、、ふん!うーん、あんまりできないな。」
「そうだな、ここらに古代魔法に使える闇魔素があまりないからかもしれないな。もしそうなら、闇魔法を使う力がすごく弱いことになるがな。」
確かに俺ってEランクとかだったっけ、勇者補正どこいったんだよ。
「そうか、じゃあもうあれ作ってみるしかないな。バエル、角出してくれるか?」
「別にいいが、何するんだ?」
俺はバエルの角を、削り始めた。
「ひゃっ、ソラ!何をするんだ!!」
「いや、作ろうとしてるものに魔物の骨粉が必要って書いてあって。」
「我は魔物ではないぞ!悪魔だ!」
「まぁ、悪魔でもできるだろ。だから取らせてもらうよー。」
「やめろぉ!」
「えっと、これを魔鉱石と一緒にどうするんだっけ。」
「くそっ、こんなものがなければ。」
バエルは自身の首についた、首輪のような模様に触れている。
そんな模様があったのか。
「悪かったって、それで、これに魔力をこめるらしいんだが、どうやってやるんだ?」
「はぁ、こうやってやるのだ。」
バエルが手をかざすと、光始め、やがてひし形の黒い結晶ができた。
「おお、これが魔力増幅装置か。えっと、これをつけるんだっけ。」
試しに手の甲につけてみると、
「なんともない?」
試しに炎を出してみようとすると、
「うわ!びっくりした。」
思ったよりも大きい炎が上がってしまった。
「やはり古代魔法に使う闇魔素が少なかったのが原因か。この魔鉱石は闇魔素を多量に含んでいるからそのおかげだろうな。」
「これ消耗品っぽいしいっぱい作っとくか。魔鉱石を10個程出してくれるか?」
「、、、まさかまた角を、」
そこから魔鉱石を小さくしたり、バエルの角を削ったりして魔力増幅装置を量産した。
そうしてるうちにその日は終わってしまった。
「それでは昇級試験をしますが、やはり二人でお願いできますかね?一応チームでの昇級なので。」
「わかりました。」
恐らくバエルが戦うと相手にならない気がするし、俺一人でやるか。
「それでは、始めますぞ!」
ギルドマスターは剣に緑色の何かを纏って向かってくる。
あれか、風魔法と言うやつか。
「ダークフレイム」
昨日バエルに教えてもらった、闇の炎を出す魔法。
「ぬ!?ふん!」
ギルドマスターが剣を振るうと、突風が起こり、炎が消された、と思ったが、黒い炎はギルドマスターに絡みついている。
「これは、、はぁぁっっ!」
ギルドマスターを中心に竜巻のようなものが起こり、炎は消されてしまった。
「はぁ、はぁ、やりますな、なら私も本気でいきましょう!」
その突如、ギルドマスターが目の前から消えた。
やばい、見失った。
「ソラ、後ろだ。」
後ろ?てか、俺攻撃防ぐ術なくね?
避ける?いや、俺のカス動体視力じゃ無理だ。仮に避けたとしても2撃目が来て終わりだ。
もうしょうがない、腕に魔力をこめれば何とかなるだろ!
キンッッ
咄嗟に魔力をこめた右腕で防ぐと、ギルドマスターの剣が折れた。
「はっはっはっ!これでは試験どころか、私の敗北ですな!それに、その腕の魔石、やはり。まぁ、とにかく合格です!」
なんか何もしてないような気もするが、まぁ合格ならいいか。
そこからギルドに向かい、受付に行った。
「サラ様、お疲れ様です。ゴールドランクのギルドカードになります。」
「ゴールドランク?シルバーランクでは?」
「いえ、ギルドマスターからゴールドランクに昇級させると伺いました。」
「おい!それはおかしいんじゃねぇのか?ギルドに来て2,3日そこらでゴールドランクたぁ、納得いかねぇぜ!」
こいつ、いつしかのだる絡みしてきたやつか。
バエルに返り討ちにあってた気がするが。
「ちゃんとギルドマスターに認めてもらった上でなっているんだが。」
「お前、ちゃんと先輩を敬えよ。同じゴールドランクだとしても俺の方が先輩だからな。」
「皆様!そろそろダンジョンの方で説明がございますので、移動をお願いします!」
「チッ、まぁいい、お前もダンジョンに行くんだよなぁ?ダンジョン内は何が起こってもおかしくないからな?楽しみだな。」
「皆様、本日のダンジョン攻略にお集まりいただいて、ありがとうございます。今回のダンジョンは、予想攻略難易度はB、高くはないですが、低くもないので油断しないでいきましょう。あと毎度言っていますが、中のアイテムは早い者勝ちです。争い事は基本なしでお願いします。そして、今回は勇者様数名が参加していただいているということで、張り切って行きましょう!」
そうしてギルドマスターの話は終わったが、勇者数名が参加しているだと?
「あ!エルちゃん!昨日ぶりだね!」
なるほど、こいつらか。
「これはどうも。」
「サラさんも!あと、敬語じゃなくていいよ!私よりも歳上だろうし、それに私も敬語使ってないしね。」
「わかった。」
「アカリたちは勇者だったのだな。」
「あれ、言ってなかったっけ?そうだよ!」
「あっちの人間も勇者なのか?同じ服を着ているが。」
バエルの指さす方向には、
「ああー、あれねー、あいつは王塚って言うんだけど、エルちゃんは関わらない方がいいと思うな。絡まれたらぜっっっったいめんどくさい事になるから。」
王塚か、確かにめんどくさい事になるかもな、ていうか、御堂もいるし、長瀬もいるし、この多数名もいるな。
俺はめんどくさい事にならないのを祈りながらダンジョンに入っていった。




