第1話
「やめろ!羽音!そっちへ行っちゃだめだ!止まれっ!!ダメだっっっ!!!」
麗らかな陽気が、皆の気持ちを高揚させる春。
人知れず、戦いが行われている場所が、そこにあった。
「こらっ!!ビー助!!それは罠だ!!この前も言っただろう!!甘い香りは大切だが、全体をよく見ないといけないと!!」
「ご、ごめんなさい。兄さん。」
「いや、わかってくれればいいんだ。ほら、よく見てごらん?このラッパ型の形、小さな黒い点々の模様……。頭に蓋。いくら良い香りでも、これに捕まると二度とは戻れない。身体を溶かされて……終わりだ……。」
ぶるぶるっとビー助は身震いした。
(あんな恐ろしい所に、今、僕は入ろうとしてたなんて……。兄さんが止めてくれなかったら、今頃、僕は……。)
「ああっ、羽音ーーーーーーー!!!!!」
パタン……
「!!!!!」
響き渡る、叫び声。
泣き崩れる音。
ビー助は、今しがた隣で起こった出来事を、すぐには理解出来なかった。
(そんな……。羽音が……。)
産まれた時からいつも一緒だった羽音。
人一倍、好奇心旺盛で、夢中になると、皆の忠告が耳に入らないことが度々あった。
羽音の悪戯っぽい笑顔が、脳裏によぎる。
ビー助は、涙を必死に堪えた。
(でも、でもっ!!こんなことって!!)
ビー助の兄が、そっと隣にやってきた。
「ビー助……。辛いだろうが、これが現実なんだ。俺達は、食料を採りに行く時、今まで習った全ての知識を使わなければいけない……。とても、とても、危険な……作業なんだ……。」
叫び声とすすり泣きが周りに充満する。
堪らず俯く、ビー助。
「うん……。わかったよ。バチ兄さん……。」




