21.ついにリアルでの居場所を特定しだしたロリコン実況者
「来てしまった……」
イワヒバちゃんが緊急ログアウトして3日。何を思ったか僕はイワヒバちゃんのいる病院を特定して来てしまった。
とはいえ、流石に3日間一切音沙汰無いのは気になる。よって仕方のないことだ。そういうことにしよう。
「そこの人、ちょっと待ちなさい」
意を決して入ろうとすると、後ろから白衣を着た女性に声をかけられた。
表情が薄くて眼鏡をかけているというだけで、知的でクールそうな人に見える。
いや、それよりなんで僕に話しかけてきたんだ?……もしや自分で思っていた以上に挙動不審だったのだろうか?だとするとまずい、すぐに誤解(?)を解かなければ!
「いやあのこれは違うんすよボクは決して怪しい者ではなくてですねぇ!?」
「……落ち着いてください。私は貴方の味方です、フクロウさん」
ふぅ……落ち着け僕、男だろ。
とりあえず落ち着いた男として、そしてエンターテイナーとして、突っ込まなければならないことがある。
「味方を主張する人はいきなりゲーム内のハンドルネームを呼んだりしないんですよ!」
「それが嫌なら、今後は病院のセキュリティを舐めないように。特にあの子周りは、貴方のようなことをすればすぐに個人が特定されます。後は少し調べて、ゲーム内とはいえあの子と面識があるようだったので、スルーして待ち構えていたのです」
「それはどうも、お気遣いありがとうございます……」
イワヒバちゃんがいる病院を特定する時に、ちょっとハッキング紛いのことはした。よく考えなくても犯罪なのだが、あの時はおかしかったので今の今まで気にも止めなかった。
大事にされなかったのは本当に有難い。
「まぁ良いです。ひばりに会いに来たのでしょう?案内しますよ」
「え、いいんですか?」
「本当なら今は面会謝絶中ですけど、部屋の外から見るだけであれば」
「充分です、ありがとうございます」
付いてきてください、と言いスタスタと歩いてしまったので僕も慌てて追いかける。
エレベーターから地下に入り、無駄に頑丈そうな扉を開くと、不気味な程に無機質な空間になっていく。カツ、カツ、と僕ら2人の足音以外の音が全て消えたかと錯覚するほどに何もない。
なんかホラーゲームでこういう場所あるよな……とか考えているとだんだん怖くなってきた。
カツ…と足音が鳴り止むと、白衣の女性はガラス越しに指を指す。
「さて、あれが娘です」
なにやら衝撃的な言葉が聞こえた気がしたが、それどころではなかった。
中の様子が見えるように大きめにガラスが張ってあり、それ以外は完全に密閉された部屋。その中にそれはいた。
最初、それをイワヒバちゃんだと認識することは出来なかった。
ベッドに寝かされ、なにやら色々な機械に繋がれ、恐らくなんとか生かされているのだろう。でも僕には、目の前のそれが生きている人間とは思えなかった。人間と言うには、余りにも細くか弱くなにより小さかった。
そう、まるで……
「まるで、死体をそのままベッドに置いているように見える、でしょうか?」
「……ええ、失礼ながら」
「安心してください。私も、このモニターで生命反応を確認するまでは、毎日安心できません」
壁に埋め込まれたモニターに表示されている意味までは分からないが、緑色で表示されているそれを見て、僕も少しホッとする。
「……あれでも、脳だけは普通の人間より活発に動いているんですよ。本来なら脳の動きも鈍って、少なくともまともに会話することはできないはずなのですが」
活発な子供のような言動のイワヒバちゃんだが、魔法を当てる精度や弾道の予測だったり、そこらの大人より頭のいい部分も見せていることを思い出す。
「さて、質問なのですが」
「は、はいっ?」
声色は変わってないのだが、なんというか怒っているように聞こえて、ついビクッとしてしまう。
「腕の筋繊維の損傷に内出血……一体、何をしたらゲームでそんな大怪我をするのですか?」
やっぱり怒ってた!?
まぁ落ち着け、別にあれは誰のせいでもない。息を吐き直して、イワヒバちゃんの母親に身体を向ける。
「まず、前提をお話します。
あの手のゲームはモンスターや人との戦闘を前提としています。ですがその反面、ほとんどのプレイヤーは戦えません。なので補助が必要になります」
「補助、ですか?」
「はい。GWOではアーツと呼ばれるシステムで、技名を叫ぶことで設定された技の通りの動きを誰でもできるものです」
この手のシステムの説明はもう慣れたものだ。スラスラと言葉が出てくる。
「VRというのは脳の電気信号を読み取ってアバターを動かしています。その電気信号を人工的に作り出して、強制的に身体を動かすのがアーツです」
「……それが、娘の怪我とどう関係があるのでしょう」
「娘さんは、その動きに無理やり逆らおうとしました。その結果があの大怪我です」
「そんなことが、できるもの……なのですか?」
表情が動かないわりに感情がわかりやすい人だ。その驚愕に対し、僕は苦笑して答える。
「まさか。僕を含め数人で検証しましたけど、そもそも逆らえるものではありませんでしたよ。ほんの少し抵抗できた人も、全身に激痛が走ってすぐにモーションが続行されましたし」
ふうっ……と、イワヒバ母がため息を零す。
「……あの子は、昔から気合いでなんだってなんとかしてきたんです。前に1度、手術のときに麻酔が効かなかった時があったのですが、本来なら耐えられない痛みを、何故か耐えられてしまって、奇跡的に手術が成功。
似たようなことが……もう数え切れないほどあって、ギリギリ生かされている状態です」
それはあまりにも痛ましい話だった。
麻酔なしでの手術の痛みなど、僕には想像すらできない。
「先程も言いましたが、本来ならもう死んでいなきゃおかしいんです。だからこそ、こんなところで死なせる訳にはいかない」
目の前の女性とイワヒバちゃん、どうにも重ならなかったがなるほど。冷酷そうな目の奥には、イワヒバちゃんと同じ色の炎が宿っていた。
赤い赤い、どんな困難をも越えようとする、信念の炎が。
「娘にはキツく叱っておきますが……言っただけでは聞かないでしょう。フクロウさん、しばらく娘をお願いします」
「はい!わかりました!」
こうして、しばらくイワヒバちゃんの保護者役に──
「良かったですね。これで娘をストーキングして偶然を装って話しかけなくてもよくなりますよ」
…………。
「いやあの……べ、別に……そんな、ねぇ?」
「下手なことしてな娘を泣かすような人ではないと信じていますよ。もしも……いや、言わなくてもわかりますよね」
「はい……もちろんです」
気まづい空気から逃げるように病院を去って気付く。
……あれ?でも気づいてて保護者役任せるのはもうそれは親公認……いや、余計な思考は消そう。
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