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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
71/162

67.【下巻/サイド・パンタシア】白雪姫ト暗イ森

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/幻想編(パンタシア)(1/7)】

 るああ。さあ、復讐劇(ベンデッタ)の幕が上がるよ――……


 美しく愚かなお姫様は、自らの運命(フェーテ)をその手で引き裂いてしまう。それは幻想的(パンタシア)と言えなくもない物語(ラコンテ)だ。むかーしむかし(アルタ・パサド・)、あるところに(アルタ・ルオーゴ)――……


 雪のように白くブラン・スース・ネージュ血のように赤い(ルータ・スース・サン)●●●者のお姫様(プリンツェスィン)がおりました――……




 ***********************************


 (とが)を数えて七日(シエテ)を巡り、手繰(たぐ)り数えて八日(ユイト)を暮れる。

 落ちる明か星(ルスフル)、小人の家は、七つ(シエテ)数えてひと巡り。



 さて、白雪姫(ブラネージュ)は森の奥へ奥へ歩いていると、やがて日も暮れ、薄暗い森はますます真っ暗に沈んでいきました。


 けれども姫は、ちっとも怖くはありませんでした。


 白雪姫は森に住むという小人(ドワーフ)お化け(ガイスト)の話なんて、ちっとも信じておりませんでしたし、もしそんなものが本当にいたとしても、白雪姫の顔を見ればあっちが逃げ出すか、さもなくば仲間と思うかのどちらかだろうと、鼻で笑っておりました。


 姫が心配しているのは、狼だの(リュコス)に出くわすことの方でした。


 森の動物達ならば、食べ物(・・・)の見た目に贅沢(ぜいたく)は言いますまい。そこで白雪姫は、よじ登れそうな木の上か、潜り込めそうな(うろ)で夜を明かそうと、探しながら歩いておりました。



 白雪姫は幸運でした。いいえ……果たしてそれは本当に、幸運だったのでしょうか? とうとう日が沈み、森が夜に沈む頃、姫はいつの間にやら別の“世界”へと迷い込んでいたのです。




 ***********************************


 さて、森を彷徨(さまよ)ううちに、白雪姫はお腹が空いてきました。けれども手籠の中にもう食べ物はありませんでしたし、姫は木苺のひとつも見つけられませんでした。



 白雪姫が困っていると、しばらくして、切り株に一人のお爺さん(アーヴォ)が座っているのに出会いました。お爺さんは白髪頭の小人(ミジェス)で、地面まで届いた長い髭(バルボ)をしておりました。小人のお爺さんは白雪姫に、

「どうしたんだい?」

(たず)ねました。そこで白雪姫は言いました。

「ああ、お爺さん。私ったら、なんて可哀そうな娘なのかしら!」


 「お城を追い出され、森に迷い込んで、お腹が空いているというのに、ひとかけのパンもないのだから」


 それを聞いたお爺さん、姫に三つの(はち)を差し出しました。(はち)(オウロ)(アルジェ)(コプレ)で出来ていて、金の(はち)には蜂蜜(ミオレ)、銀の(はち)には葡萄酒(ヴァン)、銅の(はち)山羊の乳(ラクト)で満たされておりました。お爺さんは、

「好きなものを、好きなだけ」

と言いました。

 そこで白雪姫は、金の(はち)から蜂蜜を食べ、銀の(はち)から葡萄酒を飲みました。それはこれまで食べたことがないほど美味しくて、どれだけ食べて飲んでも減りませんでした。姫は大いに食べて飲みましたが、銅の(はち)の山羊の乳には口をつけませんでした。



 そうして白雪姫がすっかりお腹いっぱいになって、親切な小人にお礼を言うと、お爺さんが笑って言うことには、

「気をつけてお生きなさい(お行きなさい)。それから、わしの兄弟(フラテーロ)に会ったら、よろしく言っておいておくれ」


 それで白雪姫はお爺さんに別れを告げて、また森の中を歩いていきました。




 ***********************************


 しばらく行くと、白雪姫は自分はいったいどこに行けばいいのだろう、と思いました。姫はすっかり道に迷っていたのです。



 白雪姫が困っていると、また、切り株に小人のお爺さんが座っているのに出会いました。お爺さんは、(はち)のお爺さんと頭のてっぺんから爪先までそっくりで、地面まで届いた長い髭(バルボ)をしておりました。お爺さんは、わしの兄さん(フラテル)に会いなさったね、と言って

「どこへ行くんだい?」

(たず)ねました。そこで白雪姫は言いました。

「ああ、お爺さん。私ったら、なんて可哀そうな娘なのかしら!」


 「お城を追い出され、森に迷い込んで、心細いというのに、どこへ行けばいいのかも判らないのだから」


 それを聞いたお爺さん、姫を別れ道に連れて行きました。右の道は(オウロ)で敷いてあり、左の道は煉瓦(ラッテル)で敷いてありました。それから金の道にはライオン(レーヴェ)が寝ており、煉瓦(れんが)の道には子羊(カルネロ)がおりました。お爺さんは、

「好きな道を、好きな方へ」

と言いました。

 そこで白雪姫は、石くれよりも黄金が、羊よりも獅子がお姫様には相応しいと考えて、別れ道を右に行くことに決めました。



 そうして白雪姫がすっかり元気になって、親切な小人にお礼を言うと、お爺さんが笑って言うことには、

「気をつけてお生きなさい(お行きなさい)。それから、わしの兄弟(フラテーロ)に会ったら、よろしく言っておいておくれ」


 それで白雪姫はお爺さんに別れを告げて、金とライオンの道を歩いていきました。レーヴェは尾を立てて、姫の案内を務めました。




 ***********************************


 またしばらく行くと、白雪姫は馬を捨てて来たことを悔やみました。姫は足が疲れて歩けなくなっていたのです。



 白雪姫が困っていると、またも、切り株に小人のお爺さんが座っているのに出会いました。お爺さんは、二人のお爺さんと頭のてっぺんから爪先までそっくりで、やっぱり地面まで届いた長い髭(バルボ)をしておりました。お爺さんは、わしの兄さん(フラテル)達に会いなさったね、と言って

「どうして歩いているんだい?」

(たず)ねました。そこで白雪姫は言いました。

「ああ、お爺さん。私ったら、なんて可哀そうな娘なのかしら!」


 「お城を追い出され、森に迷い込んで、足が棒のようだというのに、暗い森を行かなくてはならないのだから」


 それを聞いたお爺さん、(カヴァル)ロバ(ドンキ)()いてきました。馬は金の(くら)をつけた見事な白馬(ブラン)で、木の(くら)をつけた気の良さそうなロバは灰色(シネレオ)をしておりました。白馬は立派な銀の馬車(アルジェ・カレーシュ)き、ロバはみすぼらしい荷車(ワーゲン)いていました。お爺さんは、

「好きな車で、望むように」

と言いました。

 そこで白雪姫は、お姫様とあろう者がこんな立派な馬を捨てておいて、ロバの荷車なんかに潜り込んだりしたら、私はたいした間抜け(トプシー)ってことになるわ、と考えて、白馬の馬車に乗りました。



 そうして白雪姫は乗り物に乗って、親切な小人にお礼を言うと、お爺さんが笑って姫の手にパン切れ(パーネ)を押しつけて言うことには、

「わしはお前さんが気に入ったから、ひとつ良いことを教えよう。馬車に乗っていくと、一軒の家に着くだろう。この家の前には怖ろしい狼(ヴォルダート)がいるが、そのパン切れを口に放り込めば、たちまち大人しくなる」


 「狼を大人しくさせたら、お前さんは家の主(ガバディン)が帰って来るのを待っていればいい。主達がお前を気に入れば、きっと良くしてくれるだろうよ」


 「さあ、気をつけてお生きなさい(お行きなさい)!」


 それで白雪姫はお爺さんに別れを告げようとしましたが、挨拶が終わらないうちに小人が馬の尻をひっぱたいたので、馬車は風のように白雪姫を運び去りました。


 切り株の上には、もう小人(ミジェス)の姿はありませんでした。




 ***********************************


 やがて、馬車(カレーシュ)は一軒の家の前に停まりました。


 白雪姫が馬車を降りると、小人のお爺さんが言った通り怖ろしい狼(ヴォルダート)がおりましたが、パン切れを口に放り込んでやると(カーネ)のように大人しくなるのも、お爺さんの言った通りでした。そこで白雪姫は大きな石を拾ってくると、狼を打ち殺し、家の中に入りました。


 さて、家の中に入った白雪姫でしたが、主達はどうやら留守で、そこで姫は主人たちの帰りを待つことにしました。

 そうしていると、白雪姫はお腹が空いたので、食堂に行きました。食堂には二つの食卓がありました。


 ひとつは(オウロ)の食卓で、絹のクロスが掛けられ、(アルジェ)のお皿が並び、贅沢な御馳走が湯気を立てていました。テーブルには七人分(シエテ)の食事が用意されておりました。もうひとつは木のテーブルで、粗末な麻布が掛けられ、木のお皿が並び、固い黒パンと山羊の乳(ラクト)がありました。こちらも七人分(シエテ)ありました。


 白雪姫は誰が見たって、お姫様が食べるのは銀の皿からに決まっていると考えて、金の食卓につきました。それで白雪姫は六つ(セース)のお皿からひと口ずつ食べ、七人目(シエテ)の食事からは葡萄酒(ヴァン)をひと口飲んで、杯に殺した騎士(カヴァリオロ)の指輪を入れておきました。



 白雪姫はお腹が一杯になると、今度は少し休もうと、寝所を探しました。寝所には具合の違う二つのベッドが並んでいました。


 ひとつは豪華で、ふかふかの絹の夜具が掛けてありました。これが七人分(シエテ)、きちんとしつらえられておりました。もうひとつは固い粗末なベッドで、夜具は干し草でした。これも七つ(シエテ)並んでおりました。


 白雪姫は馬や牛でもあるまいに、干し草に潜り込んで寝たりしたら、私はいい笑い者だわ、と絹の夜具に包まって眠ってしまいました。




次のお話は【現実編(レアレテ)】の第2話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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