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コトレットさんの不思議なお仕事~こちら異世界管理局~  作者: 胡散臭いゴゴ
まっくろくらいの白雪姫・二つの下巻
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67.【下巻/サイド・レアレテ】白雪姫ト暗イ森

挿絵(By みてみん)

【まっくろくらいの白雪姫・下巻/現実編(レアレテ)(1/7)】

 るああ。さあ、復讐劇(ベンデッタ)の幕が上がるよ――……


 勇ましく賢いお姫様は、自らの運命(フェーテ)をその手で切り開く。それはそれなりに、現実的な物語(レアレテ・ラコンテ)だ。むかーしむかし(アルタ・パサド・)、あるところに(アルタ・ルオーゴ)――……


 雪のように白く《ブラン・スース・ネージュ》、血のように赤い(ルータ・スース・サン)、●●●者のお姫様(プリンツェスィン)がおりました――……




 ***********************************


 森(シルワ)の住み人、夜(ミニュイ)の住み人。月(セレイネ)の道を歩いてくるよ。

 坊や(チッコ)はお家へお帰りなさい。



 さて、白雪姫(ブラネージュ)は森の奥へ奥へ歩いていると、やがて日も暮れ、薄暗い森はますます真っ暗に沈んでいきました。


 けれども姫は、ちっとも怖くはありませんでした。


 白雪姫は森に住むという小人(ドワーフ)やお化け(ガイスト)の話なんて、ちっとも信じておりませんでしたし、もしそんなものが本当にいたとしても、白雪姫の顔を見ればあっちが逃げ出すか、さもなくば仲間と思うかのどちらかだろうと、鼻で笑っておりました。


 姫が心配しているのは、狼だの(リュコス)に出くわすことの方でした。


 森の動物達ならば、食べ物(・・・)の見た目に贅沢(ぜいたく)は言いますまい。そこで白雪姫は、よじ登れそうな木の上か、潜り込めそうな洞(うろ)で夜を明かそうと、探しながら歩いておりました。



 白雪姫は幸運でした。今までの不幸の分、幸運を取り分けておいたかのようでした。とうとう日が沈み、森が夜に沈む頃、姫は行く手に小さな焚き火(トルチャ)の明かりを見つけたのです。




 ***********************************


 ですが賢いお姫様は、喜んで一目散に駈け出したりはしませんでした。


 なぜって、こんな森の奥で焚(た)き火を囲んでいるのは、ならず者(ピカロ)か人殺し(メルテーチ)か、いずれ世を憚(はばか)る身に決まっています。そういう連中ときたら、人が指に嵌(は)めている指輪を盗むのに、手首ごと斧で切り落とすような輩(やから)なのです。


 ですから白雪姫は、相手に見つからないよう、用心して近づくことにしました。


 少し近づくと、焚き火(トルチャ)の周りに人がいるのが見えました。もう少し近づくと、どうやら人影が七つ(シエテ)数えられました。白雪姫はとても用心していたので、焚(た)き火の七人に見つからずに、向こうの顔が判るほど近づくことができました。白雪姫は焚(た)き火の七人の顔を見ると、これなら姿を見せても大丈夫だろうと思いました。


 焚き火の七人(トルチャ・シエテ)は、誰も彼も、白雪姫と同じ●●●者(カジモド)だったのです。



 ブラネージュは考えました。


 弱い者は、弱い者と身を寄せ合う。だから、自分達と“異なる者”には心を閉ざすけれど、自分達と“同じ者”には心を許す。もし町から来た者が、連中の姿を見れば命はないが、町を追われた者なら、彼らは焚(た)き火の前に座らせるだろう。


 もし訪れた者(トランジッテ)が、自分達と同じ●●●者(カジモド)ならば……

 そこで白雪姫は、この●●●者(カジモド)達の前に、歩み出ることに決めました。



 枯れ枝の踏み折られる音に、焚(た)き火の七人は一斉に振り向き、ばね仕掛けのように立ち上がりました。その恐ろしい面相は、見た者に悲鳴を上げさせるのに少しも不足はありませんでしたが、白雪姫には鏡を見ているのと変わりはありません。

 七人(シエテ)は突然の来客(トランジッテ)が自分達と同じ●●●者(カジモド)の娘と見ると、少し肩の力を抜きましたが、まだ用心した目で白雪姫を睨(にら)んでおりました。


 そこで白雪姫は心の内の不安をおくびにも出さず、刺すような視線を浴びながら、舞台役者のように堂々と焚(た)き火の前へ歩み出ますと、七人をぐるり見渡すと、スカートの端をついと持ち上げてお辞儀をしました。

「仮面舞踏会(マスカレイド)は、こちらで宜しかったのかしら?」


 ●●●者(カジモド)達はこれを聞いて呆気に取られましたが、すぐに錆(さ)びた鋸(のこぎり)を引くような笑いが弾けました。笑いが治まると、一番年嵩(としかさ)の、この一座の団長らしき男が、膝を叩きながら言いました。

「いかにも、いかにも。お嬢さん(ダミナーレ)、わしらの仮装(マスク)もたいしたもんだが、あんたもどうして見事なもんだ!」

こうして賢いお姫様は、七人の●●●者(カジモド)の心を捉え、暖かな焚(た)き火の前に居場所を占めることができました。




 ***********************************


 白雪姫が火の前に腰を落ち着けると、年嵩(としかさ)の男が隣に座り、温かい食べ物を差し出しました。この男ときたら、白雪姫にも劣らない物凄い●●●(カジモド)で、背中は●●●で曲がっている上、ひとつ目(エン・オリオ)で左目のあるべきところは肉で埋まっておりました。

「まずはお食べ。それで人心地着いたら、無理にとは言わんが、良ければこんな夜更けにこんな森の奥、あんたみたいな(・・・・・・・)娘さんがどうしたのか、この年寄りに話してはくれんかね?」


 “あんたみたいな(・・・・・・・)”、がどういう意味かはさておき、白雪姫はこの人の良さそうな男に、できるだけ哀(あわ)れっぽく訴えました。

「あなたがたも御存じでしょうが、町の人達は●●●者(カジモド)に優しくはありません。私も日々の辛さに堪(た)えかねて、森へ逃げてはみたものの、すっかり日も暮れ、心細く途方に暮れていたところ明かりが見え、藁(わら)にも縋(すが)る思いで参ったのです」

白雪姫が涙のひとつも(ラクリマを)浮かべると、七人(シエテ)はすっかり話を信じて、同情でいっぱいの顔をしたので、姫は笑い出すのを堪(こら)えねばなりませんでした。



 ひとつ目の男(エン・オリオ)は、長く伸ばした顎髭(バルボ)を摩(さす)り摩(さす)りしながら言いました。

「それは辛かったじゃろうな。じゃが、ダミナーレ、もうちっとも心配はいらないよ。ここにいる者達は、誰も同じ苦しみを知っておるでな。今夜はここで眠るがいいし、お前さんさえよければ、ずっとここにいてもいいのじゃよ」

ひとつ目男が仲間達を見やると、誰も彼も口々に、白雪姫にここで暮らすよう勧めました。


 仲間の賛同を得て喜び、ひとつ目の男は姫の肩を叩きました。

「ここの連中は、町で見世物(スペッタ)やら物乞い(エンベッタ)やらになっとったのが、一人、二人と類が友を呼び、今ではそれぞれが仕事を分担し(できることをやり)ながら、一緒に暮らしておるんじゃな」


 「憚(はばか)りながら、わしはちいとばかり薬草学(まじない)を心得ておってな。森に生えておるものなら、たいてい役に立つようにできる。だもんで、ここの連中は先生(サヴァン)などと呼んでくれとるが、本当の名前も忘れたよって、お嬢さんもそう呼んでおくれね」

う言って先生(サヴァン)が足元の草をちぎって、焚(た)き火に放り込むと、嗅(か)いだこともない不思議な、けれども素晴らしい香り(ペルフメ)が辺りに漂いました。




 ***********************************


 さて、お次は俺だとばかり罷(まか)り出ましたる男――この男は顔が炙(あぶ)った蝋燭(ろうそく)のようで、鼻がなく、手と足にぼろ布が巻いてありました。

「よう。俺はここじゃあ“鼻欠け”って呼ばれてる。ご覧の通り、梅毒(ばいどく)さ。だから嬢ちゃん(チッカ)、この通りの色男だが、間違っても俺と寝よう(・・・)なんて考えちゃいけない。俺ァ体の先っぽから、どんどん蝋燭(ろうそく)みたいに溶けてって――」


 「終(しま)いにゃ、こいつみてえにちっちゃくなっちまうのさ」



 そう言って鼻欠けが肘で突いたのは、背丈が子ども(ニント)くらいしかない小人でした。男は子ども(ニント)の体に大人(アドート)の頭が乗っていて、目のぎょろりとした鼠みたいな顔で、笑い声もやっぱり鼠に似ているのでした。

「きっきっ、そうさ、今に俺様よりちっちゃくなりやがれ、この間抜け! やあやあ、お嬢さん。俺は小っちゃな(リトル・)ジョンだ。体は小さい(こんななりだ)けど、腕っぷしには自信があってね。鼻欠けと太っちょの(ビッグ・)ジョンと一緒に、鉱山(エルミオ)掘りをやってんだ。俺は小せえから、誰より深く坑道に潜ってけんだよ」


 「そうそう、ビッグ・ジョンってなあ、そこのでっかい奴さ」



 今度の●●●者(カジモド)は、白雪姫の三人分、リトル・ジョンの五人分はあろうかという、でぶの大男(ヒガンテ)でした。ビッグ・ジョンはまるでまん丸の肉団子のようで、だぶだぶの顔を真っ赤にして、姫に向かって頻(しき)りに唾(つば)を飛ばしました。

「お、お、おれの、な、名前、じょじょお――……」


 「ビッグ・ジョンはひどい吃音(●●り)なんだよ」


 鼻欠けが口を挟みます。

「だから、あんまり口を利きたがらないんだけど、いい奴だし、歌が上手いんだ。不思議なもんで、歌う時は何でか●●りゃしねえ。すらすら歌うんだなあ」

「はあーい(Hi)、(-)ほおおう(HO)!」

ビッグ・ジョンが出し抜けに大声を張り上げ、鼻欠けとリトル・ジョンがにやりと顔を見合わせて、木切れを叩き、酒瓶を鳴らし、足踏みをして調子を取りました。


 掘れよ、掘れよ、俺達の鉱山(エルミオ)。掘れよ、掘れよ、朝から晩まで。

 百万のルビー(ルブラ)、千万のダイアモンド(デアマン)。

 いつになったら出てくるか、そいつは俺達にも判らねえ。

 本当に埋まっているのやら、運を天に任せて掘り続けるのさ!

 掘れよ、掘れよ、俺達の鉱山(エルミオ)。はああーい(Hi)、(-)ほおーおう(Ho)!


 ●●●者(カジモド)達の歌を聞き、ビッグ・ジョンが素晴らしい声をしていると知り、白雪姫は哀れに思いました。いっそみっともない姿に相応しく、ひき蛙のような声なら良かったのに。あの見事な歌声は、体の不出来を引き立てて、黙っているより酷く見える。



 若い連中が手拍子足拍子で歌うのに、合わせるには年寄りで、父親(ペーレ)のようにひとつの目を細める先生は、更なる仲間を姫に引き合わせます。


 この次の仲間と言いますのが、先の三人には片方の眉さえ上げなかった白雪姫でも、思わずあっと叫びそうになるような、恐ろしい●●●者(カジモド)であったのです……




次のお話は【幻想編(パンタシア)】の第1話。

物語は【現実編(レアレテ)】と【幻想編(パンタシア)】を交互に繰り返します。


挿絵(By みてみん)

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