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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
因果について

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50/50

第50話 ステラの力

黒色試験を受けると決めた、その夜。

 

ようやく一人になって、崩れかけた外城壁の瓦礫に背を預け、暗い夜空を見上げていると——足元に、黒猫がするりと擦り寄ってきた。

 

「ステラ」

 

ガーランドを失った日から、ステラは姿を消していた。

復興に追われるうちに、ひと月が過ぎていた。

西ケレ遺跡で何が起きたのか、みんなにも説明できていない。

リツ自身、何がなんだか分かっていないままだった。

 

声をかけると、黒猫は人間の姿になった。

 

「ステラ……一体、何者なんだ?」

 

ステラはため息をついたが、覚悟を決めてきたような表情で、こちらに向き合った。

 

「もう……戻せないところまで来たからね。ちゃんと話そうか」

 

重苦しい沈黙の後、ステラはゆっくりと口を開いた。

 

「考えてみて、リツ。

ナビゲーターというのは本来、ゲームのシステムにしか存在しない、ただの記号でしょう。

プレイヤーでもなければ、操作されるキャラクターでもない。

生身の人間が生きるこの現実に、そんなものが当たり前に存在しているはずがない。

私という存在が、この世界にいること自体が、そもそも不自然なんだよ」

 

ステラは淡々と、だが決定的な事実を突きつけてくる。

 

「私は、ナビゲーションキャラクターのステラじゃない。ステラの真似事をしていただけ。

私が何者なのか——それは、まだ言えない。

今それを話しても、あなたを混乱させるだけだから」

 

リツが問い返すより先に、ステラは続けた。

 

「今はただ、これだけ知っておいて」

 

そこで、ステラは一度、言葉を切った。

 

「リツ。

自分がゲームの知識を使って、一度も死なずに、ここまで効率よく進んできた。

そう思っているでしょう?」

 

ステラの言葉が、鋭い刃のように、胸に突き刺さった。

 

「最初の魔窟で刃コウモリに襲われた時も、左側に飛び出して首を撥ねられていた。

魔女の隠れ家の奥で、一歩踏み出して葬断卿ヴァネヌスに気づいたときには鎌に引き裂かれていた。

ミノタウロスの迷宮で、私を助けたあと、一体目のミノタウロスの突進を避けきれずに壁に激突し、身動きが取れなくなった後に、二体目に双剣で切り落とされた。

 

——あなたは、現実の戦闘の重さを御しきれずに、何度も、死んでいたんだよ」

 

頭の中が、真っ白になった。

 

「不快なノイズのような音が、聞こえたことがあったでしょ?

あれは、あなたが死ぬたびに、私の力で、時間を強引に巻き戻して、運命を書き換えていた音」

 

刃コウモリの闇。魔女の家の地下。ミノタウロスの迷宮。

どれも覚えている。鮮明に覚えている。

どれも、あのノイズ音が鳴っていた。

 

だが、どれも「危なかった」という記憶だ。

首を撥ねられた記憶も、鎌に引き裂かれた記憶も、切り落とされた記憶も、どこにもない。

 

なのに、目の前の少女は、それを見ている。

 

自分が三回死ぬところを、この子は最後まで見ていて、そのたびに巻き戻してきた。

そして、こちらは何ひとつ知らないまま、次の日には飯を食って、笑っていた。

 

知識があるから、自分は上手く立ち回れているのだと、そう慢心していた。

 

違う。

何度も無様に殺され、そのたびに、目の前の少女に助けられ、やり直しボタンを、無理やり押させていただけだった。

 

「わずかな干渉なら、ああして助けることもできた。

でも、西ケレ遺跡の件で、私は干渉しすぎた。

そのせいで、もう、時を戻す力も、ほとんど効かなくなってしまった」

 

ステラは、まっすぐにリツを見た。

 

「だから、何度も確認したの。

もう、戻せないところまでシナリオは変わってしまった。

これから先は——死んでも、やり直せない。

その中で、クリアをしてもらわないといけない。

……リツ、あなたは本当に、自分の足で戦える?」

 

知らないうちに支えられていたという無力感と、それでも西ケレで芽生えた、自分の足でこの世界に道を作っていくのだという意志。

その二つが、リツの中で、静かにせめぎ合った。

 

やり直しがきかないというのは、死ぬということだ。

 

次に刃コウモリの一匹に首を落とされたら、そこで終わる。

スルギも、ルアも、レイアも、続きを生きていくのに、自分だけがいなくなる。

 

——だったら、ここで降りるか?

 

降りたところで、どこへ行くんだろうか。

元の世界に戻る道は、この世界をクリアした先にしかない。

 

それに。

 

ゼーレゼは、何も選んでいなかった。

サーザリーで焼かれた人々も、この街で死んだ人々も、同じだ。

ガーランドだって、あの死に方は選んでいない。

選ぶ機会すら与えられずに終わった人間を、リツはもう何人も見ている。

 

自分には、まだ選ぶことができる。

 

深く息を吸い込み、震える拳を、強く握り締める。

 

「……やるしかないだろ。俺が狂わせた世界だ。最後まで、責任を持つつもりでやるよ」

 

ステラは、何も言わなかった。

ただ、ほんの少しだけ安心したように、小さく頷いた。

 

ピコン、とシステム音が、頭上に響き渡った。

 

◆――――――――――――◆

 

【 メインストーリー 】

 

『黒色試験』 開始

 

◆――――――――――――◆

 

◆――――――――――――◆

 

メインストーリー達成率:16%

 

◆――――――――――――◆


第1部、完結です。

ここまで読んでくださったこと、心からありがとうございます。


この物語は、達成率の通りで、まだ折り返しにも届いていません。

リツの旅は、第2部へ続きます。

よろしければ、ブックマークと、下の☆☆☆☆☆を★★★★★、そして感想で応援いただけると、第2部を書き進める何よりの力になります(^^)


第2部は現在鋭意準備中ですので、ぜひぜひブックマークしてお待ちいただけたら嬉しい〜〜〜です。

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