蛇蝎。
第一階層第二階層は割と簡単に抜け、第三階層に達したところで他の冒険者の気配がした。
うん。あんまり見つかりたくはないかなぁとか思いつつ、こっそり接近するあたし。
スキル、「シノビ」を発動し、足音を消して気配を消して。
「このあたりでいいか」
「ああ。頃合いだな」
そんな声が聞こえた。
なんだか不穏な気配?
前方に見える冒険者の男たちは五人、ん? 六人?
ポーターなのかな? 一人だけ大きなリュックを背負った華奢な少年がいる。
「カイ、その荷物俺が持ってやろう」
「リュウさん、ありがとうございます。でもオイラこれくらいしかまだ役に立てないし」
「いや、お前は十分、俺たちの役に立ってくれている。しかしここから先は危険だ。お前は足も速い。ここから逃げ帰るといい」
「え? そんな」
「このダンジョンは甘くないぞ。お前を庇って戦うのは俺たちにとってもデメリットが大きい。さあ、行け。その前の左の道を行けば元の階層に戻れるだろう。さあ」
そう言ってそのリーダーらしき男は少年の荷物を取り上げるとお尻をポンと叩く。
「すみません、オイラ」
「いいからいけ。左の道をまっすぐいくんだぞ!」
「はい、わかりました」
少年はそのまま前方の道に向かって走り出す。
え?
だって、あっちって。
あうあう。
前方の広場ではどうやらゴブリンらしき魔物がたむろしているとあたしの感覚が伝えている。
って、こいつらまさか。
「囮はうまくいきそうだな」
「ええ、兄貴。その間におれらは苦もなく先に進めそうですぜ」
「はは。上手かったろ? 俺の演技。すっかり騙されてくれて。ああカイよ。お前はやっぱり十分すぎるほど役に立ってくれたよ。背中にたっぷり魔物寄せの香をすりつぶしてふりかけておいたからな。周囲の魔物を集めて引き寄せてくれるだろうさ。精々遠くまで逃げてくれよ期待してるぜ」
「おまけに奴が死んでも怪我をしても、保険金はばっちり降りますしね」
「そういうことだ。じゃぁせっかくカイが作ってくれた隙だ。今のうちにいくぞ」
男たちはそう言うと、カイが走って行ったのとは違う右の道に進んでいった。
って、あいつらあの時の、蛇蝎なんとかだっけ?
もう。
ほんとやんなっちゃう。
このダンジョンはこの下の階層に行くほど危険になるはず。
Cランク程度で最下層まで踏破できるとは思えないけれど。
あんな奴ら、どうなったって知らない。けど。
ああ、あの少年だけは助けないと寝覚めが悪いよ。
あたしはそのまま速度を上げ左の道を進んで。
ゾワゾワと多くの魔物の気配がするそちらを目指し、急いだ。




