37話
「う、わぁ!」
「な、なんだ、これ?!魔力なのか?!っ、くそ!」
後ろから狼狽える声が聞こえたが確認することは出来ない。
何故なら私のあまりに強大すぎる魔力が、本来はあり得ないが可視化して、私を中心として竜巻のように渦巻いているからである。
私から見えないようにおそらく向こうからも見えていない。
だが、あれだけ元気なら大丈夫だろうと私は前に向き直る。
「『我が月の魔力を持って、邪なる者との扉を閉じよ』」
その瞬間、私から銀色の光がほとばしり部屋全体が白の世界へと変わった。
気がつくと私の髪も白金から銀色に戻っている。
光が収まると私を中心とした魔力の竜巻は消えていないが、この部屋の嫌な空気はまるで元から無かったかのように消えていた。
さぁ……残す段階は後一つ。ようやく貴方を助けられる。話したいことは沢山あるけれど私が貴方にかける言葉は決まっているわ………
覚悟を決め、彼が自分でかけたであろういくつもの魔法を次々と解いていく。
全てを解き終わると彼を包んでいた水晶に亀裂が入りパリンッ、と大きな音を立てて割れた。
支えるものがなくなってそのまま前へと倒れる彼を私は、即座に抱き止め風の魔法を使い床へと寝かせた。
彼にかけられていた魔法のおかげで、見た目はそのままだし、怪我もしていない。
ただ、あと少しで死んでしまいそうなほど彼の膨大な魔力はなくなりかけていた。
「『魔力完全回復』」
私の言葉と同時に彼の魔力が一気に元の量に戻ると同時に私の魔力の竜巻も霧散した。
これでもう彼が死ぬような事はないだろうと安心したときだった。
「よかった!ティーナ、無事………」
「………ルティ……?」
不意に私のもう一つの愛称を呼ばれて驚いた。私のことをルティ、と呼ぶのは彼しかいないのだ。
いくら魔力を完全に回復させたからといって、こんなにも早く目覚めるなんて………
私の目と懐かしい緑金の瞳が交差する。
「私は……夢を見ているのか………あの時……私のせいで死んでしまった君が、またこうして会いに来てくれるなんて………なんて、都合のいい………」
彼は自身を嘲笑うように悲しく笑い、力なく私に手を向ける。
無意識に涙が溢れてしまう。
夢だとは思って欲しくなくて、その力無い腕を掴み、自らの頬に当てる。
「っ、夢なんかじゃないわ。だって……私はちゃんとここにいるんだから………私がいなくなってからも皆んなを守ってくれてありがとう……」
あと一つ、貴方にこれだけを伝えたかった。あの日、貴方を残していってしまった私に言えることはこれだけだ。
「ただいま…ノア」
「っ、ああ……ここで目を閉じたら君がいなくなってしまう気がするよ………」
「大丈夫。これからはずっと一緒よ。歌だっていくらでも聞かせてあげる。だから……今は休んで………」
私は彼に眠りの魔法をかけると同時に、彼の額にキスをする。
どうか、幸せな夢を見れますようにと願いを込めて………。
「……ティー……ナ?」
その声に恐る恐る振り返ると少し不安げな表情をしている三人がいた。
「皆んな……えっと、これは………」
私は今のを見られていたということを今更思い出して、少し顔が熱くなる。
「ティーナ、もう終わったの?!大丈夫だった?!」
「え、ええと、はい。もう彼に関しては大丈夫です。それ以外に関してはまだまだですけど………」
そう。彼は助かったが邪なる者、邪神の封印は期間を遅らせただけでそのうちまたやってくる。完全に消滅させるためには私だけの力では到底無理なことなのだ。
「そうか……なら良かった。………聞きたいことは多々あるが先ずは帰るぞ。ティーナも髪を染め直せ」
「は、はい!」
「そうね」
「……フレイン?どうかしたんですか?」
いつもとは違う元気がなくボッーとした様子のフレインが心配になり、声をかけた。
「え……あっ、ううん。なんでもないよ」
「!そうですか……なら、いいんですけど………」
「ティーナ。こいつも一緒に宿に連れ帰っていいんだよな?」
「はい」
「それにしても……中の人がこんなイケメンだったなんて………」
「んじゃ、さっさと帰るぞ。こいつは俺が背負っていくから問題ない」
そう言って、彼を持ち上げようとしたディルを私は慌てて止める。
「大丈夫です!ノ……彼は私が連れて行きますから!」
「いやいや、ティーナにはかなりきついだろってな、なんだこれ?!」
ディルが叫ぶと同時に彼の体が光り、あっという間にその姿をとても大きな黒竜の姿に変えた。
ノアにだけ口調が変わるティーナ……いいですね!




