38話
私は咄嗟に身体を竜の姿に変えた彼の身体を魔法で小さくした。
あと少しでも遅かったら、大きさ的にこの遺跡が壊れていただろう。
「なっ、なんだったんだ?!」
「えっと……ご無事でなによりです。これに関しても後で彼が起きてから説明しますから。そんなに強い魔法でもないので宿に着く頃には彼も起きるかと」
「そ、そうかって……おい!ティーナの抱いてるそれって………」
「や、やけにリアルなぬいぐるみって……そんな訳ないわよね………」
みんなの視線の先は全て私の腕の中で眠っている人間の赤ん坊くらいの大きさになったノアに向かっていた。
「ということで……彼に関しては私が連れて行きますから。もし彼が途中で目覚めた時に見ず知らずの誰かだと、反射的にスパッといかれるかもしれませんし」
「こっわ………」
私が首の前で親指でスパッと切る動作をすると、三人が身を震わせた。
小さな姿になった彼をローブの下に隠すように抱く。
「じゃあ……そろそろ行きましょうか。話さないといけないこともあるので………」
「そう…だな」
「ええ……」
私はその時ふと元気がなさそうなフレインに気づいた。
「フレイン?どうしたの?」
私の言葉にハッとした様子のフレインだったが、すぐになんでもないと言って帰りの道を先導するように帰った。
***
「全く、今日は驚く事がありすぎて疲れたぜ………今でも夢なんじゃねーかって思うくらいには」
「あはは………」
ディルの言ったことに私はもう、乾いた笑みしか返せない。
私にとっても確かに大変な一日だったけれど、他の三人はもっと大変だったのだ。申し訳ない………
「それで……そこの彼はまだ起きないの?」
アルカナが向けた視線の先には、私が魔法を解いて人間の姿になった彼が眠っている。
首には私がつけているものと同じ形だが、私と同じ瞳の石がついていて頬が緩む。
「いえ、多分もうそろそろ………」
と、ちょうどその時彼の瞼が開き、そこから緑金の光がのぞいた。
「おはよう。ノア。よく眠れた?って、わっ!」
ノアはその瞳に私の姿を映すと、いきなりそばにいた私を抱きしめた。
愛しい人の大きな腕に包まれ、なんだか安心してしまう。
「本当に……夢じゃなかったのか………」
消えいりそうな声で呟いた彼に私はそれを、あり得ないというように軽く笑い飛ばす。
「ふふっ。そんな訳ないでしょう?私ノアに言ったわよね?私はここにいるって」
そんな私をみて彼らもつられて笑う。
「そうだね……ルティ。ところでずっと気になっていたんだけれど彼らは君の仲間かい?」
そう言って私を離したノアはこの部屋にいる三人に目を向けた。因みにルークはこの宿のオーナーに少しばかりみててもらっている。
「えぇ。実は私つい昨日まで記憶を失っていて、目覚めた二年前から一緒に旅をしている仲間なの。それで、彼らも協力してくれるみたいだから私のことも含めて話そうと思っているの」
「なるほど……ルティがそう思うなら私も構わないよ」
「えーと、聞きたいことは山ほどあるんだけど………まず最初にノアさん?が言っているルティというのがティーナの本当の名前なの?」
確かにアルカナがいうように仲間の名前くらいきちんと知っておくべきなのだろう。
「えっと、ティーナもルティも私の愛称ですね。起きた時精霊達からティーナと呼ばれていたのでそう名乗っていただけで本当の名前はルティファーナです。長いので今まで通りティーナで構いません」
「分かったわ、ティーナ」
うーん、それにしてもどこから話せばいいのだろうか。やっぱりわかりやすいのはあの話をすることかな?
私はここではいいか、と髪を白金に変えていた魔法を解いた。
「えっとまず、皆さん私のこの色合いに心当たりとかありませんか?」
魔法を解いた私の今の姿は、光り輝く銀髪にアメジスト色の瞳。アメジスト色の瞳はとても珍しいが、人間に銀髪など存在しない。
「!もしかして……『救国の竜と月』の物語の女神様のこと?」




