28話
カインとマークは同時に左右へと飛び出し、土の壁で前へ進めないファイアボアの首に向けて、剣を下ろした。
「「うおおぉぉぉおおお!」」
「えっ?」
「はあ?!」
だが、その刃はファイアボアの首に小さなかすり傷をつける程度だった。
……やった。完全にやってしまった。私のせいだ……。
恐らく先程、私が魔法でファイアボアの首を落としたから二人ともそうしようと思ったんだろう。
私の魔法なら首を簡単に落とせたが、ファイアボアは首回りが発達していてとても硬い。
私はただ首の方が後で面倒にならないため、そうしただけなのだがその結果、彼らは勘違いしてしまった。
「カインにマーク!ファイアボアは首回りが発達していてとても硬いんです!すみません!」
「えぇええ?!そんな首を軽く魔法で落としたたんですかぁ?!」
カインとマークは一度戻り体制を整える。
その間にもシュゼラルが水魔法で、レインが素早い動きでファイアボアを攻撃する。
そして、この中で唯一弓を使うリゼは木の上から機会を窺っている。だが、リゼの弓では硬いファイアボアに傷をつけることは出来ないだろう。
「『風の加護』!」
また適当な詠唱をして今度は、リゼの弓と矢を強化した。
「リゼ!貴方の弓矢を強化しました!今なら硬いファイアボアにも簡単に刺さる筈です!」
「そ、そんなことまでできるんですか?!ありがとうございます!」
リゼは深呼吸をして、ファイアボアに向けて弓を構える。
「えいっ!」
リゼの放った矢は見事にファイアボアの頭に当たり、そして………頭を貫通した。
「ええぇぇぇぇぇええええ!?!?」
そうリゼが叫んだ瞬間、ファイアボアは気を失ったように地面に倒れた。
「嘘だろ………」
「な、なんて素晴らしい強化魔法だ………」
「わ、わ私、失敗してファイアボアの特に硬い頭に矢が当たっちゃったんだけど………」
なんか、結局私が倒したみたいになってしまった。でも、みんなの動きも初めてとは思えないほど良かったのだけれど………
「私は、ただ強化魔法をかけただけで実際に倒したのは皆さんの力です。ファイアボアには直接的に攻撃してないですしね」
「「「「「えぇぇぇええ〜……」」」」」
なんだか納得できないような視線を送られてしまった。
「ま、まぁファイアボアと戦えただけでも大きな経験になったでしょう?とりあえず今日のところは帰りましょう。今度街で会ったら依頼を一緒に受けましょうね」
「「「「そ、それは、是非!」」」」
リゼ以外の四人が叫ぶ。
「全く……これだから男ってのは………」
リゼが何やら言っているが、私は特に気に留めずに言い放つ。
ちなみに、狩ったファイアボアは私以外の五人で報酬を分け合ってもらう事にした。
五人は最後まで抵抗していたけれど私はお金が貯まる一方で使う機会がないからだ。
「じゃあ、街に帰りましょっか」
そうして私達は、帰りも特になんの問題も起きることなく、街に戻ってきたのだった。
***
宿に戻ると一番最後は私だったようで、ルークも含めて四人が私の帰りを待っていた。
今日はそのままこの宿で夕食を取ることになっているため、席に着く。
「ねぇ、ティーナのところはどうだった?男の人に変なことされたりしなかった?」
そういえば、アルカナは何故か私に男の人は気をつけろと忠告してきたなと思い出す。
というか、変なこととは何だろうか?
「変なことっていうのはよく分からないですけど、なんていうか自己紹介したらとても驚かれましたね」
「ああ〜それウチもだわ」
「私のとこもそうね」
「僕のところも……ですね」
どうやらどこも、同じような感じだったらしい。
「そういえば、なんか気になる噂があったんだよ」
「へぇ〜、どんな噂?」
「それがな、最近魔物が活発化してたり本来あるはずのないところに高ランクの魔物が現れたりしてるだろ?」
それは知っている。何しろ今日の依頼はそれに関係する事だったのだから。
「えぇ」
「そんで噂ってのは、その異常事態が起きているのは魔王のせいなんじゃないかって事だ」
「魔王?」
思いもしなかった噂の内容に私は目を丸くしてディルの言葉を復唱した。




