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21話

ガタン!



そんな音がした方を向くと、目覚めたらしい男の子がベッドから落ち、怯えるようにこちらを見つめていた。


男の子はきっと何も覚えていないだろうから、ここは慎重に………そう思い男の子の目線と合うように腰を下ろし、笑顔で話しかけようとした時だった。



「おっ!起きたのか!」



そんな、何も考えていない発言をしたのはディルだった。


案の定、男の子はその大きな声に驚き余計に怯え、ふさふさな尻尾が股と股の間に隠されてしまっていた。



「ちょっと、ディル!何してんのよ!怖がっちゃってるじゃない!」



そんなアルカナの言葉に男の子の方がビクッとはねた。



「っな!俺にじゃなくてお前に対してだろ!」


「二人とも落ち着いて。余計怖がっているじゃないか」



フレインはそんな二人に呆れ、はぁ、と大きなため息をついた。そして男の子の方に向き直ると腰をかがめて、手を差し出し優しく微笑みかけた。



「僕は冒険者のフレイン。君を酷い目に合わせた男の仲間じゃないから安心して?」



フレインがそういうと、男の子は目を見開き、涙を溜めて私達を見た。そして恐る恐るフレインが差し出した手を取り立ち上がってベッドの横の椅子に腰掛けた。



「あ………ぅ……」


「う、嘘……」


私達は即座に察した。

男の子は何かを言おうとしたのだろうが、それは声にはなっていなかった。おそらく、相当ショックを受けて声を失ってしまったのだろう。


男の子も今、気づいたのか、口をはくはくと動かしているが出てくるのは掠れた呻き声のようなものだけだった。


声を必死に出そうと口を動かす男の子を私は思わず抱き締めた。


私はこの子がとても小さく見え、今にも消えてしまう気がした。親と離れ離れになり、知っている人もいなく、酷い目に遭わされ声までも失ってしまったこの子供を。私は親にはなれないけれど、この子に人の温かみを思い出して欲しかった。


男の子は声にならない声を上げながら、全てを吐き出すように泣いた。こんな私でも少しは役に立てたのかも知れない。



男の子が泣き止んだ後、男の子は突然何かを思い出したように、キョロキョロとあたりを見回した。


皆んなはどうしたのかと男の子の様子を見守っているが、私だけはもしかして……と、思い当たることがあった。



「ポケットの中だと思うよ?」



男の子は首をこてんとされた後、恐る恐る自分の服のポケットの中を覗き込んだ。すると、やはりというべきか男の子は安心したような笑みを浮かべた。



「え?なになに?」


「大事なものか?」


「見つかって良かったね」



それぞれが違う言葉をかけていくが、男の子は私の方を不安そうに見上げた。



「この人たちなら、大丈夫だよ。君の種族の事も隠そうとしてくれているしね」



私はそう言って自分の白金色の髪の毛を少し摘んで男の子に見せた。男の子は少し驚きながらも訳がわからないといいたそうな顔をしながらも、自分の髪の毛を少し摘んだ。


案の定男の子は驚いていたので、髪の毛の色を変える魔法だよと言った。


それを見て安心したのか、男の子はポケットの中から私が先ほど話していた風の精霊を連れ出した。



「風の……精霊…?」



フレインが驚いている。どうやら、種族的に得意とする属性以外の精霊と契約している人はとても珍しいのだとか。


その後も男の子はずっと自身の髪や尻尾を興味深そうにいじっていた。









***









「なぁ、それにしてもこいつの名前はどうすんだ?まぁ、喋れない訳だし文字が書けるならそれが一番いいんだが………」



そう言ったのはディルだ。


男の子はそれに対して申し訳なさそうに首を振った。

男の子はまだ小さいのにも関わらず、どこか大人びている気がした。



「そっかぁ〜、うーん。あ!そうだ!じゃあこの子が文字を書けるようになって自分の名前を伝えられるようになるまで、私達が考えた名前の中で一番気に入ったのを使うっていうのはどうかな?!」



アルカナはどこか楽しそうだった。人の名前をそんなふうに決めてもいいものかとも思ったが、本人がそれでいいと言ったのでそうすることにした。



「皆んな〜、そろそろ名前は考え終わった?」


「うん、いいよ」


「おう!中々の自信作だぜ!」


「私も決まったわ」


「よし!じゃあ、君は一番気に入った名前を言った人にチューしよっか?あ、もちろんほっぺでいいよ?」



え?、とアルカナの発言に一瞬時が止まったように感じたが、そう感じたのは私と男の子だけらしい。

ディルとフレインは呆れたような冷たい眼差しをアルカナに向けていた。

まさか、アルカナにそんな性癖が………

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