20話
「で、ここからが本題なんですけど、みんなはシェルドザが何か知ってるんですよね?」
アルカナが起きたので、話をしなければならない。今日一日で色々な事がありすぎて何がなんなのか全くわからないため、私達は知っている事を教え合うことにした。
「あぁ、知ってるぞ。まぁ詳しくは知らないが。何しろシェルドザという組織はただの噂で、誰も本当に存在するだなんて思っていないだろうからな」
「噂、ですか?」
「そうだ。噂ではシェルドザは神を復活させようとしているらしい。それも、ただの神じゃなく邪神だがな」
邪神........その言葉に何故か神経が研ぎ澄まされるような感覚がした。
「でも、そもそも邪神なんて存在するの?」
そう言ったのはアルカナだ。確かに神が存在するのかも分からないのに復活なんておかしな話だ。
それでは一度、倒されているような.........
「それは分からないが、もし話が本当なら俺は多分、あの有名なお伽話が関係しているんじゃ無いかと思う」
「もしかして、あの女神様と竜王様の悲恋の物語?」
「あぁ、そんな話だったっけな。この国だけじゃなく世界中で有名な、絵本にもなっている話だ」
..……っつ!
突如、頭を貫くような頭痛に襲われた。
まるで、自分が早く思い出せと訴えているように。
私は.……私は、何を忘れている?とても大事なこと.……早く思い出さなきゃいけないのに!
だが、それを思い出す前にその思考はフレインによって遮られた。
「ティーナ?大丈夫?」
その瞬間、思考が停止され頭痛も消えた。
「は、はい。なんでもありません。話の続きをお願いします」
「まぁ、簡単に言えばさっきアルカナが言った通り悲恋の物語だな。俺も小さい時に読んでもらったきりでよく覚えていないが、確かその話に邪神が出てきた気がするんだ」
「それだけ、ですか?」
「まぁ、それだけだ。けど他に邪神の関わる話なんてないんだよ。それに、有名で子供ですら知っているような話が悲恋の物語だなんて可笑しいだろ?」
確かに.……それならばハッピーエンドで終わればいいだけの話だ。それに、そんな話が世界的に有名なお伽話というのもおかしな話だ。
「まぁ、これは俺が疑問に思っただけだからな。全く別の話かも知れないし」
「なるほど………ありがとうございます」
「それより、俺が気になったのはその子のことだ」
そう言ってディルは、視線を眠っている男の子に向ける。
「そういえば、何故かみんな私がこの子を抱いて出てきた時驚いていましたね」
「そりゃあ驚くだろ。何しろ白髪ってことはただの狼の獣人じゃなく、フェンリルの獣人ってことだからな。しかも、フェンリルの獣人ってのはいるらしいってだけで、実際は珍し過ぎて誰も見たことなんてないんじゃないか?」
「フェンリル、ですか?」
聞き慣れないその言葉に首を傾げる。
何故かディルとフレインの首が赤くなっている気がするが、アルカナの「いいのよ、こんな奴ら気にしなくて」発言により、話は戻る。
「あ、あぁ、フェンリルだ。一説では大きな体に白い毛の狼だと言われている。そして、その獣人は全身真っ白で瞳だけが薄い青らしい。しかもフェンリルの能力を受け継いでいて、獣人なのにも関わらず氷魔法が得意なんだと」
「その……フェンリルは……魔物……なんですか?」
「えっと……「それは多分違うと思うよ?」
ディルが言い淀んでいたところで、口を挟んできたのはフレインだ。
「どうしてですか?」
そんな動物は見た事がない。それならやはり魔物なのではないだろうかと思った。
「だって普通、魔物の獣人は存在しないはずでしょ?」
「まぁ、確かに………」
魔物の獣人は存在しないが、その上位の存在の人間に近い魔族というものは存在する。じゃあ一体なんなのかとフレインに聞く。
「さぁ?」
「……さぁ?って………」
そこまで言っておいてそれはないだろうと、私はため息を吐いた。
「ま、でも、確かフェンリルはあのお伽話にも出てきていたはずなんだ。女神様と一緒に。だから、悪いものじゃないと思うよ」
「…なるほど………」
「まぁ、それよりもどうしてその子があの男にあんな目に遭わされていたのかっていうのが気になるけどね」
それもそうだ。どうしてあんな男の子が一人であの男といたのか。親はどうしたのか………いや、親はもしかしたら…………と嫌な憶測が頭を支配する。




