ユハとケルナ④
ケルナは二度三度、鼻をすすってからしばし沈黙する。それからぽつりと語り始めた。
「あれは……一ヶ月……今から一ヶ月半ほど前のことです、プラーハへ納品に行った帰りのキャラバン隊が盗賊に襲われました。幸いにも死人は出ませんでしたがルーチェとカペラが掠われてしまいました、すぐに捜索を始めその日のうちに盗賊団を特定することが出来、足取りを追ったところ翌朝には町のふもとにある酒場に滞在していることが分かりました。スツーカでは盗賊に襲われた場合必ず相手を見つけ出して報復します、徹底してそうすることでスツーカのキャラバンには手を出さないほうがいいと盗賊たちに思わせる意味もあります」
ここでケルナは話を中断し涙を拭うように目をこすった。
「それからすぐにわたし一人でその酒場に向かいました。ルーチェとカペラを奪還し連れ戻すために。やつらは大したことはありませんでした。大勢でわたしにかかってきましたが動きはのろいし戦い方もへたくそでわたしがかわした攻撃が味方に当たるような有様です。だからわたしは慢心してしまったんです。カペラとぶつかりそうになって尻餅をついてしまいました。その時わたしを襲った斬撃を受け止めてくれたのがユハさんだったんです。
女の子なら、みんな憧れるじゃないですか……騎士様に守られるお姫様や王子様が迎えにくるお姫様の話……その時、わたしは思いました。こんなわたしにも王子様が迎えに来てくれたのだと……
一人で乗り込んだわたしをユハさんは酒場中のならず者を敵に回して守ってくれたんです……」
それからケルナは俯いてしばらくは黙ったままだった。ロッタも話の続きを催促するようなことはせずケルナの話をただ待つことにした。
やがてケルナは自分を落ち着かせるように胸に手を当て絞り出すように話し始める。
「ユハさんは強くて優しい人です。いつもわたしを気にかけてくれて…………わたしが話しかけたらいつも笑って応えてくれるんです…………でも……本当は迷惑だったんです……近頃急に態度がよそよそしくなってきて、もう話しかけても顔も合わせてくれなくなりました……」
そう言ってケルナはまた嗚咽を漏らし始めてしまった。
「……と、いうわけなのじゃ」
ロッタは話し終えると大きく溜息を吐いた。
「ふーん、そうか……」
まあ、おおかたそんな所だろうと予想していた俺は驚くほどのこともない話だった。しかしロッタはそんな俺の反応が気に入らなかったらしく俺を睨んだ。
「はあ? ここまで話を聞いておいて『ふーん』じゃと? ふーんとはなんじゃ? ふーんとは!」
ロッタが大きな声を出すものだからケルナが台所からやってきた。




