スツーカ砦①
ケルナの家でブチナやユハ達、それから三人の魔法使いと自警団の幹部を集めて木人形の持ってきた書状についての決定が町の長から言い渡された。
要約すればやつらの言い分は三日以内に全ての財産を置いて退去しろ、しなければ四日目の朝より二万の木人形軍勢と精鋭のツヴァイク魔導団による攻撃を開始し皆殺しにする。それまでの町への出入りの全てを封鎖するというものだった。
スツーカの長から下された決定は徹底抗戦、つまり退去はせずツヴァイク魔導団と正面きって戦うことを決定した。
会合はすでにお開きとなり、ケルナの家に残った者たちは席に着いたままうなだれていた。
木人形の二万という数にすっかり悲観してしまっているようだった。
たしかにあんなのが二万もの軍勢で攻めてくるのを考えるとぞっとする。
「木人形と戦った経験のある者はおらんのか?」
そう尋ねたのはロッタだった。皆顔をあげ、あたりを見回している。
そっと手を上げたのは三人の魔法使いたちのみだった。
ロッタは頷いて話し始めた。
「あれは人の形をして剣や槍を持っておるがひとつひとつに知能はなく、人を見たら斬りかかれ程度の命令で動いておるだけじゃ。動きも速くはないし腕前も平凡じゃ、ここの自警団の兵士たちとは比べるべくもない」
すると自警団抜刀隊の隊長マンソンが答える。
「しかし相手は疲れを知らぬと言います。我々は予備役を動員しても千七百ばかり……さすがにこの差は……」
ワサロヴラーシェが続けて話す。
「ツヴァイク魔導団といえば強力な炎術使いが二人おります。あの二人を相手に正直なところ私たちでは太刀打ち出来ません」
ロッタは頷いた。
「ふむ……しかし今回は儂と、このタケゾウも手を貸す。タケゾウの強さは人並み外れておる、こいつ一人で百や千は倒せるぞ」
全員からどよめきが起こり俺に注目する。
「おお? おいおい……」
ロッタはふっと笑い、ユハは大きく頷いている。
「俺一人がどれほどやれるかは分からんが、やれるだけのことはやろう」
「旦那が手を貸してくれるんなら百人力……いや千人力だ、わははははは」
ユハは大きく笑った。
「しかしロッタよ、大丈夫なのか?」
「ん? 大丈夫じゃ、ちょっとだけ、ちょっとだけじゃから」
「ほんとかよ」
ロッタは少し微笑むと魔法使いたちを見た。ワサロヴラーシェは何かを考えているようであった。
「なるほどローテアウゼン様がお手伝いいただけるのであれば勝機はありそうですね、しかし炎術使いをローテアウゼン様に任せたとしても今度は数が……魔法使いの数が足りません。せめてあと一人、木人形を大量に薙ぎ払える魔法使いが欲しいところです」
ロッタは頷いた。
「そうか……お前達三人と儂、そしてもう一人……五人目がおれば勝てるというのか?」
「え? ええ……まあ」
「そこにおるではないか」
「……え?」
「なんじゃお主らも気付いておらんかったのか、そこじゃ」
ロッタの指差した先を皆が順々に見ていく。その視線の集まった先にはケルナがいた。
注目を浴びたケルナは少し驚いて自分の後ろを見た。
「お前じゃ、ばか者」




