西門の戦い②
やってくる木人形の両脇をケルナとブチナが固め西門へと歩く。木人形は武器を持たず書状らしき巻物を抱えている。
門の前までやってきた木人形はケルナが受け取ろうとしても書状を離そうとせず、仕方なく警戒しながらも門の中へと案内するとやっと書状を渡した。
書状を手放した木人形は立ったまま動かなくなった。ケルナ達は兵士に見張らせておいてから書状を町の長に見せた。
苦い顔で書状を読んだ長は心配そうに見守る皆に向かってこう言った。
「私の家に皆集まってくれ」
長の招集に応じた者たちは皆長に付いていってしまった。
ここに残り木人形の傍に立っていたユハに俺は声をかけてみた。
「ユハは行かんでもよかったのか?」
「俺かい? あれは偉いさんが集まるだけさ、そんで俺たちは町の偉いさんの決定に従うだけさ」
「そういうものか」
「そういうこってさ」
俺とユハは顔を見合わせて笑った。
「しかしこいつは……」
俺は木人形をまじまじと見た。
「気持ちわりいな……」
動かずにじっと立っている木人形は人の形をした木そのもので足は土の着いたままの根っこだった。
「今回の敵はどうやら魔法使いが主力らしいって話しなんでね……」
ユハはそう言って俺を見た。
ふと横を見ればあの三人の魔法使いたちも木人形を凝視していた。珍しいのだろうか……?
そこへロッタがやってきた。
「ちいと聞いてみるのじゃが……」
「なんでしょうか」
ワサロヴラーシェは首をかしげ答える。
「うむ、東門に続く道沿いに木人形を配したのはおぬしらか?」
「……ああ、お気付きでしたか……いえ、失礼しました当然お気付きでしょう。あれは我らのものではありません」
「やつらのものと知って放っておるのか?」
「ええ……まあ……数が数ですから探して焼くのも骨ですし気付かぬ振りをしておるほうがよろしいかと……」
ロッタは思わず吹きだした。
「なかなか豪気じゃの」
ワサロヴラーシェはふっと笑う。
「そうですね、この街にいると不思議とそうなってしまいますね」
ロッタはくすりと笑った。
「なかなか良いな……うむ、儂とそしてこのタケゾウの力をお主らに貸そう」
「ええ!」
ワサロヴラーシェは驚きの声をあげる。そして近くで話を聞いていたユハも叫んだ。
「本当ですかい!? タケゾウの、旦那も……いいんですかいっ?」
ユハは俺の肩に手を乗せて聞きただす。
「うむ、俺はこのロッタの剣だ。ロッタが手を貸せというならその通りにするだけだ」
ユハは感激のあまりに肩を振るわせている。
「旦那と肩を並べて戦える日が来るなんて、夢のようだ!」
「ははは、お手柔らかに頼むぜ」
俺はユハと固く握手を交わした。




