三人の魔法使い②
招き入れられた三人の魔法使いたちはこちらを見て軽く会釈した。それは俺にではなく隣のロッタに対してだ。
一番前にいた魔法使いはローブのフードをはずし、一目散にロッタの前へとやってきた。
「初めまして、ローテアウゼン様とお見受け致しますが間違いありませんか?」
ロッタは立ち上がり三人の来客を迎えた。
「うむ、儂がローテアウゼンじゃ」
魔法使いたちは皆ロッタの返事を聞くと目を輝かせた。
「お……お目にかかれて光栄です。まさか実際に見えることが出来るなど……私ずっと貴女に憧れていまして何度かブルーノに伺おうかと画策してはみたものの……あっこれは失礼しました」
少々舞い上がりすぎたと自覚したのか慌てて取り繕い咳払いをした。
「改めまして……私はこの街の魔法使い筆頭ワサロヴラーシェ、水術魔法を使います。そしてこちらがデュネセイス、私と同じく水術魔法の使い手で、もう一人こちらがラバトローヴェ、土術魔法を使います」
紹介が終わると三人揃って深々と頭を下げた。
「うむ、わざわざ儂に会うためよくぞ参った。そう畏まることも無い、まずは上着を脱いで掛けるがよい」
ロッタに促されて三人は上着のローブを脱ぐと椅子の背もたれにかけた。それからロッタに一礼してから椅子にかける。
ちょうど三人が椅子にかけたところでルーチェとカペラは三人にお茶を出した。
三人は出された茶を口にして落ち着いたのか、話を切り出した。
「私はウルメンの出身ですが……」
ワサロブラーシェはそう言ってロッタを見る。
「……ほう、わしはシュワルツバルトじゃ、近いの」
「ええ、そうなんです。それで幼い頃からローテアウゼン様の話をよく聞いておりました」
「それは……その……どのような………?」
ロッタは恐る恐る聞き返す。ワサロヴラーシェは得意げにこう返した。
「はいっ! そうですね……十二歳で三大禁忌の行使さらに十四歳で七大禁忌にも成功と魔法史の書に記されていました」
「き……禁忌か……ははは……儂も若かったのでな……」
ばつの悪そうに笑うロッタにワサロヴラーシェは身を乗り出した。
「禁忌とはそれを行使されては都合の悪い権力者が決めるだけのこと、私達魔法使いの探求心向上心とはまさに禁忌を追い求めることにこそあると思うのです」
ロッタは頷いた。
「うむ、確かにな。新たな扉を開くことにもなるでな」
ワサロヴラーシェは満足気に頷いた。
「実はブルーノにも赴いたことがあるのです」
「ほう? それはいつじゃ?」
「そうですね……七十年ほど前になるでしょうか、私がまだ海辺の街ヴァニミュンデに居た頃の話になりますが、クラーク領の領主がブルーノに攻城戦を仕掛けると聞きまして我が街の自警団と魔導部隊でその視察に参りました」
「おお、あれか! 凝りもせず毎年毎年七回も仕掛けてきおったの」
ワサロヴラーシェはくすりと笑った。
「他の領同士の戦いはあまり見る機会もありませんでしたのでとても興味深く観覧させてもらいましたが、ブルーノの魔導部隊を指揮するのがローテアウゼン様と聞いて私はブルーノ側に付いて戦いたいと思わず考えてしまいました」
ロッタは昔を思い返すように笑った。
「そうじゃの……あの頃は儂を含めて七人の魔法使いがブルーノにはおった。いずれもが素晴らしい魔法使いじゃった……皆、儂を置いて逝ってしもうたがの……」
ワサロヴラーシェはロッタの顔色を見ながら話を続けた。
「私が見たのは第四次攻城戦でした。味方には犠牲を出さず敵の犠牲も少なくなるよう効果的な防衛戦でした。私も……あのようにありたいと強く感じ入りました」
「そうか……儂の戦いが参考になったのであれば幸いじゃ……」




