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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第四章 決戦! スツーカ砦
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疾風の拳士 ケルナ・グール②

 手下の男たちは一斉にケルナに襲い掛かった。

 剣やメイスを持って襲い掛かるがケルナにはことごとくかわされ同士討ちになるばかりだった。

 ケルナの体術は流れるように美しく動き、素早く拳を叩きつける。隙さえあれば蹴りも炸裂し圧倒的な強さを見せる。

 大勢を相手に怯むこともなく、後ろや死角にも隙は無く牽制や欺瞞の動きも交えながら確実に一人ずつ倒していった。

 こうなると手下どもは人数が却って邪魔になりケルナへの攻撃を仕掛けにくくなっていた。

 ケルナは幼い姉妹をかばいながらの立ち回りであり、条件としては一方的に不利なはずなのだが全くそれを感じさせない。

 離れた場所から眺めているユハはこの立ち回りをただただ感嘆して見ていたが、幼い姉妹の存在が気になっていた。

「あの姉妹に手を出す奴が現れたら乱入するぞ、用意しとけ」

 ユハの部下たちは頷いて、ケルナを取り囲む手下どもの背後に回った。


「なかなかやるな!……門番よ、だがそれもこれまでだ。さあ、ビルズマーク先生……お願いします」


 ボスから紹介されて現れたのは両刃の剣を担いだ優男だった。ビルズマークは踊り場から飛び降りると、端へと避けていく手下どもの真ん中を歩み進んでケルナの前に立った。

「やれやれ、女が相手だと聞いて期待していたんだが……君が相手か……期待外れだったよ」

 ビルズマークはため息を吐いてみせた。

 ケルナはそんなことには構わず、幼い姉妹を後ろへと下がらせた。

「いい? ルーチェもカペラもここから動いちゃだめよ、ケルナ、すぐにあいつらやっつけちゃうから」

「うん、がんばってケルナ!」

 ケルナは微笑んで拳を握って見せた。

 それからケルナはゆっくりと立ち上がり振り返るとビルズマークを睨みつけた。

「今、何か言ったようだが……がっかりなのはわたしの方だ」

 ケルナはビルズマークに歩み寄る。ビルズマークの剣をじっと見た。

 両刃の直刀で刀身はそれほど長くはない、柄は長く両手で構える剣だろう。男の体躯は細身であり力で押すのではなく早さが売りの剣術であろうことが予想出来る。

 ケルナは踏み込み拳を打ち込む。

 ビルズマークは退いてかわし、すぐに剣を振り下ろす。それをケルナは手甲を刃に当てて横に振り払い、連打を浴びせる。

 ビルズマークは思い切り飛び退いたが左の肩を押さえていた。

「驚いたな、僕に攻撃を当てるなんて……ちょっと痛かったよ」

 ケルナは余裕を見せるように笑って見せる。

「全力でその程度の早さなら次の攻撃が最後になるが……大丈夫か?」

 ケルナの挑発に少しイラついたビルズマークは負け惜しみとも取れる言葉を吐いた。

「連打っていうのはさ、こうやるんだってのを見せてあげるよ」

 ビルズマークは片手で剣を握り、小さく振り回すように斬りかかる。

 ケルナは間合いに飛び込み、手で刃を押さえるようにさばき隙を見てまずは裏拳で顔を打つ。

 凪ぐように振るった剣は頭を下げてくぐり、腹を打つ。続けざま顔を打とうとするが刃の返す方が速くケルナは退いた。

 その隙を見たビルズマークは連打を放つ。

 ケルナは難なくかわすが、その連打に怯えたカペラがケルナの後ろに駆け込んだ。

 それに気付いたケルナはカペラにぶつからないよう体をねじるが体勢を崩して尻もちをついてしまった。

「しまっ……!」

 慌てて前を見ると刃は目前に迫っていた。手甲で防ごうと構えるが、次の瞬間鈍い金属音が響く。

 ケルナの目の前に差し出された大剣がビルズマークの剣を受けていた。

 ケルナの前にユハが割って入り剣を受けたのだった。

「お嬢さん……ケルナといったか、これより我らユハ・マツーダファミリアが助太刀いたす」

 そういってユハはケルナに向いてにやりと笑って見せた。

「…………はい……お願いします」

 頬を染めたケルナはうつろな目のまま、そう返事をした。


 この時のことを疾風の拳士ケルナ・グールは後にこう語っている。

「わたしにも…………王子様が迎えに来たのだと、そう思いました」

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