日課①
俺は朝の日課である放牧に来ていた。
フリューゲは機嫌良く草を食んでいる。
木陰で寝転がって時々フリューゲの様子を見ながらぼんやりと空を眺めている。ここ数日はずっと天気がよく穏やかな毎日だ。あの討伐から戻ってきてからというもの一日がやけに長く感じられるようになった。
こうして寝転がって空を見ていても、あの亜麻色の髪が美しい少女が降りてくることはない。心待ちにしていたなどということはないが、それでもどこか楽しみにしているところはあったのだろう、彼女の姿を思い出すと寂しい気分になってしまう。
過ぎてしまった事だが、あの時俺が席の移動をしなければ椅子が足らなくなることはなかった。
椅子を取りになど行かせなければ……俺が着いて行っていれば……
同じような後悔は今までにもさんざんしてきた事だ。終わってから後悔しても何も変わらないし無かったことにもならない。するだけ無駄な後悔だった。
うつらうつらと空を見ているとホウキに乗った人影が降りてくるのが見えた。
「タケゾーさーん!」
オスカーだった。
………………やれやれ。
「なんなんすか、その残念そうな顔は」
降りるなりオスカーはそう言い放った。
「いや、別にそんな顔はしていないぞ」
オスカーは肩で大きくため息を吐いた。
「……どうせエミリアが来たんじゃないかとか期待したんでしょ?」
「いやいや、それは……まあ……否定できんが……」
オスカーは再び大きなため息を吐く。
「そのエミリアが目を覚ましましたよ……って伝えに来たんですけどね」
「なに! それは本当か!」
「はい、さっき目を覚ましましてね、起きるなりタケゾーさんタケゾーさんて、すごいんですから」
「ははは……そうなのか……」
「早く呼んで来いってあの調子でしたから急いで行ってやってください」
「そうか……分かった、馬を厩舎に戻してから行こう」
「じゃあ戻ってそう伝えときます」
「すまんな、よろしく頼む」
オスカーはホウキに乗って戻っていった。
俺はフリューゲを呼び戻そうと指笛を吹こうとしたら、もう目の前まで戻ってきていた。
「ははは……お前は賢いな」
フリューゲの鼻と首を撫でてやり、背中に飛び乗った。
「よし、戻ろうかフリューゲ」
フリューゲは軽快な足取りで厩舎への道を歩き始めた。




