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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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吸血鬼ディートリヒ③

 俺はやつの足を狙って薙ぎ払う。やつは素早く退いてかわす、俺は返す太刀ですぐに防御の構えをとる。

 反撃を警戒したがやつは打ってこなかった。

「若造……いやタケゾウよ、ぬるい! ぬるいぞ! 様子見など不要! 取る気で打ってこぬか!」

 やれやれ……神経質そうな顔のくせに言うことはえらく豪胆なやつだ。

「すまねえな、初見なもんで警戒しちまった」

 俺がそう言うとやつは剣を鋭く振り下ろし構え直す。

「いいだろう、では次はわしからいくぞ」

 やつは正面から俺の間合いを測りながら詰めてくる。

「……もう一歩か」

 俺がそう思った刹那やつは飛び込んできた。なんという遠い間合いか、その切っ先は三本に見える。

 疾い! が、十分かわせる、俺は左へ半身ずらし反撃の一太刀を浴びせるべく薙ぎ払う。

 しかしやつはすでに退いており俺の剣は空を斬った。

 右肩に違和感を感じ、見ると僅かに穿たれた傷があった。

「見切ったつもりだったんだがな……」

 やつは構えを解いた。

「反撃を警戒して浅かった……不覚」

 俺は思わず笑いがこみあげた。

「ははっ……いいな、いいじゃないか」

 やつは自分の剣に舌を這わせた。そういえば吸血鬼だったな……俺の血の味が気に入らなかったのか険しい顔で俺を睨んだ。うら若き乙女の血がお好みらしい。

 さてと……やつの間合いは俺よりも遠い、そして突きこむ速さ、退く速さは侮れない。どう攻めたものかな。

 まずはあの間合いを攻略する必要がある。間合いを詰め、やつの刺突を誘い潜り込むしかない。

 俺は少しずつ、少しずつ間合いを詰める。あと少しあと少し……

 やつの剣が迫る、低くかわしさらに間合いを詰めて十文字の斬撃を繰り出す。

 切っ先がやつの胴に触れた。だがまだ浅い。

「やるなタケゾウ、いいぞ、その調子だ」

 今度は褒められたな……

 俺はやつの攻撃に応じた反撃を繰り返し間合いの差を少しずつ攻略していく。

 幾度となく繰り返し、そろそろ頃合いか…………?

 やつの刺突を誘い間合いを詰める。

 やつは打ってきた。速いがすでに何度も見た刺突に合わせ俺は前に出る。

 やつの剣先を紙一重にかわし潜り込む、やつの剣に俺の刀身を這わせすり上げる。続けざま、返す太刀でやつの右手首を斬りおとした。

「見事なり! タケゾウ!」

 やつは突進し俺に抱き着いた。

「タケゾウ、貴様もわしと同じ鬼であろう? なぜその力を使わぬ!」

「はあ? 何言ってやがる」

 俺はやつを振り解き、剣を収めた。

「俺の役目はここまでだ、いい仕合だった」

 俺はエミリアに手を振り仕事が終わった合図を送る。

 やつに背を向け歩き出すと魔法使いたちの攻撃が始まった。

 もはや七人の精鋭に抗うことは敵わず、ペンドラゴンの亡霊……吸血鬼ディートリヒは、ほどなく息絶えた。

 長かった戦いは終わった。

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