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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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ペンドラゴンの亡霊②

 夜が明けて、いよいよペンドラゴンの亡霊討伐への出発だ。

 整列する魔法学校の生徒たちの顔は今までよりもずっと緊張して見える。これまでの大トカゲや蜘蛛と比べるとはるかに手強い相手であることが分かっている、おまけに率いているのが蜂型の魔獣ホルニッセ。魔獣の中でも手強いやつだ。

 なにより魔法使いにとってホルニッセが厄介なのは飛び回ること。地を這う魔獣相手なら飛んでいれば自身は安全を保つことが出来るが飛ぶ相手となるとそうはいかない。

 おまけに猛毒の針を持っている。ホルニッセの毒針は短剣ほどもあり刺されるだけで致命傷になりかねないがさらに体を麻痺させる猛毒まで持っている。

 外殻は固く特に頭は槍や石弓の矢でも貫くことは難しい。炎術で羽を焼くか雷術で麻痺させてからとどめの一撃を見舞うのが生徒たちにとっては現実的なもっとも有効な撃退法だった。


 後方支援の生徒たちが見守る中、攻撃部隊の生徒たちが出発の支度を進めている。

 さて、今回の討伐は俺も最前線まで付いて行かなきゃならん。誰かに連れていかせるとはイセッタ殿は言っていたが……

「タケゾーさんはわたしが連れていきますね」

 ホウキを抱えたエミリアがにこやかに言った。

「すまないな……で、俺はどうすればいい?」

「わたしの後ろに乗ってください」

 そう言うとエミリアはホウキに腰かけ、ふわりと浮くとほどよい高さで留まり自分の後ろをぽんと叩いた。

「ここに座ってください」

 なんとエミリアはホウキの後ろに乗せてくれるようだ。俺は密かに胸が高鳴った。

 袴の裾を掴んでエミリアの後ろに跨った。

「よし、いいぞ」

「では、いきますね」

 ホウキがゆっくりと上昇を始めた。だがこれは非常事態だと俺はすぐに気付いた。

「……!! あだっ! っつ! たたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたぁっ!!」

 エミリアが驚いて振り返る。

「下ろしてくれ! 下ろっ……はやく!」

 ホウキが地表まで降りると俺は飛び下りた。

「すまん、股が……股が痛くて敵わん。エミリアは……平気なのか?」

 エミリアはくすくすと笑った。

「タケゾーさん、女の子にそんなこと聞くんですか」

「いや……男も女もないだろ、こんなもの痛くて敵わんぞ」

 くすくす笑うエミリアは背後にただならぬ気配を感じて振り返る。

 そこには出発を見守る人々の中にローテアウゼンの姿があった。その顔を見たエミリアは

「ひいっ!」

 と、飛び出しそうになる悲鳴をなんとか飲み下し、思わず顔を背けてしまった。

「タ……タケゾーさん、前に……前に乗りましょう……ね? ね?」

「ん? 前のほうがいいのか?」

「はい……前に乗ってください、前に……」

「……そうか」

 俺は何やら慌てた様子のエミリアに促されてエミリアの前へと座る場所を変える。

「それで、わたしとは反対向きに横に向いて座ってください」

「……ええと……こうか?」

「そうです、じゃあ浮きますよ」

「おう、やってくれ」

「せえの……あれ? もうちょい……ん……こうか……よし」

 一人で飛ぶ時とは違うエミリアは重心を探っているようだった。俺の尻が少し上がったり下がったりしているのを感じた。横に向くと股の痛みは随分と楽になったが油断するとひっくり返りそうでホウキを掴む腕に力が入る。

 やがてホウキは上昇を始める。

 先に出発した攻撃部隊の後を追うようにエミリアも高度を上げながら速度も上げていく。

「いくつかやり方はあるんですけどね……ホウキを浮かべてそれに乗っているわけではないんですよ」

 何のことかと思って振り返るとエミリアは笑顔を向けた。

「今、タケゾーさんも浮かせますからちょっと待っててください」

 そう言うとエミリアは難しい顔で何やら始めた。

 何をしているのか分からなかったがすぐに答えは出た。

 俺の尻に食い込んでいたホウキの柄は柔らかく尻に触れるだけとなり思い切り柄を掴んでいた腕の力も必要ないほど体が安定した。

「……お? おお?……おおおお」

「どうですか?」

「体も安定したし食い込まなくなった」

 エミリアはまたくすくすと笑った。

「お股、痛くなったりしないでしょ?」

「そうだな」

 俺もそう答えて笑った。

 ふと見ると足元を流れる景色、遠くまで見渡せる景色、そして少し肌寒い風、どれも最高に気持ちいい。

 空を飛ぶというのはこんなにも気持ちのいいことだったのか。

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