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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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ペンドラゴンの亡霊①

 翌朝、エミリア達は大トカゲ討伐と同じ布陣で今度は蜘蛛の討伐へと出て行った。

 荷馬車ほどもある大きなハエトリグモのような魔獣で、さらに百匹あまりの子蜘蛛が巣の周りにいたそうで討伐隊はその駆除に手を焼いたとのことだが、エミリアの電撃魔法がことのほか効果が高く、特にすばしっこく動き回る蜘蛛の動きを止めることで貢献できたと戻ってきたエミリアが嬉しそうに話していた。

 これはロッタによれば強力な電撃は神経の伝達を阻害して麻痺させる効果が高く、電撃魔法を受けた生き物は人間だろうが魔獣だろうがたちまち痺れて動けなくなる……というような事を言っていた。

 この日の討伐は参加した者たちが己が役目をしかと果たし帰還した時の顔立ちは一皮剥けたような印象を受けた。

 エミリアについては電撃魔法がさらに強力になったということで、動きを止める効果も相まって親蜘蛛に止めを刺す攻撃部隊にも抜擢され、威力の無さに悩んでいた劣等感も払拭できそうだと嬉しそうに語っていた。

 この討伐が終わった日の夕刻、俺とロッタは夕食の後イセッタ殿に天幕の中へと呼ばれた。

「今回の討伐は次で最後になるのだが……」

 そう切り出したイセッタ殿の表情は少し暗かった。

「なんじゃ、ペンドラゴンの亡霊がどうかしたのか? 今のあやつらなら油断さえせねば問題はなかろう?」

 ロッタがそう言うとイセッタ殿はロッタを見た。

「……うむ、わしもそう思う。じゃが、どうにも嫌な予感がする」

「なんじゃ、先輩らしくもない。エミリアが先走ったせいで却って討伐部隊全体としてのまとまりは向上しておる。今日の蜘蛛退治で皆一皮剥けた、なかでもエミリアの急成長は凄まじい、ペンドラゴンの亡霊などと見えた日にはどれほど化けるか見物じゃと儂は期待しておるというのに」

「……エミリアか……たしかにあやつは天才の器じゃ。初めて会った時には飛行術くらいしか取り柄のない子じゃったが」

 イセッタ殿は何やら思いを馳せるように黙り込んでしまった。少しの沈黙の後こう切り出した。

「わしはタケゾウ君に助力を求めたい」

 俺は意外な言葉に驚いた。

「お……俺に?」

 ロッタを見ると同じように驚いている様子だった。

「助力とは……どのようなことをすれば……?」

 俺が訊ねるとイセッタ殿はまっすぐに俺を見て言った。

「攻撃部隊の後方に控え、君の剣士の目で若き魔法使いに助言を与えてやってほしい」

「それは……あくまで俺は助言を与えるだけでいいのか」

「そうだ、どんな難敵であろうと生徒たちでカタを付けねばならぬ。ただ誰一人として死なせたくはない」

 この言葉に俺は安請け合いが出来ることではないと分かった。

「ペンドラゴンの亡霊とは……いったいどういうモノか教えていただきたい」

「それは……」

 イセッタ殿は知る限りのことを教えてくれた。

 ペンドラゴンの亡霊とは騎士の姿をした魔物の類を指して呼ばれる名である。ペンドラゴンはここからさらに西、海峡を隔てた島国ブルターナ王国を治めた古の王の名であるが、この王の亡霊とは直接の関係はなく単なる俗称らしい。

 今回討伐の対象となったのは、このペンドラゴンの亡霊は多くの蜂型の魔獣ホルニッセを操り近隣の住民や往来を行く行商人などに被害が出ているからであった。

 しかしペンドラゴンの亡霊そのものは騎士のなりをしてはいるが剣をとって人を殺めたとかいう話は今のところないそうだが、それも含めて用心のために俺の助言が欲しいとのことだ。

 俺はだいたいの事情は理解できた。

「そういうことならロッタさえ良ければ構わないが……」

「お? 儂か……そういうことなら儂も構わん」

 ロッタはそう言って頷いた。

 こうして俺は明日からの討伐作戦で攻撃部隊に参加することになった。

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