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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第三章 コリーンのイセッタ婆さん
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エミリアの初陣①

 わたしはエミリア、ヴェネラケルータを討伐するために奴の巣穴を目指して飛んでいる。

 被害のあった地点や目撃された場所などから入念に下調べを重ねて、その生態からほぼ確実とされる北向きの崖を巣穴の位置と結論した。

 すでに日は登り少しずつ気温も上がり始めている。やつは巣穴付近の日当たりの良い場所で日光浴をして体温を温めているはずだ。

 途中で狩場へと向かう攻撃部隊と別れてここから先はわたしとロジータの二人で目標を探す。

 ヴェネラケルータはトカゲに似た魔獣で大きさはちょうど大人を一人丸呑みできるくらい。サラマンダーのように火炎を噴いたりはしないけど毒を持っていて、その牙で傷を負わされると数時間で絶命してしまうほどの猛毒で厄介な相手だった。

 固いウロコに覆われていて剣や槍では太刀打ちできないし頭には骨皮と呼ばれる兜状のひと際固いウロコがあって物理攻撃で倒すには柔らかい首を狙う以外に倒す方法はないとされている。

 それをわたしとロジータの二人で攻撃部隊の待ち伏せる狩場へと追い立てるのが役目だ。


 わたしの使える魔法は雷術系の魔法だけどわたしの術では威力は小さい。イセッタ校長なんかはほんとの落雷みたいな凄まじい術が使えるのだけどわたしはまだまだ……

 わたしの家は代々魔法使いの生まれる家系でわたしは家を継ぐ大魔法使いとなることを期待されていたのだけど、平凡な術しか使えなくて両親の落胆は子供の私にもはっきりと感じ取れるものだった。

 わたしは魔法の鍛錬は一生懸命やっているつもりだった。家庭教師までつけてもらって鍛錬を続けてもなかなか成果は得られなかった。

 両親は何かにすがるような想いだったのだろう、家からは遥か遠くのコリーンにあるこの魔法学校にわたしを入学させた。

 この学校に来てわたしの術は随分と進歩した、いままでが嘘のように。それでもわたしの母親や婆様のような術と比べるとまだまだ子供の遊びのような程度だった。

 ただ、それでもわたしはこの学校に来て良かったと思うことがある。雷術系しか使えなかったわたしがイセッタ校長の教えによって土系、水術系の魔法も僅かだけど使えるようになったことだ。

 そして最近やってきた校長の旧友というローテアウゼンという講師の講義はわたしにとって衝撃だった。

 教えることは今まで教わってきたことの真逆ともいえる内容だったのだけど、結果は今まで教わってきたことと同じところに帰結するという何とも釈然としない講義だったの。

 それを実践させてもらってわたしは何かを掴んだ気がしたの。

 考えてみれば当たり前の話、山を登るのに頂までの道は一本じゃない。自分からは見えないところにも道はある。知らない所にも道はある。道はもともとあったものじゃない、誰かが歩いたから誰かが造ったから、人じゃなく獣が歩いたって道は出来ていく……

 道が無ければわたしが造ってもいいんだって……そう気付かせてくれたのがローテアウゼン先生の講義だった。もっとも……今のわたしにそんなこと出来るとも思えないのだけど。

 先生と一緒にやってきた変わったいで立ちの剣士様、そうタケゾーさんもわたしにとって大きな影響だった。

 自分自身こんなに積極的になれるなんて驚きだった。

 直感で感じたのだけど、何か物凄く深い悲しみを抱えているような気がした。だけどもそれを表に出さない所が素敵。

 わたしがタケゾーさんについて知っていることなんて何にもないんだけど、わたしが勝手にそう想像してるだけなんだけど、でも、何か確信してるっていうか……

 だけどローテアウゼン先生とは何か深い絆……というか言い表せないような何かで結びついてるようなのも感じちゃって、どこか自分で制止してしまってる。

 まあ、そんな話はともかくとして、こんなわたしが魔獣討伐の選抜部隊七名に選ばれたんだ。

 風向きが変わった、といえばいいのかな。

 絶対に負けられない、わたしは一人気合を入れる。

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