先代
「じゃあ探してみるか」
「え?」
突然のゲイルの提案に目が点になる刹那たち。
周りで聞き耳を立てていた隊員たちもざわめき始める。
「ゲイルは何を言ってるんだ?」
「見つかるのか……100年前の機体だぞ」
「はー、また隊長が変な事思いついたよ」
「仕方ないでしょう。ペットは飼い主に似るって言うし……」
「放課後から調べ物か。忙しくなるな」
ざわめく隊員のなかでキャット小隊の隊員のみが、これからの予定を立てていた。
ゲイルは破天荒な隊長だ。この程度で驚いてたら身が持たない。
隊員ほどではないが、割とゲイルに絡まれるためその影響を受けていたセフィーラも、頭の中で機体を探すプランを立てていた。
(図書館?軍の機密情報?だめね。そんなとこで手がかりが見つかるくらいならとっくに軍の諜報部が発見してるでしょう。だったらゲイルばどうやって……)
セフィーラの疑問に答えるようにゲイルがニヤリと笑って口を開く。
「実は少し前に家に面白い客が来たんだよ」
「面白い客?それは一体……」
「自称、先代サジタリウス」
「なっ……それは」
思いもよらない人物、ではなかった。
サジタリウスの行方が分からないことは日本の、いや世界中の人々の知ることであり必然的に、名を騙る偽物の数も多い。
そんな日常とも呼べる迷惑人の一人を手がかりのように言われても……と言うのが教室のみんなの反応だ。
「わかってるさ。俺も最初はいつも通りの偽物かと思ったんだけどな、話を聞いてみたらそうでもないらしい」
一ヶ月前、自称先代サジタリウスを名乗る男がゲイルの家に来たとき、ゲイルは一応話は聞こうと彼を家にあげた。
先代はゲイルの父親ほどの歳の壮年の男で、年齢的には先代と言っても差し支えない。
それに軍ではなく、ゲイルの家に来たことから本物か余程のサジタリウスファンというところまで絞り込まれていたからだ。
そこまで分かれば話を聞くだけの価値はある。
そして話を聞くと、サジタリウスの子孫とキャットの子孫の間でしか分かり得ない情報をいくつも持っていた。
しかし、彼は肝心の人馬のペンダントを持っていなかった。