25話 変化変化
俺の家から出ていった兄貴はこの山を多額の貯金をすべてつぎ込んで買ったらしい。
そして、ここで、この山の地下に研究室を造り、魔術法において禁忌とされる、人体生成の研究をこの家で始めた。
それが君だ。
しかし、その頃、俺は兄貴を何度か訪ねたが、いつも瀕死だった。
無我夢中で研究に没頭し、成果をだそうと必死だった。
ただ、人工の人間、ホムンクルスを造り、魔術界に復讐しようとしていた。
兄貴は君を可能な限り強くしようとした。
普通の人間なら、ありえない筋肉量、魔力許容量。
それも全て魔術界を壊すために。
そして、君は造り出された。
兄貴は君を必死にただの殺戮マシーンにしようとしていた。
でも、一つミスがあった。
息子の紀彦をモデルに君を造ったことだ。
兄貴は君を本当の子どものように可愛がり始めた。
虚偽の戸籍を作り、十歳からは小学四年生として通わせようとした。
しかし、と同時に、紀隆は魔術界の復讐を諦めきれなかった。
君を使うことは忍びない。
でも、復讐したい。
だから、あの戦争を起こした。
戦争で魔術界が自ら瓦解するように、仕向けたのさ。
でも、戦争は兄貴が思った以上に大きくなった。
以前の兄貴なら、喜んだだろうが、その頃の兄貴には、君という守るべき存在もあった。
このとき、兄貴は本当に後悔したと思う。
俺は黒霧家の研究室の所属で、本来は戦闘要員ではないが、その俺さえも動員しないといけないほど、戦争は激化していた。
そして、弓木家は黒霧家に味方することが、正式に発表され、紀隆とその使い魔の君は当然のように動員された。
「後悔はしない。ただ、復讐をどうして諦めようと思えなかったのか。紀彦に申し訳ない。あいつは今は殺戮マシーンとして使われているだろ? ふざけるなって、理不尽だって思ってるよ。でもさ、あいつが魔術界で存在を認識された今、あいつ一人では生きていけないよな」
確かに紀彦君には強力な後ろ盾がないと、生きていけないだろう。
魔術師によって造られた人間であること。
そして、恐るべき力を持っていること。
もしここで、紀隆が命と引き換えに紀彦君を救出したって、紀彦君は長生きできないだろう。
後ろ盾が紀彦になければ、魔術界全てが紀彦の敵になるだろう。
恐ろしい力を持った使い魔。
だからこそ、紀隆は従順に黒霧家に従うしかなかった。
だが、戦争は三年が経っても終わらなかった。
「しくじったよ。紀文。ここまで泥沼化するなんてな。どこかで、一大決戦! みたいな感じで、終わると思ってたんだけどな。これは終わらないな。噂では、ビックスリーのトップは科学界の連中を味方に付けようとしているらしいし。これ以上はいくら何でも責任を感じるよ」
いいじゃないか、科学界も巻き込んで、魔術界を潰せば。
「紀文、それはないよ。科学界も巻き込んで戦争が続けば、魔術界だけではなく、科学界も共倒れになる。結果的に人類は文明を失うだろう。それは望んでいることではない」
だが、俺には分からなかった。それでいいじゃないかって。
「まあ、紀文もいずれ分かるさ。さて、ではこの身をもって責任を果たすとしよう」
これが俺が紀隆に会った最後。その後、紀彦君に会いに行き、そして、全ての真実、黒幕が弓木 紀隆であることをビックスリーのトップに教え、自分の死をもって、戦争を終結させた。
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