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18話 明音の思惑

 

 車が屋敷から出発した。

 目指すのは弓木 紀文。

 松島さんが位置を特定しているので、近くまでは車で行く。


「まず、今後の作戦! 弓木 紀文と接触します!」


 車の助手席で、明音は堂々と宣言した。

 ちょっとうるさい。


「して、その後は?」


 松島さんが、相づちを打つ。


「弓木 紀文と協力関係になります。そして戦争を早期に終結させる」

 

「どうやって?」


「両陣営と話をつけます。戦争を止めましょうってね。明広の説得は無理だろうから、そこは力ずくになるかもだけど。そして、白夢・灰鮮連合の説得を弓木 紀文にしてもらいましょう」


 今回の戦争はまだ、日本の魔術界でのみだ。

 まだ、世界の魔術界には飛び火していない。

 だから、日本の黒霧家の最高責任者、黒霧 明広と白夢・灰鮮の最高責任者が共に戦争を止める。と言えばこの戦争は終わる。

 

「できるのか? そもそも弓木 紀文はこの戦争の引き金みたいなもんだぞ」


 少しの間。

 しかし、明音は変わらず、ぶれなかった。


「戦争の引き金だからこそよ。白夢・灰鮮は弓木 紀文にそそのかされただけで、本気じゃなかったかもしれない。

 そして、魔術界での戦争の危険性、それは戦争に参加した魔術師なら分かるはず。明広ならいざしれず弓木 紀文は現場で参加している。協力してくれる可能性はあると私は思うわ」


 だが、それも考慮して、この戦争を起こしたとしたら?

 短絡的なものではなく、それこそ、ずっと前から計画を練っていたとすれば、明音の説得には応じないだろう。

 

「それがダメだったら?」


「ダメなら私はもうお手上げ。この件からは手を引くしかない。紀彦は命令どおりに転戦。でも、その前に律ちゃんの問題を解決するつもりよ。最悪のパターンだけど、それもある」


「ちょっと待て。律の本体が見つかったのか?」


 その発言は、律の本体が見つかってないと言えないはず。

 それを明音が知っているなら、気を失う前から分かっていたことになる。


「ええ、見つかったわ。意外や意外、紀文の娘だったのよ。新たなる闇を調べているうちに、出てきた。以前まで、重い病気にかかっていて死の淵をさまよっていたのに、ある時から突然、元気な健康体になった。今は普通の日常生活をおくっているそうよ」

 

「な! じゃあ、弓木 紀文がやったのか?」


 彼にはそれだけの技量があるのだろうか。

 いや、父さんの弟なら、十分考えられる。


「そこまでは分からないけどね。この情報は確かだから、安心して欲しい」


(やっと、、、私!)


 律はとても嬉しそうだが、と同時に気付いたようだ。


(でも、私が本体に戻ったら、紀文さんの娘さんは、死んじゃうってことですか?)


 車の中の空気が一気に重くなる。


「そうね、確かにそうよ。そう、だけどね」

 

 明音の受け答えがはっきりしない。


「そうだ。律が元の体に戻れば、その人は死ぬ」


「紀彦! そんな、、、そこまで言わなくても」


「これは、事実だ。でも、律が罪悪感を感じる必要はない。その人は本来、もう死んでいるはずなんだ。生きるべきは律だ。律が元の体に戻っても、その人を殺すことにはならない。だってその人はとっくの昔に死んでいるんだから」


(そう、、、ですね。気を強く持ちます)




 しかし、なぜ、律が本来、背負うはずのない罪悪感を背負うことになってしまったのか。 


 弓木 紀文はそこまで考えていたのだろうか?


 その娘は今、どう思っているのだろうか? 


 人から体を奪うってことは、ほとんどその人を殺すことと同じだ。


 普通、自分の体を失い、魂だけの存在になると、少しずつ、魂の中の魔力が漏れていく。


 その魔力が無くなったとき。


 魂は完全に消滅する。


 今回、律はたまたま助かったが、普通は助からない。


 理不尽だ。


 律は無関係だったのに。

 



「では、その件も話をつけにいく、ということですね」


 車は高速道路をスイスイ進む。

 周りの風景はどんどん町から、山や緑が増えていく。


「そうね。弓木 紀文を揺さぶる材料にしたい」


 ということは、今回はそこまで本気で律の問題を解決するつもりではないのか?


「律に関しては、また次の機会に。みたいな感じか?」


 少し、沈黙。


「そうね。律ちゃんには悪いけど。今回は戦争の収束が最優先。

もちろん、解決するわよ。これが終わったら必ず。力ずくでも」


(ええ、大丈夫ですよ。私は)


 律に少し安堵したような雰囲気がしたのは僕だけだろうか。

 まあ、いずれにせよ、律が今すぐ本体に戻るには今の律の精神状態ではあまり、良くない。

 しっかり、自分で納得してからの方がいい。


 


 車が高速道路の出口をくぐった。


「そろそろですよ。お嬢様」


「分かったわ、松島」

 

 早くも再会の時が近づく。


 サブタイトル、ぴったりくるのが思いつきません、、、。

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