13話 戦場の魔術師たち
住宅街なので家の塀などを盾に様子を見つつ、弓木 紀文を探す。
しかし、乱戦だ。
ところどころについた火と、少ない街頭、そして魔術師が使う魔術の光。
辺りは薄暗く、音だけが大きく聞こえる。
一対一で魔力固定剣を交える魔術師。
家の物陰から、魔力弾を撃ち込み援護射撃をおこなう魔術師。
戦場は、ぐちゃぐちゃだ。
黒霧家側は必死に連繋しようとしている。
新たなる闇は分断するように、できるだけ一対一になるように立ち回っているようだ。
黒霧家側はずいぶん苦戦している。
一人一人の魔術師の質で負けているからだ。
自分たちの方が多いのだから、長く戦えば、有利になると思い込んでいる。
それが、だめだ。
だから、押される。
「一度、引け! 引け!」
この辺りの隊長だろうか。
その合図と共に、黒霧家の魔術師が後退していく。
剣を交え、近接戦闘をしていた、魔術師は手榴弾を置き土産にして、一気に下がる。
が、黒霧家の魔術師が後ろを向いた瞬間、新たなる闇から狙撃された。
パタリ、パタリと何人かが倒れる。
戦場で、背中を見せてどうするんだ。
しかし、新たなる闇はよく訓練されている。
この光の少ない状況で正確に狙撃できるのは、すごい。
それに比べると、黒霧家はあの戦争から比べると質が悪い、気も緩んでいる。
やはり、あの戦争は優秀な魔術師の命を奪いすぎた。
しかし、撤退自体は、見事だ。
もしかすると、作戦かもしれない。
敵が近付いてくれば、一斉射撃。
隙が見えれば、スルリ、スルリと下がっていく。
少し離れた所で隠れて見ていた僕だが、敵中で取り残されそうだ。
どうするか。
そのとき。
けたたましい音と共に黒霧家の屋敷の方向から巨大な爆弾が高速で飛んできた。
おそらく、魔術で強化され、威力は普通の物と比べ物にならないだろう。
ここでは、巻き添えをくらう。
物陰から飛び出し、できる限り爆心地から距離を取るために走る。
誰も気付いた様子はない。
みんな、爆弾に気をとられている。
爆弾の狙いは間違いなく新たなる闇だ。
はっきり見えた。
爆弾の後ろから、小さい爆弾がパラパラと落ちていくのを。
クラスター爆弾を模したのか!
とにかく、走って距離を取り、家に入り、爆弾から身を隠す。
一、二秒後、辺りは明るくなっては暗くなり、また明るくなるのを数一〇秒ほど繰り返した。
爆弾が落ちていくのをこの目で見ていないので、よく分からないが、炸裂音と人の叫び声が聞こえる。
火が回っているのかもしれない。
「突撃! 突撃ぃ!」
さっき、撤退を指示した声と同じだ。
もう一度、戦況を確認したときには、今度は黒霧家の独壇場だった。
どんどん、新たなる闇の魔術師が倒れ数が減っていく。
なるほど、さっきの撤退はあの爆弾を使うためだったのか。
さて、感心している場合じゃない。急がないと、弓木 紀文が逃げてしまう。
立ち上がり、隠れていた家を出る。
「紀彦君、俺を探しているのかな?」
探し人は僕の隠れていた家の三軒隣の家から出てきた。
「そうだ。自分から出てきてくれたのか。探す手間が省けて助かる」
スーツを身にまとい、両手をポケットに入れ、ニヤニヤ笑いながら一歩ずつゆっくり近付いてくる。
「こっちだって探していたんだぜ? 兄の最高傑作。お前を俺は自由の身にしたいと思っていてな」
なるほど、父さんの弟、か。
「そうか、しかし、僕にかまっている場合か? あんたのお仲間が窮地だ。助けなくていいのか?」
さっきの爆発から終始、新たなる闇は押され続けている。
紀文は笑って答えた。
「ああ、かまわない。ここでいかに負けようと、こちらの作戦に問題はない」
「へえ、冷たいんだな」
「新たなる闇とはそういう組織だ。さて、俺は質問に答えた。俺も質問させてもらおう」
「ああ、いいぜ」
紀文の笑っていた顔は消え、目つきは鋭く真顔になっている。
「黒霧家を離れるつもりはないか? 俺はお前に自由を提供するつもりだ」
「今は無い。目的ができた。この目的を達成するまでは、黒霧家を離れるつもりは無い。だが、それ以降なら」
ふむ、と紀文は考えこむような表情を見せた。
「かまわない。が、お前のその目的が終わるまで、俺は待てるか分からん。だから、自由を手に入れたいなら、早くすることだ」
「ご忠告、感謝します。では、僕は今から目的を果たす」
紀文は興味深げな表情を見せた。
「弓木 紀文。あんたを殺すことが、僕の目的だ」
一話ごとの文字数は少ない方が良いのかと思いたち、現在は一話ごとに二千文字を目指しています。




