メイドって怖いし話を聞かない
「はぁ・・・・・・結局着ましたよ。メイド服着せられてしまましたよ。」
白と黒の色をもつシンプルなメイド服。スカートはひらひらで違和感アリまくりです。
姫様はというと外で待機してもらっていました。彼女の部屋で着替えましたが姫様がいるとなぜか襲われるかもしれないという恐怖があります。
「ユエ。とてもお似合いですよ。思わず食べちゃいたいくらい。」
ジュルリと舌を舐めながらこちらを見てきました。背筋が急に寒くなります。
「近寄らないでくれませんかレズビアン。」
「イケズですね。昔にお医者さんごっこした仲なのに。」
「記憶捏造ダメ絶対。」
この姫様とあった私は大人なのでそのようなことは断じてしていません。
この体で、公園で、裸になっていたら公然猥褻で捕まったり男子に囲まれたりしたに違いありません。私はその頃から変わっていませんがクレア姫様は変態度がかなり上がってしまいました。それを証拠に正真正銘の変態になってしまっています。
「そのようなことよりあなたに早速依頼しましょう。」
不安要素が今目の前に存在していますが仕方ありません。
仕事に罪はないですしね。しっかりと姫さまの目を見て聞く姿勢をとりました。
「精霊界の視察をお願いしたいのです。事件が発生しているとの報告がありましたので。」
精霊界。そのままの意味で精霊の住む世界です。多くの精霊が住んでいることはもちろん。妖精などもしっかりと住んでいます。
また精霊界は普通の人間は入ることができません。しかし例外はきちんとあり私のような精霊と契約している人間。エルフという種族は入ることができるのです。
それで精霊界の事件のことが伝えられているということは精霊さんがこっち側に来てそのことを報告したのにほかならない。
精霊さんがこちらに姿を現すのはよほどの緊急事態ということです。
「依頼の話は理解できましたがそれを今さっき入ったばかりの新人がすることではないと思うのですが。」
至極当然のこと言うとクレア姫は真剣な顔でこっちを見ました。
ただ事ではないようです。もっと真剣に話を聞くことにしました。
「ユエ、実はこの依頼にはあなたの四大精霊クラスの精霊が関与している可能性があります。精霊さんが言うにはいきなり闇に飲み込まれてしまう現象が起きているようです。精霊とか関係なく飲み込んでいると精霊さんが言っていました。」
「・・・・・・この都市の精霊契約者に犠牲者が出たのですね。」
クレア姫はコクンと頷きました。精霊界で犠牲者が出るなんて18年ぶりでしょうか。
18年前はドラゴンゾンビが現れて阿鼻叫喚状態。腐った匂いに嗅覚や視覚が機能しなくなるほどの地獄でした。その地獄のせいで互換のほとんどが麻痺してしまった人もいるくらいですからそれはもう大変でした。
ドラゴンゾンビ以上の魔物。もしくは大精霊が事の次第を起こしているならといったところならば天災クラスの被害が出るのも近いでしょう。
「はい。都市の最強の精霊契約者。もちろんユエを除いてですが最強の契約者でした。」
「持ち上げられても困ります。私には最強の名はふさわしくありません。」
「大精霊クラスと契約している人物は故を含めて世界で4人しか確認できていません。しかも現大精霊4人と契約しているあなただけのはず。」
「成り行きですよ。」
『本当に成り行きだよね。僕たちを助けるためにあんな契約を結ぶなんてね。』
シルフが心の声よろしく話かけてきました。
私もあの頃は本当に大旦なことをしたものです。四大精霊の皆を助けるために契約を結ぶなんてかなり大層なことを行うなんて・・・・・・若気の至りですよね。完全に。
『でもそのおかげで私たちは消滅を免れました。感謝してもしきれないはずです。』
『その通りだ。あの時あの場所にユエが来てくれなければ確実に我々は消滅している。』
『わかっているよ。だから僕はユエに力の一部を分けたんだ。』
『Zzz・・・・・・麻婆豆腐が食べたい。』
こんな時にそんな寝言が言えるとはノームは空気が読めています。
「とにかくあなたは明日精霊界に向かっていただきます。」
もう決定事項ということですね。私の意思は関係ないようです。
クレア姫は眠るということなので気を利かせて部屋を退出。退出すると目の前にメイドがいました。見たこともないメイドです。金髪で胸がでかいとかどっかの貴族のような容姿。そのメイドは私を見ると腕を掴みお城の廊下を走っていく。
簡単に言えば今私拉致されています。少し離れた部屋の前にメイドが止まるとバタンと力強く扉を明けました。するとどうでしょう。中に殺気だったメイドさんたちが数10人いるではありませんか。素直に怖いです。
「どのような御用で?」
とりあえず聞いてみました。無理やり連れ去られたのだから聞く権利はあると思います。
メイドさんたちは私を囲むように陣形をとりました。
これから何を言われ何をされるのか震えが止まりません。
「私たちはクレア様護り隊です。クレア様を心から愛しクレア様を心から忠誠を尽くしクレア様を影から見守る親衛隊です。」
「・・・・・・ユエ・マクスウェル。あなたを抹殺します。」
これまた唐突な展開ですね。逃げていいですか?
逃げるという行為を出来る状況ではないけど。何もやらないよりはなにか打開策を考えて・・・・・・。そんな簡単に出たら苦労はしませんよね。
「そもそもなんで抹殺されなきゃいけないんですか?」
「当然の疑問です。その疑問の答えは先ほどの出来事ですよ。」
先ほどの出来事? 会話は聞かれていないとしてどのような感じになっていたでしょうか? クレア姫様が勝手に服を脱いで・・・・・・・まさか!
いやいやそんなはずがありません。あの程度で怒るなんて。
「姫様のお体をあんなお近くで見るなんて許されない。」
「変態だぁ! ここに変態がいる。」
この城はもう嫌です。何ですかこのレズビアンぞろいのお城は。
描写とかに出していませんが男の姿が見えないのはクレア姫様のご趣味ですか!
GMCももしかしたらこんな奴らの集合体の組織ですか!
なんて恐ろしい冥府魔道に落ちてしまったのでしょう。
「戻りたい。数時間前の私に戻りたい。」
「戻りたい?姫様の裸を見て「ヒャッホー!」と叫んでいたのではないのですか?:
「あるわけないです。そんな性癖、私にはありませんよ。」
「それを早く言ってください。思わず殺してしまいそうだったじゃないですか。」
有無言わさずここに連れてきたのはあなたでしょうが!
「皆さん。この方は姫様に不順な行為はしないそうです。」
私とここに居るメイド達が安心したと言わんばかりのため息を吐く。
きっと私とあちらのため息の意味は180度くらい違うでしょうが。
「しかし好都合です。それならばあなたに渡しておきたいものがあります。」
引っ張られたメイドさん。多分メイド長さんが分厚い本を手渡してきまあした。
広辞苑並みのその本のタイトルは『メイドであるためにバージョン1』と書いてあります。もしかしてこの厚さのものがまだあるのでしょうか。バージョン2とか。
「ちなみにそれが最初の巻でバージョンは『1』『1.1』『1.2』『2』の順番になっております。できるだけ全て読破しましょう。」
まさかアップグレードバージョンもあるとは思いませんでした。
何たることでしょう。この分厚さでさらに改良されたものとなると物凄い厚さになるはずです。それはもう狂気ではないでしょうか。
「読み終わったら言いなさい。次のかんを貸してあげます。」
「はい。頑張ります。」と本というかもう辞典を持った状態で作り笑いをしました。
少しのあいだ持っていて思いましたがこの重さ・・・・・・洒落になりません。
どうやってあんな軽々持っていたのか不思議でありません。
「それではユエ。あなたの部屋にご案内しましょう。」
「ここじゃないんですか?」
「・・・・・・この一番汚い物置部屋がいいと?」
ここって物置部屋だったんですね。私の部屋より広いし気鋭だから来客用の部屋かと思っていました。そのようなわけで誤解を説いた私は私の部屋へと案内されました。
しかし扉だけで場違いな部屋に通されたとしか思えませんでした。
金のノブ。銀色のネームプレート。普通の家では使われていない高級ホテルで使われていそうな鍵。まさにこの都市の一番の辺境にいた私がここにいるのがおかしいほどの。
中に入るまでもなく高級感あふれる部屋だと認識できました。
「冗談ですよね。本当にこの部屋が私に与えられた部屋なのですか?」
「冗談もヘチマもありません。れっきとしたあなたの部屋です。」
「あははっ。・・・・・・もうどうでもいいです。はい。」
こうして望まぬ新しい生活が始まりました。
次回「精霊界」