精霊界
朝です。ぎっちし朝になりました。
朝起きるといつもと違う風景が目の前に入ってきます。
天涯のあるベッド。鏡付きの高級化粧台。メイド服やドレスなどがたくさん詰まっていたクローゼット。何百億もしそうなツボ。踏むのも恐れ多い絨毯。なれません。
「とはいえ朝食後に出かけるわけですが。」
実はモーニングコールでメイド長さんにたたき起こされ今日の日程を強制的に聞かされたのです。姫様に手を出したら殺すとも言っていた気がしますが気のせいということで。
さて新しいメイド服を着なくては・・・・・・。
クローゼットを無意識に開けて驚愕してしまった。いつの間にかこの状況に慣れさせられている。メイド服を着るのすらおかしいと感じさせないほどに。
メイド長・・・・・・恐るべし。と心の中でごちりました。
朝食はクレア姫様とは別で取るそうで使用人食堂で取るそうです。
しかも当番制で今日は私がやれとのこと。
食堂までの道のりは昨日の本の前半に書かれていたのでバッチリだと思います。
秘密通路まで完璧に書いてあるのはメイド達の秘密なのかもしれません。
食堂の扉に立った私は汗が吹き出しました。なんでしょう開けてはいけない気がします。
「おや、ここにも真人間が一人。」
「自分からそう言う人は大抵変人でしょう。」
立派なピンクの毛並み誰がどうやらウェルパーという種族の子みたいです。
ピョコピョコと軽快に動くしっぽが面白い。
「違いない。変人同士仲良くしようか。ユミナ・エルマールね。」
「私はユエ・エリトーゼです。新米ですがよろしくお願いします。」
ユミナと握手を交わしました。妙な絆もできた気がします。
「アレ? ユエってあのユエ・マクスウェル。」
「そっち(マクスウェル)の呼び方はあまり好きではないのですけどね。皆マクスウェルの方が私の名前だと思っているわけですよ。」
「そうなんだね。それよりも私たちの名前ってなんか似てない。」
「そうですね。どちらも最初のイニシャルが同じですし。語感も似ています。」
「ってそんなことはどうでもいいよ。」
自分から話を振ったくせに。
「この魔王へと誘う扉を開けなければ食事にありつけない。」
魔王って・・・・・・メイド長はある意味魔王ですけど。
「実は新人はこの扉を開けられないんですよ。ちなみに私も昨日入った新人ですから扉を開けることができません。一度試しましたが大変なことになりました。」
一度は試したんですね。でも健闘むなしく何らかの返り討ちにあったと。
その何かはわかりませんが私も扉を開けることができないということでしょうか。
物は試しです。自ら罠にかかってみましょう。ですが決してマゾではありませんよ。
食堂への扉に手をかけ扉を引きました。罠っぽい何かは発動していません。
「ほえぇ・・・・・・新人でスタンガン、落とし穴、トランポリンワープを回避できるとは!」
どこのダンジョン仕様ですか。
「やっと来ましたね。あなたはここに座りなさい。」
メイド長その他大勢が既に着席しており残っている席は2つ。
その2つの席の1つ。その1つがもうなんというか王様の椅子。
いわゆるとあるRPGの玉座においてありそうな椅子。
このメイド長は私にそこに座れと言っておられるのです。
玉座に座った私の目の間には食器とナプキン。
そういえば私が料理作るという話はどこに・・・・・・。
「というわけで料理作ってきてください。」
「座った意味は!」
「そんなのノリと勢いに決まっているじゃないですか。」
本当にいい性格していますねこのメイド長。
いつか後ろから刃物で刺されてしまうのではないでしょうか。
「調理室はあなたの後ろの扉にあります。」
玉座のインパクトのせいでこの部屋全体を見ていなかったのですがどうやら玉座席の後ろは調理室の扉があったようです。
調理室に入ってみるとこれまた驚きました。調理場をここまで大きくする必要はあったのかというぐらい広いです。
さてさっさと料理を作ってしまいましょう。
何がいいでしょうね。ちょっと冷蔵庫を拝見。
普通の食材に混じってエイリアンの尻尾のようなものがありましたが見間違いです。
よし、見なかったことにしよう・・・・・・にはできませんよね。
仕方なくできるだけその謎の物体が目に合わないように材料を集めました。
冷蔵庫からは玉子。牛乳。キッチン周りにある農家の袋に入っている野菜たち。たまねぎ。きゅうり。レタス。トマトもしっかりゲット。
調味料は目の見えるところにあるので心配はありません。
「それにしてもなかなかに新鮮そうですね。洗うだけで食べられそうです。」
本当にそのまま食べてもいいのですがメイドさんたちには不服を買うでしょう。
特にあのメイド長は何をされるかわからない恐怖があります。
「材料からしてオムレツ。オニオンスープ。サラダが作れそうですね。」
数分後
「できました。」
渾身の力作。素材がいいからかもしれませんがとにかく関心の出来です。
出来た料理を皆に運んでいきます。
私の料理を見た皆は驚愕の眼差しで私を見ていました。
どうしてでしょうか?
「まさか新人でこんなまともな料理が出るとは・・・・・・。」
「昨日は散々だったし。いつも新人が入る度に教育が必要じゃないですか。」
「いや待て。もしかしたら見た目普通でも味はダメかもしれないじゃないか。」
ひどい言われようですね。若干泣きそうです。
「そうですね。毒見は新人のユミナにしてもらいましょう。」
「こんな綺麗に盛り付けられた料理がまずいわけが。」
ユミナが私のオムレツを切り分け口に含むと無言になりました。
まずったとは思えませんし。ちゃんと塩と砂糖は確認しましたし。
間違っているはずはないはずですけど。
「まさか本当に毒物が!」
「いや。Lポリジュースの薬かもよ。」
「それじゃ、私たちもしかして猫化するところだったの!」
本当に失礼極まりないメイドさんたちですね。
Lポリジュースの薬なんてこんな場所で作るわけがないじゃないですか。
あれは女子トイレで作るものです。
無言状態からプルプル震え始めたユミナ。本当にまずかったのでしょうか。
おかわり用のお水を朝露室から持ってくるとユミナが急に立ち上がりました。
「うっまぁい!」
「「リアクション遅!」」
私とメイドさんたちが全員ユミナにツッコミを入れてしまいました。
もちろん魔王ことメイド長もツッコミを入れていました。
「このふわとろ感。完璧な焼き加減。まさに理想のオムレツ!」
なんでそんなB級グルメのリポーターのような感想なのですか。
そんなに美味しいのかとメイド長を含めたメイドさんたちが私のオムレツを口に入れる。
メイド長が食器を置き私のもとに来て肩を置いてきました。
「現時点をもちましてあなたが永遠の料理当番です。」
「ちょっとぉぉぉぉ!」
「頑張ってね。」
ユミナも大概に薄情でした。
食事を終えた私はクレア姫様のもとに参じました。
昨日の件での話です。
「ユエ、死んでしまうとは何事だ。」
突然何を言っているのでしょうかこの方は?
「どうして私が死んでいることになっているのでしょうか?」
「様式美ですよ。ゲームの中の人も言っていたでしょう。」
姫様はテレビゲームにご執心のようです。
「それでは精霊界の扉へと案内させます。フレア、頼みましたよ。」
『お任せを』と私を連れてこのお城の地下の精霊門と呼ばれる場所に案内されました。
幻想的な風景を醸し出しており精霊門の周りには青い光が床から湧き上がってきています。そしてここから先は精霊契約者しか入ることができません。
門は精霊の力に反応します。精霊の力を纏っていなければ門の効果は発動しないのです。
「いいか。あくまでお前の任務は視察だ。余計なことをするなよ。」
事と場の状況によりますができるだけことを起こすつもりはありませんので了承することを伝えました。ここを通るのは初めてです。
精霊界へは一度も言ったことはないので少し楽しみ。
門へと手をかざし精霊界への道が開かれました。
「皆ついてきているでしょ。ここから先は精霊界。あなたたちの方が知っているでしょう。」
『任しておいてよ。僕たちにとって精霊界は庭だから。』
『シルフでは心もとないな。我々がしっかりサポートしよう。』
『そうですね。精霊代表の私たちがこんなものだと思われるのは嫌ですから。』
『Zzz・・・・・草原で眠りたい。』
イフリートさんがノームを脇で抱えています。
ノームは熱くないのでしょうか。
『暑い・・・・・・・こたつでお昼寝しているみたいだよ。』
しっかりと暑いそうでした。でもイフリートさんの体温はそこまで低いのでしょうか?
気になることですがあとで確かめればいいでしょう。
私は後ろを振り向きました。フレアが未だに私を見ていました。
早くしろと目が語っています。フレアに手を振ってジャンプして門の光へと飛び込む。
すると急に体が浮いている世王な感覚に襲われて・・・・・・。
目を開けてみたら空をダイビングしていました。パラシュート無しのスカイダイビング。
高さにして地表にいる人が豆粒以下に見えるくらいに高い。
こんな高度で落ちたら普通に死ねますって。完璧に余裕で死ねますって。
精霊界の入場って命懸け過ぎます。
『地面に落ちちゃうよ。さっさと力を使うんだね。』
シルフのやつ人事のように。きっと本当に人事のようには思っているでしょうけど。
『私が力を貸します。地上に激突されるかもしれない地点に巨大な水のクッションを起きます。うまく着地地点に落ちてください。』
そんなにうまくいくはず・・・・・・ああもう地上まで数千メートル。
このまま激突してしまうのでしょうか?
そんなことノーセンキューです。
「ウンディーネさん。水のクッションを頼みます。」
『任されました。弾力水泡。』
着地地点に水の塊が置かれました。
ちょうど私のいる真上。風が吹かなければ激突することは。
「うわぁぁぁ。」
いきなり風が私に向かって吹き荒れました。
これで元の着地地点から大分離されてしまいました。
万事休す・・・・・・ですか。
『んにゃ。僕を忘れてもらっちゃ困るよ。』
目を瞑って死ぬ覚悟をしたところでいつも眠っている方の声が頭に響きました。
目を開けるともう地上激突寸前でした。
でも助かる予感はしています。彼は土の精霊。いわば地上は彼のホームグラウンド。
能力が100%の状態で発揮できるのです。
地上に私の体が落ちる。しかし硬さはなくスポンジのような柔らかさの弾力でポヨンポヨンと跳ねるだけでした。
「ノーム助かりましたよ。お手柄です。」
『僕は大事な時に決める子だからね。実体化した姿を表せるのも久しぶりだし。』
「確かにそうですね。私がいた世界ではいつも寝ていて実体化しなかったですものね。」
精霊が実体化するにはそれなりのエネルギーが必要です。
ですが精霊界では常に実体化し続けることが可能。
理屈としては精霊なので精霊界なら常に実体化出来るだけなんですけど。
言われても理解できないし説明するのが正直面倒です。
「それでここは精霊界なのですか?自然がやけに多いですね。」
見渡してみると森、川、空、草原くらいしか見えません。
『余分で無駄な建物とかは一切ない。全てが自然のままだ。』
イフリートさんが私に答えてくれました。
話通りだとするとこの精霊界には家がない。
すなわち人間が住めるはずがないということになります。
「それにしても精霊界とは不思議なものですね。入った瞬間服装まで変わるなんて。」
服はメイド服ではなくなっていました。学生が着そうな緑チェックの入った上着、下にはワイシャツ。赤と黒の色合いが素敵なスカート。ニーソックス。
まるで学生のような格好です。
『入った時の年齢に左右されるはずですよ。』
「それならおばさんの服にでもなっていそうだけど。」
『一周回って学生やり直せってことじゃ、痛いって!』
シルフも実体化しているので触れることができます。もちろんラクリマでも触ろうと思えば触れるのですが如何せん私が疲れてしまいます。
「それで事件のあった場所に行かなきゃなら何のですが異変の場所わかります?」
城に来た精霊さんは曖昧なことしか喋らなかったらしく異変のあった場所がわかりません。自分の足でさがす必要があります。
『どういった条件の異変を調べるのか教えてくれ。』
『そうすれば属性を統べる僕たちが探すよ。』
『水の中だろうが空の上だろうが見つけてあげましょう。』
『しょうがないなぁ。』
皆意外にやる気のようです。久しぶりに実体化したからでしょうか。
一人を除いてですが。さてどんな条件で絞るべきでしょうか。
この世界にあるものは省きこの世界になさそうなもの。
「そういえば建造物がないのでしたよね。もしかしたら人の手によって作られた建造物があるかもしれません。」
『了解だ。その条件で調べてみる。しばし待たれよ。』
待たれよということなので昼寝することにしました。
こんな良い天気に草原で眠ればそれはもう気持ちいいはずです。
『見つけたぞ。我が主よ。』
寝る時間は特になかったようです。
『ここから12キロ先の地面の奥深くに大きな建造物がある。』
イフリートさんが指を川の方にさします。どうやらこの川の先を超えた場所のようです。
「地面の中ですか。入るときはノーム。お願いできますか?」
『任せてよ。僕が主様を連れてってあげる。』
なぜか眠気から完全に冴えているノームの了承を受けつつダッシュします。
川を飛び越えるためには脚力と速さが必要。
川を飛び越えようとした瞬間。石につまずき川へとダイブ。
ずぶぬれになってしまいました。
しょうがないので川を泳いで乗り越え、服を乾かしてもらうと今度は崖が待ち構えていた。今度はつまずかない。安全性を重視してシルフに送ってもらうことにしました。
なお、運ばれている最中重いって聞こえたのであとで殴ります。
崖を超えると後。ほとんど障害はありませんでした。
やがて目的地にたどり着くと怪しげな魔法陣のようなものが敷かれていました。
ご丁寧に入り口と書いてある看板もあります。
明らかに罠である気がしなくもありませんがあえて乗ることにしました。
すると体は光に包まれ目の前が見えなくなりました。
包まれた光は徐々に消えてゆきどこかで見たことがある風景でした。
大きな闘技場。武器バトルを行う仕様になっているようです。
『さぁ、始まりました。闘技大会イン精霊界。今回初登場のユエ選手は何を思っているのか!解説の村田さん。』
なんで名前を知られているのでしょうか。
それに実況席まであるとは本当にここは何もない精霊界でしょうか?
明らかに人の・・・・・・人類の手が加わっているのですけど。
でも観戦席に人はいませんでした。
『村田です。普通に驚いているでしょうね。精霊界にこんな場所があるなんて。』
『当たり前の回答をありがとうございます。それではゲストの閻魔大王様。』
『閻魔大王のテルア・グレ・ギルバランだ。ギルちゃんと呼んでくれ。』
精霊界の深淵『地獄』にいる閻魔大王様までこんなところに来ているとは驚きです。
それにしてもギルちゃんって容姿でないでしょうに。
『精霊界なんて普通に言葉にしている我々もおかしいですが今、他選手の入場です。』
前方とその左右の扉が開きました。正確には扉というより鉄格子のような形ですがその扉が上に上がり誰かが姿を現しました。闘技場なのですから戦いの相手でしょうけど。
「こんにちは。こんなところに来るとは大変ですね。」
「あなたも・・・・・・こんなところにいるとは思いませんでした。」
昨日寝る前に見た人と同じ顔です。痩せ顔で特徴的で綺麗な獣耳を持っている。
実はメイド長にいなくなった精霊契約者の写真とプロフィールを渡されました。だからいなくなった人物の判断はつくのです。
「レイ・オルテ。私は精霊契約者がいなくなったと聞いてこちら側にやってきたものです。」
「おや。君はここに無意識に来たわけではないと。でもここがどんな場所か理解できていないはずだろうがね。」
「いえ、後ろのお二人を見て理解しましたよ。ここのことが。」
レイの後ろには無駄に薬が決まっていそうなブ男がいました。
先程左右から出てきていたようでご丁寧にジェスチャーもしていました。
こんな奴らもここにいる以上は精霊契約者だと思うのですけどそれとは別の話です。
私の体を嬲るように見る目つき。これからこの体を好きにできると思っているこの目つき。ここから導き出される答えはある程度予想が付きます。
「勝者のいいなりになる・・・・・・そういうことですよね。レイ・オルテ。」
「その通りだよ。ここの勝者の一人に言うことをきかせることができる。つまり勝てばどんな命令でもできるってわけだ。」
無数の女を食い物にしたわけですか。このゲス共が。
これほどのゲスならさほど手加減しなくて全力でも良さそうです。
「精霊ももちろん使っていい。それがこの闘技大会のルールだからだ。」
こいつは仮にも王宮の精霊契約者。一方的に搾取したに違いありません。
この人のより強い精霊がいたらそれはないでしょうが警戒はする必要があるでしょう。
「なんだ、ビビっているのか?」
ビビってはいませんよ。どうやったら性根を正せるかを考えているだけです。
「ルールはわかりました。私の勝利はほぼ確定しましたけど。」
「何言っているんだ?お嬢ちゃんの精霊がこの俺の精霊メザルに勝てるとでも?」
「勝てると思いますよ。皆は来てくれる。この人たちにお灸を据えましょう。」
「こいつ・・・・・・何を言って・・・・・・・。」
『我が主の命ならば力をかそう。』
『僕たちに任せれば一発だよ。』
『主に逆らう者は罰します。』
『もう泣き喚いても許さないからな。』
『おぉっと。この精霊たちは4属性の大精霊たちだ!』
「ば、バカな! 四大精霊だと! まさかお前!?」
突如現れた四大精霊にこんなことありえないといった顔でレイたちは私を見てきました。
負け惜しみもいいところです。
「さて、私に「勝てるとでも?」と言っていましたけど・・・・・・・その言葉そっくり返します。この私に、『ユエ・エリトーゼ』に勝てると思っているのですか?」
三人の目からぶち犯してやるとひしひし伝わりました。
欲望丸出しなのはとても勘弁です。反吐が出ます。
しかも一人は恥を欠かされて顔が真っ赤になっている状態です。
『では四人の選手たち。準備はいいかぁ!』
「ああ・・・・・・こいつだけは絶対にヤってやる。」
『それでは闘技大会を始めます。レディー・・・・・・ファイ!』
開始の合図とともに三人が精霊を使って私に襲い掛かってきました。
ですが三人の精霊は遅い。レイは精霊メザルを使役しています。
メザルはパワータイプの強力な精霊。力の精霊です。
動きは遅くとも当たればひとたまりもありません。
「精霊使い三人が相手となると。以外に動けないものですね。」
「余裕なものだな。俺たち三人に。」
レイたちはひらりひらりと余裕で避ける私に焦り気味のようでした。
そのおかげで攻撃パターンは読みやすい。感情的人間ほど弱い者はないです。
『4属性の大精霊と契約せし人間。そのような人物は精霊界でも一人しか伝えられていない。『ユエ・エリトーゼ』のみだ。しかしまさか本人だと思わなかったぞ。』
『伝説のマクスウェル様ですからね。人間にして人間ならざるものという印象が強い。』
『現にあいつら精霊使っているはずなのに精霊使っていないユエの方が押しているように見えるからな。あれだけ余裕な態度を取られるととても悔しいだろう。』
『おぉぉぉっと。ついにユエ選手壁際に追い込まれたぁぁぁ!』
『わざとだろうなぁ・・・・・・笑っているぞ。』
壁際に来たのには意味があります。相手はパワータイプ。
相手の脇をすり抜けることも大した労力は必要ありません。
問題があるとすれば精霊術師の三人組。あの三人が感情的でなければ失敗していたでしょう。ですが彼らは私という餌で興奮している。周りが見えていない。
あの男どもは犯罪を起こさぬように情欲を抑えるところから始めるべきです。
自分を律するところから強さは生まれるのです。
「さぁ、俺たちの奴隷になれ。」
大振りな攻撃。避ける必要も・・・・・・・しまっ!
体が急に宙にうきました。
「甘いな! 俺たちの勝ちだ。」
相手渾身の足払い。大振りな攻撃に集中しすぎたせいでこぶりな攻撃に対処ができませんでした。一生の不覚です。甘く見るべきではなかったです。
私は倒れた直後大振りの攻撃が襲ってきました。
傷を負い口の中は砂鉄のような味にまみれ地面に顔をつけられる。
『おっとこれは勝負決まったかぁ!』
『おいおい。あの『マクスウェル』が簡単に終えると思うか?』
『ですが・・・・・・。こ、これは。世界が揺れている。』
『ようやく本気になったようだな。これで圧倒的力が出るぞ。』
油断していたとはいえここまでやられるなんて思いませんでした。
立ち上がって三人の方へ体を向けます。
体の節々が痛い。でもこんなものは別に怪我じゃない。
私の体にあった痛みは急速に無くなっていく。傷も既にない。
「なんだよ。そんなのアリかよ。」
「これは私の能力の一部ですよ。回復量には限りがありますが。」
一日に重症三回分までしか回復できません。
都合よく言えば三回死んでも大丈夫なわけですがね。
「バ、バケモノ・・・・・・。」
「人を化物扱い。私からすればあなたたちが化物ですよ。」
人を傷つけるのを躊躇わないその心。その心こそが化物です。
「ここらで終わらせます。覚悟してください。皆さん。」
「させるかよぉぉぉ!」
「無駄ですよ。あなたたちの不浄な心じゃ私を倒せない。」
「なっ・・・・・・俺の精霊の攻撃を素手で止めただと!」
メザルの拳は私に届きましたが私の手によって防がれる。
何も難しいことじゃない。私も精霊の力を借りたに違いはないのだから。
今、私の体にはイフリートさんが取り付いている。
厳密には違いますがそう表現したほうがわかりやすいでしょう。
力任せに使っていない手と腕を使いメザルを殴り飛ばす。
メザルは契約者の下から大きく離れた壁にぶつかった。
しかしそれだけで終わらせるはずがない。よそ見した三人を射程に捉える。
三人が気づいた時にはもう遅かく素早く組み伏せた。
「これでチェックメイトです。これ以上やるのなら命の保証はしませんが?」
「くそっ!」
『決着。この闘技大会を制したのはユエ・エリトーゼ選手です。』
闘技大会の選手は私の変態共だけだったのですね。
観戦者がいないのも納得でした。
『それではどんな命令にする。それともう一つ勝利特典があるぞ。』
「勝利特典?なんのことですか?」
『それは見てからのお楽しみだ。』
『面白いことが起きそうだよ。』
シルフはまた人事のように
『ちなみに特典とは関係ないがここから出ることはできないよ。』
「ちょ。」
閻魔大王様が衝撃の一言を言い放ちました!
えっ? どういうこと帰れないって。
そういえば自分のご帰還命令が出来るとは聞いていませんでした。
というか入るときに出口の存在を確認するべきだったようです。
『それで何を命令する。』
早くしろと急かされているようです。考えれば考えるほどわからない。
特典。もしこれが私の命を脅かすものならどうする。
こんな完全なる非合法ではそのような常識だって普通にある。
「どうしたら。」
『ユエ。ちょっといい。』
「ノームですか。何かあるのですか?」
「多分大丈夫だよ。正々堂々と戦いに勝ったんだから。」
どうしてそんなことが言えるのかわからないですがノームの言うことです。
平気というのは本当のことでしょう
「命令します。この男をこれまでやってきたことを細かく記して私の世界に戻してください。それがこの人に対する命令です。」
『了解だ。命令は実行される。こいつは責任もって私が送ってやろう。』
パチンと音がしたと思うと影の兵士が現れました。
閻魔大王が作り出したもののようです。
「待て。待ってくれ。」
青ざめた顔でレイがこちらによってきました。
「俺は、俺はまだ!」
影の兵士に飲み込まれどこかへと消え去った。
二人のブ男もいつの間にか消えている。同じことを実行したのかもしれません。
「それで聞きたいのですけど・・・・・・。」
『ちなみにあいつはチェリーだ。ここに来た女どもはことごとく強かったからな。』
ああ、あの人童貞だったんですね。ある意味哀れです。
『それでは特典への道を開く。今後のことは君に任せることにする。』
「今の一言で相当不安になりました。」
ブツっと言う音と共に床が開き精霊門と似た門が現れました。
精霊門と同じ動作を取ると同じく門が幻想的な光が門の周りに飛び交う。
何が起きるかわからない。元の世界に帰るかもしれないし帰れないかもしれない。
現象的には同じだけど全く別のものかもしれない。
『迷っている暇はないよ。』
『主よ。我らが付いている。心配するな。』
『あなたの傍にいつもいますよ。』
『行こう』
力強い精霊4人の言葉。
私は精霊4人の声の力を得て門を潜ったのでした。
次回「異世界『ジ・アース』」
お楽しみに




