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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
最終話:悪役と結末
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その3・Left for

[クロノ]

マキノが船を造り始めて1ヶ月。

マキノに呼ばれて研究所に向かう。

マキノ「おお、来てくれたな。」

クロノ「船はどう?順調?」

マキノ「あぁ。後はこの部品をはめ込んで完成だ。」

水晶のような紫色の玉を持っている。

クロノ「ホントに1ヶ月で完成させやがったのか…船はどこなんだ?」

マキノ「少し離れた場所に置いてある。魔獣の心配はまぁ、メイが見張り番をしているから心配はないさ。」

戦うところを見ていなかったから忘れていたが、戦闘も難なくこなせる万能ロボである。

マキノ「出発はいつにするんだ?すぐにでも行けるが…」

クロノ「そうだな。1週間後ぐらいにしようか。」

マキノ「分かった。それじゃあ色々と準備しておこう。」

クロノ「なぁ、船になんか兵装とかそういうの付いてる?」

マキノ「兵装?魔導砲が正面に一門と対物と対魔法のバリアが1つずつに、機銃が全部で6、そんなところだな。もっと色々付けたかったが、あまり多くはできなかった。」

クロノ「十分。そんだけあればさすがに無事で帰ってこれるだろ。」


1週間。

アウストールに行ってカステロ達に伝え、リースに行ってリンコ達に伝え、準備をした。

いざ、出発の時。



研究所から少し離れた草原に大きな船が佇んでいる。

クロノ「50mいかないくらいか…?」

キキョウ「船にしてはなかなかの大きさだな。」

ギルドの面々の一部が見送りに来た。

レオ「おっきいねぇ…これが浮かぶの?」

クロノ「信じられないだろうがな。浮くんだと。」

レオリー「空飛ぶ船…ですか…そんなものを本当に作り上げてしまうとは…」

クロノ「え?まさか、見たことない?」

レオリー「普通は見たことどころか存在自体ありえませ…あっ」

レオリーの過去、レオが今ここで見ている以上、本当ならレオリーも知っているはず。

レオリー「まさか…」

クロノ「既に未来が変わってるのかもな。楽しみじゃないか。」

船から、エンジンを起動させたような腹に響く低い音が聞こえてくる。

キキョウ「なんだなんだ?」

船べりからマキノが顔を覗かせる。

マキノ「準備できた‼︎いつでも出発できるぞ‼︎」

クロノ「あ〜、そろそろ行きますか。それじゃな。」

キキョウ「どうせ帰ってくるんじゃろ?」

クロノ「当たり前だろ?」

船べりに魔力の鎖を飛ばして引っ掛け、レオリーの手を掴んで自分の体を引っ張る。

カステロ「その能力便利ですね。」

先に乗っていたカステロに羨ましそうに見られる。

クロノ「厄介な能力のついでだよ。」

マキノ「よし。全員乗ったな。メイ!出航だ!」

船のエンジン音が大きくなり、船体がゆっくり持ち上がる。

クロノ「おお〜。」

マール「うわ〜、ほんとに浮かんでる…」

メイ「航行に異常無し。いつでも出発できます。」

クロノ「よ〜し、それでは出発進行!」

船がゆっくりと動き始める。

船べりから下を覗くと、キキョウやレオが手を振っている。

カステロ「みなさん‼︎ありがとうございました‼︎」

船べりから体を乗り出す。

カステロ「必ず国を取り戻し、みなさんを無事に帰還させてみせます‼︎」

船がスピードを上げ、宙を進んでいく。



クロノ「おー。もう見えねぇ。」

出発から数分。

すぐに海の上に出て、しばらく進むうちに大陸が見えなくなった。

カステロ「こんなに広い海を漂流していたのですね…」

クロノ「ほんとになー。どうやって過ごしてたの?」

カステロ「どうやっていたんでしょう…ただただ日にちが過ぎていくのを待っていただけのような日々でしたから…」

クロノ「新手の拷問か何かだな。平和の国が、ちょっとクーデター起きてトップが変わるとすぐにこうなるってのは怖えなぁ。」

船べりに顎をのせてだらけた体勢になる。

カステロ「でも、他国と戦争は続いておりましたし…」

クロノ「別に望んでたわけではないんだろ?」

カステロ「そうですけど…昔から続けていた戦争が長引いたというか…」

クロノ「言ってたな…小さな争いが続いているとかなんとか。」

攻められた際の防衛戦力は育てているが、攻める為の軍隊は持っていない。

カステロのいたリディアとはそういう国であぅた。

カステロ「昔は、我が国も戦争で他国を支配する側の国でした。」

クロノ「へぇ。」

カステロ「リディアが建国された時代のことです。当時の王、アラン・ロット・モルガンは強大な力を持っていて、彼と彼の率いる軍に勝てる者はいないと言われていました。」

クロノ「モルガン?あんたの名前もモルガンだったよな。」

カステロ「はい。私の先祖ですね。」

クロノ「そんなゴツい先祖様の子孫が平和好きと。似ないなー。」

カステロ「逆らう者には重罰を。従う者には繁栄を。そんな方針でした。」

クロノ「ムチとアメね。」

カステロ「事実、それができるほどの力は持っていましたし、当時は戦争は少なかった。ですが彼の死後、支配の下に保たれていた秩序が崩壊しました。」

クロノ「逆らえるようになっちまったわけだからか。」

カステロ「それから数代経って今の私がリディアを治めることになったのですが。」

クロノ「あんたの先代達はみんな戦争してたのか。」

カステロ「はい。」

クロノ「力の支配かー。いかにも悪っぽいなー。」

戦争は少なかったとは言っても、支配は支配。

カステロ「はい。力による支配で戦争は起きないかもしれませんが、平和とは言えません。」

クロノ「平和ね〜。」

水平線を見つめる。

地上はまだ見えない。

カステロ「クロノ様はどう思われますか?」

クロノ「どうって?」

カステロ「平和とはいったい何か。」

クロノ「うーん…知らん。」

カステロ「知ら…」

クロノ「俺が前にいた…あー、地元の話なんだが、ちょくちょく他所の国やらで戦争やっててな。どっかが収まれば別のどっかで始まったりで、常にどこかしらで戦争してるんだ。」

カステロ「私達と少し似てますね。延々とどこかが戦い続ける。」

クロノ「戦争する理由は民族が違うからだとか、政府がなってないから俺たちが変えるんだとか、あの国がいるから俺たちが苦しむんだとかそんなんだ。別に何も悪いことはない。むしろ、きっちり意見を主張してるんだから素晴らしいとは思うがね。ただ…」

カステロ「ただ?」

クロノ「戦争は無関係な人間を巻き込む。本当にうざったい。平和に暮らしたい奴をとことん蹂躙していく。自分たちの私利私欲の為にな。」

カステロ「でも今、意見を主張してると…」

クロノ「無関係な市民巻き込んどいて、マトモな奴だとでも?ただの殺人好きのサイコパスだ。人殺すのが好きなんだから私利私欲だろ。或いは、目的達成の為に最も効果のある手段を選び、その為なら人間が何人死のうと関係ないみたいな超絶冷酷な効率厨とかな。どっちもイかれてるが。」

カステロ「はぁ…」

クロノ「意見があるなら言えばいい。周りがどう反応しようと、そんなのはそいつらの感性なんだから無視すればいい。無視できないほどのことなら、そう言えばいい。危害を加えてくるようだったら、誰かに訴えればいい。誰も聞いてくれないなら、危害加えてくる奴の自業自得だ。何されようと文句は言えんはずだ。人に悪口言って悪いことやって自分は悪くないとかそんな道理は通らん。それでも、言われた側が悪人にされてしまう。その時は、自分たちを悪にしようとするそいつらを叩きのめせばいい。不当な評価してるんだ、叩きのめされて当然だろ。」

カステロ「そんな攻撃的な発想…」

クロノ「だが魔王を倒しに行く勇者は尊敬されるよな?人間から見たら魔王を倒しに行く勇者は英雄だが、魔王率いる魔族から見たら、そんな勇者は悪魔の化身か何かだ。自分たちだって自分たちなりの生き方をしているだけなのに、人間が迫害してくる、って感じにな。人の評価なんてのは所詮人の評価だ。世界の評価じゃない。そう思う奴が多いからそう見えるだけだ。信用していいのは、右の頬をぶん殴ったら右の頬が痛くなるっていう物理現象だけ。右の頬殴って気持ちいいとか言ってくる奴は、口ではそう言ってても心の中は分からない。もしかしたら本当に気持ちいいのかもしれないし、実は嫌なのかも。本人に直接告げられてもそれが嘘かもしれん。だから、人の想いや統計なんてものは基本的に判断基準にはなり得ない。そう考えると、平和ってのがどういう基準で存在してるか、分かんなくなってきちまうよなぁ?」

カステロ「えっと…」

クロノ「平和だ秩序だ悪だってのは人が考えたこと。人が判断するもの。戦争が無いからって、国内でいじめや嫌い合いや貶め合いくらいあるだろう。無ければ本当に平和かもしれんな。だが、それを平和じゃないと考える奴はどこかにいる可能性もある。満場一致で平和だと全員が言えば平和かもしれんが、満場一致なんてありえない。これから生まれてくる未来の子どもたちが何て言うか分からんからな。だから、平和についてどう思うかの答えは、知らん。」

カステロ「でも戦争があるよりかは…」

クロノ「これから俺らは戦争のない平和な国を取り戻す為に戦争もどきをするんだがな。」

カステロ「……」

呆れたのか驚いたのか分からない表情をする。

クロノ「クーデター返しって感じ?」

カステロ「……」

クロノ「どうした?今更になって嫌になってきたか?」

カステロ「そうではないです…ただ、私は合っているのか間違っているのか…」

クロノ「合ってるか間違ってるかより、自分がやりたいことで考えろ。こんなデカい出来事、人間の頭で正解不正解の判断ができるわけがない。どっちをしても後悔するんだ。やりたいことを選んだ方がいい。あの国に行って負けたら殺されるかもしれない反乱の成功に賭けてみるか、引き返すか。」

カステロ「……」

クロノ「平和を信じるあんたがどうこうって言ってるんじゃない。あくまで俺のいた世界での出来事を言ったまで。この世界とは色々なところで違う。それに、俺のこの考えだって、1人の人間の考えだ。合ってる合ってないにしろ、ただの1つの意見だ。平和だ、悪だと言葉の数では違うが、内容も重みも全部同じだ。信じていいのは、物理現象と己の心のみだ。」

カステロ「……いえ、大丈夫です。」

クロノ「ほう?」

カステロ「行きます。ここまで来て戻れないというのもありますが、私には私なりに信じる平和があります。」

クロノ「それでいい。それが一番良いことだ。さぁて、では作戦会議と行こう。向こうに着いて何をするかだ。」

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