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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
8話:過ぎた技術に利はあるか
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その5・Realize

[クロノ]

魔界への門を超え、魔界に入る。

目的地であるローベリスプはかなり遠いらしい。

クロノ「どのくらいかかるの?」

ミランダ「そうねぇ…あなたのあの車の速さで4時間ってとこかしら。」

普段車を運転するスピードはおよそ時速60km。

例えるなら東京-静岡より少し遠いくらいだ。

クロノ「なるほど…遠いな。」

ミランダ「どうする?魔王城に寄ってってあの子に会いに行く?」

クロノ「モニカに?」

魔界の王モニカ。

なぜか仲は良い。

クロノ「道中に魔王城あるってわけじゃないし…あ、でもモニカなら街のこと知ってるかな。」

ミランダ「そうねぇ。私あの街のこと一切知らないから、先に聞いた方がいいかもね。」

クロノ「知らないの?何百年生きてて?」

このサキュバスは3桁生きてるはずである。

ミランダ「あのね…確かに長生きしてるけど、知らないことだってあるわよ?全く興味なかったんだもん。」



魔王城。

来るのは3回目だったか4回目だったか。

見慣れた城の前に着く。

門番「おや?ミランダ様に、クロノ様?」

ミランダ「急にごめんなさいね。モニカいる?」

ステラ「モニカ様ならいらっしゃいますよ。」

門の向こうから大魔王モニカ専属メイドのステラさんがやってくる。

ステラ「珍しいですね。ミランダ様が何の連絡もなしに唐突に魔王城を訪れなさるなんて。」

ミランダ「まぁ急だったからねー。それで、モニカからちょっと話を聞きたいのだけど…」

ステラ「お話とは?」

ミランダ「ローベリスプのこと。あなたも知ってるでしょ?あそこに用事があるんだけど、その前にどんな所なのかモニカから聞こうと思って。」

ステラ「なるほど…ミランダ様もご存知でしたか。」

クロノ「あれ?モニカから直接聞いたんじゃないの?」

てっきりモニカからそういった話を聞いたのだと思っていた。

ミランダ「違うわよ。別の知り合い。」

ステラ「今日はモニカ様は特に誰かと面会があるというわけではありませんし、大丈夫かと。むしろ、クロノ様でしたら歓迎ですね。モニカ様もクロノ様に会いたがっておりますし。」

クロノ「そうなの?」

ステラ「………」

なぜかステラから冷たい視線を送られる。

クロノ「あの…えっ?」

ステラ「まさか…」

ミランダ「この子も中々よねぇ…」

ステラ「いやでも、モニカ様も中々攻めようとしませんし…」

ミランダ「さすがのクロノでも攻めたら気づくと思うんだけどねぇ…サキュバスの癖に奥手なんだから…」

クロノ「何の話をしてらっしゃるのかな?」

この2人はよく自分のことを自分そっちのけで話す。

ステラ「いえ、御自分でお気づきにならないといけないことですので。気づいたところで、クロノ様にとって良いことかどうなのかも分かりませんが。」

クロノ「前も似たようなことあったな。2人でコソコソ俺のこととモニカのこと…」

ミランダ「そうね。」

クロノ「………まさか?」

ステラ「お気づきになられました?」

クロノ「いや、分からないってことにしとくよ。」

ステラ「ちっ。」

クロノ「え?」

ステラの舌打ちを初めて聞いた。

というか、メイドなのだから一応自分より立場的に下の筈なのに舌打ちされるのに驚いた。

ステラ「それでは案内いたしますね。」



クロノ「さすがに突然の訪問だと悪いよな…」

ステラ「いえ、先ほど申し上げましたように、モニカ様はクロノ様に会いたがっておりました。それに…」

ミランダ「それに?」

ステラ「時にはこういったハプニングも味あわせないと、面白くありませんから。」

クロノ「あんた本当にモニカのメイドさん?」

ステラ「兼、友人です。」

メイド:友人=2:8なのではないかと。

魔王城の中にある部屋の前に着く。

ステラ「こちらですね。」

クロノ「あれ?前はなんか広間みたいな所に来なかったっけ?」

ステラ「あれはいわゆる謁見の間という奴です。事前のアポイントメントがある時などは彼方(あちら)で話を聞くことになってるのです。」

ミランダ「今回は完全に不意打ちだから直接部屋にお邪魔するわけね。」

ステラ「はい。」

向こうからしたらいい迷惑だ。

ステラ「それでは。」

ステラがドアをノックする。

モニカ「はい?」

中から声だけがするが、モニカの部屋ということなのでモニカなのだろう。

ステラ「ステラです。お客様が魔王様にお会いしたいと。」

ステラ「はぁ?そんな話聞いてないわよ?」

ステラ「アポ無しなんです。」

モニカ「はぁ…別に急ぎの用事があるわけでもないし、いいけど…」

ステラ「それでは失礼します。」

モニカ「え?」

ステラがドアを開ける。

ミランダ「は〜い、モニカ。」

モニカ「あなた‼︎なんで急に…」

ミランダ「私だけじゃないわよ?」

クロノ「おっす。」

モニカ「⁉︎⁉︎」

盛大にすっ転んだ。

今時バラエティの若手芸人でも見ないような転び方だ。

モニカ「なんで急に…⁉︎」

ミランダ「唐突でごめんね。ちょっとお話が聞きたくてね。今日決まった上に結構大事なことだから…」

モニカ「大事なこと…?」



モニカとステラにローベリスプへ向かうこと、またなぜ向かう必要があるのかを伝える。

クロノ「というわけよ。」

モニカ「なるほどね。確かに、あいつが言ってた通りの物なら、越えられそうね。」

クロノ「それで、そのローベリスプって街のことを知りたいのよ。そこの町長さんがどんな奴とか、どういう街なのかとか。」

モニカ「残念だけど、私はあの街に行ったわけじゃないのよ。」

クロノ「あれま?」

モニカ「向こうからこっちに来て、どれだけ素晴らしいものかってのを語って帰っていったわ。売り込みってやつ?」

つまり、モニカはローベリスプに行ったことがあるわけではない。

クロノ「ってことは街に関しては分からないと。」

モニカ「あの人自身についても、私の想像でしか分からないしね。」

クロノ「お前から見てどんな奴だった?」

モニカ「性格はともかくとして、やってることは嫌いね。なんてったって、その新しく開発したっていう機関を利用して、人間に戦争をふっかけようって言うのよ?」

クロノ「そういう類のやつか…ってか、それを人間である俺に言っていいの?」

モニカ「別に大丈夫よ。あなただもの。」

クロノ「まぁ、俺も言いふらすつもりはないけどさ。」

下手に言いふらしたら、ロクなことにならない。

モニカ「とりあえず適当な返事をしたけど、そのうちちゃんとした回答を言わなきゃいけないのよね…」

モニカがため息をつく。

モニカ「どったの?嫌なら嫌って言えばいいじゃん?」

ミランダ「クロノ。統治者っていうのは、そんなに簡単じゃないのよ?」

クロノ「そうなの?」

モニカ「誰がなんと言おうと刃向かえないような圧倒的な力を持った統治者だったら、こんなことでは困らないわ。先代のキュリーとかみたいな人ならね。自分で言うのもなんだけど、私だって強いのよ?こうして魔王になったんだから、魔界で誰よりも強い。でも先代と違って、さすがに魔界の連中に束になってかかってこられたら勝てないかもしれない程度の強さなのよ。そんな私が魔界捨てて人間界を守ろうとするのは、結構危ない橋を渡ってるってことなのよ。下手したら魔界の過激派連中が結託してこの城に乗り込んでくるわ。」

クロノ「お前がやろうとしてるのは、魔界と人間界との争いを無くすことで、双方に平和をもたらすって奴だろ?人間界守るっつっても、魔界も守ってるじゃん。」

モニカ「そういうのはね、どうとでも取れるのよ。実際、どっかの街で私を売国奴とか裏切り者とかって言ってる奴もいるようだし?『魔族は人間より優れている。そんな人間界に平和をもたらそうなど、魔界を裏切ったのか。魔界を人間界に売るつもりなのか。』ってね。」

クロノ「いきすぎでしょ。」

モニカ「政治ってのはめんどくさいの。そうやって捏造とか飛躍とかでもしてあることないこと言いふらさなきゃ、トップは引きずり落とせないのよ?どっちが良い奴でどっちが悪い奴かなんて関係なしに。私だって、他の奴が魔王になって戦争始めようとしたら、似たような方法使うでしょうよ。」

クロノ「あぁでも、俺んとこの世界もそんなもんだったな。」

実際あることないこと言ってるかどうかは知らないが、お互い落とし合いのしすぎでちょっとしたショーになっている。

モニカ「へぇ…統治ってのはどこの世界もそうなのかしらね。クロノの世界か…行ってみたいなぁ…」

少しワクワクしたようなトーンで言う。

ステラ「魔王様。」

モニカ「え?あ、ごめんなさい!あなたの気持ちも考えず…」

クロノ「え?」

一瞬何のことか分からなかったが、すぐに理解した。

自分があの世界に帰りたいのに帰れないという可哀想な立場なのに、行ってみたいという不謹慎なことをしたということになったのだ。

クロノ「あぁ、別にいいよ。戻りたいとはあんまり思ってないし。」

モニカ「そうなの?」

クロノ「縁を切りたいってわけではないけどな。そりゃあ文明的には勝ってるさ。娯楽も、あっちで暮らしてたせいで慣れてるってのもあるが、あっちの方が良い物揃ってるとは思う。あっちにしかない文化、あっちにしかない食べ物、あっちにしかない生活。正直、手放したくない物はある。山ほどな。今すぐにでも戻ってやりたいことはある。でも、こっちでも同じことが言えるし、それにあっちの世界は面白くないんだ。」

モニカ「話聞く限りだと、結構面白そうに聞こえたけど…」

クロノ「物質的には豊かだよ。でも、人と接する機会がどんどん奪われていく。そうじゃない生活もやろうと思えばできるが、積極的にそうしようって奴はいないし、そんなの嫌だって奴は多い。いつだったか、子供が外で楽しく遊んでいる世界を作りたいみたいなこと言ってたよな。」

モニカ「そうね。私の目標とする世界…」

クロノ「今も昔も、そんな生活ほとんどできてない。超大昔にはあったかもしれないが、戦争してた頃はいつ空から爆弾が落ちてくるか分からんし、現代はゲームっていう外で遊ばなくても家の中で1人で遊べる代物が出てきたから余計外に出ない子供は増えてきたし。」

モニカ「家の中で遊べる?」

クロノ「そ。俺が戻りたい理由の1つでもあるんだがな。確かに面白い。めちゃくちゃ面白い。面白すぎて洗脳されて、外で追いかけっこするよりそっちの方が楽しくなっちゃうんだ。ガキの頃は友達と遊ばなかったから、家でゲームやりまくってたよ。おかげでコミュ障だったさ。」

モニカ「コミュ障?」

クロノ「コミュニケーション障害…だったっけ?友達と話すのが苦手なことを言う。事務的な会話ならできるが、世間話とかそういうのができなかったりやり辛かったりするんだ。」

モニカ「今のあなたはできてるじゃない。」

クロノ「って思うだろ?俺はな、誰かに話しかけられたらそれに応じて答えを返せる。世間話だろうと、それらしく返せる。でも俺から話しかけたりはしない。できない。俺があんたに話してるのだって、やらなきゃいけない用事があるから話してるんだ。決して嫌いなわけじゃない。ただ、人に話しかけるってのが苦手なんだ。内心常にビクビクして、『こんなこと言っても大丈夫なのかな?嫌われたりしてないかな?人に話しかけられない根暗がこんなことして大丈夫なのかな?』ってなってる。勇気を振り絞って話しかけるけど、すぐに後悔する。そんで頭の中が真っ白になって、変なこと言ったりする。」

ミランダ「あなた、色んな人に話しかけられてるでしょ?大丈夫よ。」

クロノ「それはな、俺は諦めてるんだよ。人に好かれるのを。なんだったらもう好き放題言って、嫌わない人だけ残ってくれりゃいいかなって。それでいて、嫌われたら悲しくなる訳の分からん性格をしてはいるんだがな。」

どこまでいっても矛盾の塊である。

モニカ「面倒な性格してるのね。バカみたい。」

クロノ「バカだからな。」

モニカ「いいのよ。そんなあなたでも、私は好きよ。」

ステラ「‼︎」

ミランダ「‼︎」

とうとう告白された。

モニカ「あなたがどんなあなたであろうと、人の事を思って生きている人間であることには変わりないわ。あなたが人を愛する人間であり続ける限り、私もあなたを愛する。」

クロノ「………」

モニカ「…口開けてないで何か言いなさいよ…」

いつの間にか口が開いていた。

クロノ「いや、嬉しいよ。ありがとう。」

モニカ「…あっ、話戻さなきゃ!えっと…で、私より詳しく知ってる人を1人だけ知ってるわ。」

クロノ「ほう。」

モニカ「1人だけっていうか、あの街のことを知ってて、且つあなたが魔界で知ってるだろうって人が1人しかいないって意味なんだけど…」

クロノ「俺魔界にそんなに知り合いいないんだがな…」

今まで3,4回ほどしか来ていないし、どれも何か事件を解決してすぐに人間界に戻ってきた。

そんなに魔界で人と話していない。

モニカ「行けば分かるわ。改心したって言ってたし。」

クロノ「改心?」

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