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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
7話:虫姫様と桃太郎
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その6・Ruin's trap

[クロノ]

小屋の中は広いというわけでもなかった。

人1人が生活するのに十分なほどの大きさだ。

だから大して調べることもないだろう。

(まぁ、字読めないから調べようっつっても調べられないわけだが。)

せめて字が読めなくても何かの手がかりになると分かるような物くらいはないだろうか。

そう思いつつ、探してみるがやはり分からない。

強いて挙げるなら、この小屋の主の物であろう魔導杖は見つけた。

後は特にそれらしい物は見当たらない。



レオリー「ふぅ…」

10分ほど経ってようやくレオリーが手を下ろした。

クロノ「終わったか?」

レオリー「はい。しばらくすれば目を覚ますでしょう。」

10分ほどで瀕死の人間を回復させられるとか…

クロノ「あんたのその回復魔法はチートか何かかよ。」

レオリー「ちーと?」

クロノ「ズルいってこと。」

レオリー「いやまぁ、これも修行の成果ですよ。」

どんな修行をしたんだ…

クロノ「俺がいなくなった後?ヒーラーやラフはどうなってたんだ?」

ついでに未来がどうなっているのか、知っておきたい。

レオリー「それは……ヒーラーは変わりはありませんでした。皆落ち込んではいましたけど、それでもなんとかギルドを運営させています。」

(ヒーラー『は』…か。)

クロノ「ラフは?」

レオリー「その…」

言葉に詰まっている。

クロノ「言いたくないような事態ってことか?」

レオリー「どちらかといえば…クロノさんにとっても、ショックなことかもしれません…」

(俺にとってショック?)

いったいどんな事態だと言うのか。

少女「…んん……」

少女が目を覚ましたようだ。

レオリー「大丈夫ですか?」

少女「えーと…」

目の前に知らない男2人がいて驚いているようだ。

クロノ「安心しろ、俺らは敵じゃない。」

レオリー「大怪我をしていたの、覚えてますか?」

少女「大怪我……そうだ、腕…」

残っている方の右手で左肩を触り、自分の腕がないことに気づく。

クロノ「あんたの腕は悪いが回収できなかった…ちょっとヤバくてな。」

少女「そうなの…?なら仕方ないか…」

まだ小学生くらいの見た目だが、大人びているような雰囲気だ。

見た目だけ若い、いわゆるロリババァというやつなのだろうか。

クロノ「大丈夫か?」

少女「うん、大丈夫です。ちょっと不便だけど、問題はないかも…。」

クロノ「そうか…。なぁ、ちょっと話を聞きたいんだが、いいか?」

少女「はい…いいですよ。」

クロノ「まずはお互い自己紹介しよう。俺はカミヅキ・クロノ、こっちはレオ…リー・クロール。」

少女「カミヅキ…?お母さんが時々名前言ってた…。」

クロノ「あんたの母さんが?ちなみに、あんたの母さんって…」

少女「すごい魔女なんだよ…。」

少し自慢げに語るが、この辺りで魔女ということは…

クロノ「すごい魔女か…それは1度会ってみたいな。」

少女「今はいないんだ。私を置いてどこかに行っちゃったの。私はルカ。」

クロノ「ルカ、か。ちなみにだが、今何歳とか分かるか?」

ルカ「10歳だよ。」

クロノ「10歳か…」

にしては随分と落ち着いているな。

クロノ「なぁ、今村の方で何が起きてるか知ってるか?村だけでなく、この森もかもしれんが。」

ルカ「うん…知ってる…虫さんがたくさん召喚されてたり…罠がたくさん置いてあったり…」

クロノ「お前のせいだったりする?」

ルカ「違うよ…私じゃないよ…‼︎」

ルカが怯えたような怒ったような反応をする。

クロノ「いや、お前を疑ってるわけじゃないんだ。お前じゃないならいいんだ。なら心当たりはあるか?」

ルカ「心当たり…多分あるかも…」

クロノ「それはどんな?」

ルカ「ここからちょっと離れた所に遺跡があって…そこに私の力を封印した石板があるの…」

クロノ「封印?」

ルカ「私の魔力…生まれつき強すぎるんだって…だからお母さんが一部を封印したの…」

クロノ「なるほど。その石板に何かしら異常があったのかもしれないと。」

ルカ「今日の朝に…そうかもしれないかなって思って行ったんだけど…」

レオリー「罠にやられてしまった、と…」

ルカ「うん…」

どうしようもなく災難だ。

言っていることが本当だとしたら、なんてかわいそうな子なんだろう。

それなのに泣くような素振りを見せない。

あくまで落ち着いている。

これが本当に10歳なのだろうか。

クロノ「お前よく泣かないな。普通ならあんたくらいの年頃の子供はまず即死してもおかしくはない。生きてたとしても、あんなのトラウマになるだろ?」

レオリー「クロノさん…」

クロノ「とりあえず、その遺跡とやらに行ってみよう。手がかりか…あるいはそこで何か解決するかもしれん。ルカ、その遺跡まで案内できるか?」

ルカ「えっと…」

クロノ「俺らが道中絶対にあんたを守る。」

ルカ「うん…できる…」

恐怖は抜けていないはずなのに、できると言い切るほどの精神とは…

レオリー「クロノさん。」

クロノ「どうした?」

レオリー「僕のいた未来に、ルカ・ロンドーという魔女がいました。」

クロノ「ほほう?」

レオリー「彼女は虫を操る魔女だったんです。」

ということは、レオリーの言うルカは今目の前にいるルカで間違いないだろう。

クロノ「ちなみにそいつは?」

レオリー「ヒーラーでギルドの一員として働いていました。それを知ったのはクロノさんが失踪した知ってからですが。」

つまり、答えはもう出たようなものだ。

クロノ「それ、もっと前に言えなかったの?」

レオリー「ルカさんのことを知らなかったんです。片腕がない理由も、ギルドに入った理由も、どんな過去を送ってきたかも。ルカさんが片腕を失った理由もたった今知ったくらいです。今ここで名前を聞くまで、この子があのルカさんの子供の頃だなんて思いもしませんでした。」

この事件に関して、俺は子供のレオに何も話していないようだ。

なぜだろうか。

クロノ「なるほどな。とにかく、なんとかすべき対象はもう判明した。後はそれをどうするかだが、今は遺跡に行ってみよう。この事態が収まるなら収めてやらなくちゃ。」



小屋を出て来た道を戻る。

ちょうど血が道標になっている。

クロノ「こう考えると、よくもまぁ片腕無い状態でこの距離を歩いたな。」

東京ドームを横断するくらいは歩いただろう。

ルカ「虫にちょっとずつ止血してもらいながら逃げたから…」

クロノ「虫に…?」

ルカ「傷口に入る菌だけを食べる虫とか、一時的に止血することができる粘液を吐く虫とか…」

クロノ「まじで?虫に?」

俺だったらそんなことするくらいなら死を選ぶ。

ルカ「そうだよ?」

クロノ「俺だったらできないな。」

ルカ「なんで?虫可愛いよ?」

クロノ「俺虫苦手なんだよ…」

ルカ「可愛いのに…」

ゴキブリよりもヤバい見た目の虫がいるのにか?

レオリー「僕は虫苦手ではないけど、好きになるには厳しいかな…」

ルカ「そう…可愛いのに…ほら…」

さっそく虫を一体召喚する。

力の一部を封印してるというだけで、召喚自体はできるようだ。

ルカの手にはムカデのような虫が現れる。

大量の足に、蛇のような体。

クロノ「ひぃっ‼︎」

ルカ「ほら…可愛いよ…?」

ムカデは手から腕を伝ってルカの全身を動き回る。

クロノ「いやいやいや無理無理無理」

ルカ「むぅ…」

頬を膨らまされても無理なもんは無理ですがな。

そんなこんなしてる内に、例のギロチンまで戻ってきた。

クロノ「ここは…」

ルカが落とし穴の縁に寄る。

レオリー「気をつけて!落ちちゃうよ!」

ルカ「大丈夫…」

ルカが落とし穴の中を覗く。

俺は覗く勇気はない。

クロノ「よくもまぁこんなトラウマレベルの場所に…」

レオリー「強いですよね…」

ルカ「慣れてるから…」

クロノ「慣れてる?」

ルカ「何回か罠にかかったことある…腕取れたのは初めてだけど…いつも怪我ばっかりだから…ちょっと痛いだけなら…」

腕ブチ切られるのはちょっとじゃない。

ルカ「あっ…」

クロノ「どうした…?」

ルカ「ミタケヘビムカデがたくさんいる…」

クロノ「なにそれ。ヤバい虫?」

ルカ「うん…大人の身長と同じくらいにまで成長するムカデで…肉食の虫なんだ…」

ミタケというのは身の丈から来てるのか?

レオリー「肉食…」

クロノ「ちょっと待てよ。そんな虫がたくさんいる穴の中に腕が落ちたってことは…」

ルカ「食べる速度は遅いから、まだ腕は残ってるんじゃないかな…ほら…あっ…」

レオリーが穴を覗きに行く。

レオリー「これは…グロいのに慣れてる僕でも…」

クロノ「おい…」

レオリー「ボロボロというかバラバラというか…こんな…」

クロノ「ストップだ。俺がトラウマになる。早く先に行こう。」



ルカの案内で遺跡の入口まで来た。

道中凄まじいほどの罠があったが、慎重に進んできたおかげで全てスルーすることができた。

クロノ「こんだけの罠をいったい誰が設置したのか…想像は付くがな。」

どうせ村人だろう。

ルカ「お母さんにこういう所があるって聞いたことはあったけど実際に来るのは初めて…」

クロノ「ルカにとっても未知のエリアか。気をつけて進もう。」

遺跡の中に入る。

さっそく広間に出る。

結構広めな空間だ。

体育館とかくらいある。

天井に意味深に空いている穴が1つある。

入り口とは反対、向こう側に扉が1つある。

それ以外に扉は見当たらないのであれが奥に続く道なのだろう。

クロノ「石板に異常があったとして、それが誰かの仕業だったとしたら、中まで罠がある可能性はあるだろう。」

ルカ「遺跡の中には危険な罠を設置したってお母さんが言ってた。」

クロノ「余計なことを…遺跡の中?」

ルカ「うん。中だけって。」

クロノ「遺跡の中の罠はお前の母親が設置したものってわけか。」

(逆に言えば、遺跡の外…森の中の罠は魔女は関係ないと。)

扉の前に来る。

クロノ「それじゃあ開けよう。」

扉の取っ手に手を触れる。

すると突然電流が流れ、その激痛に思わず手を離す。

クロノ「いって‼︎」

結構痛かった。

レオリー「クロノさん!」

クロノ「にゃろ〜…」

すると、いきなり背後から左手を錠に捕まえられる。

クロノ「んん⁉︎」

錠の鎖は天井から繋がっていた。

その鎖は自分を凄まじい勢いで引き、広間の真ん中に連れてこられた。

レオリー「クロノさん‼︎」

クロノ「なんだこれ?」

解こうとしても解けない。

今度は自分の周囲を囲うように地面からフェンスが出てくる。

4方向フルフェンス、逃げ場はない。

ルカ「こんな罠が…」

レオリー「クロノさん!」

クロノ「大丈夫だ!俺なら何とか…」

レオリー「クロノさん‼︎」

突然レオリーが切羽詰まったような表情で自分の後ろを見ながら叫ぶ。

後ろを見ると、巨大なムカデが立つように佇んでいた。

ルカ「ミタケヘビムカデ…‼︎こんな大きさ初めて見た…‼︎」

クロノ「これがミタケヘビムカデ⁉︎」

ミタケヘビムカデとやらは最大で人の身長ほどになるらしいが、こいつは明らかに人の大きさじゃない。

全長は推測で6〜7メートルといったいところか。

檻の中では寝そべったままでは体が入りきらないのか、体の半分を持ち上げ、こちらを見ている。

それのせいで足の付け根、体の裏の部分が丸見えになっていてグロいとかもうその辺の次元ではない。

クロノ「こんなのとフェンスの中で2人きりかよ…」

遠目から見るだけでも気絶しそうなフォルムが目の前にいるというのだから…

自分が開けようとした扉の横の壁の一部が横にスライドする。

クロノ「まさか俺が触った扉はダミーか!まじちくしょうだぞこのやろう‼︎」

ルカ「クロノさん…!」

だがあの先に石板とやらがあるのだろう。

クロノ「レオリー‼︎ルカを連れて先に石板のところまで行け‼︎」

レオリー「クロノさんは⁉︎」

クロノ「1人で何とかなる‼︎最悪、殺されないように逃げ続けるさ‼︎後で助けに来てくれ‼︎」

レオリー「…分かりました‼︎ルカ、行こう‼︎」

ルカ「う、うん…ミタケヘビムカデは毒を吐いたりもしてくるから気をつけて‼︎浴びちゃったら動けなくなっちゃうよ‼︎」

エロ同人みたいな…

クロノ「分かった‼︎気をつけろよ‼︎」

ルカ「頑張って…‼︎」



クロノ「さーて…」

ムカデはキュルキュルと虫特有の不快な音を出す。

クロノ「本当に泣きたくなってきた。あ、もう涙出てるわ。」

頬に濡れた感触がすると思ったら本当に泣いてた。

クロノ「まじでなぁ…ありえねぇよなぁ…」

ムカデはこちらをじっと見つめる。

体の先端に目が大量についている。

クロノ「なぁ…このまま戦わずにさ、あいつらが戻ってくるまでここで落ち着いとくってことにしない?俺ルカの為に来たんだし、それも平和の為に?」

とりあえず話しかけてみる。

もしかしたら通じるかもしれない。

クロノ「まぁ無理か…そりゃそうだよなー話なんて通じるわけ」

ムカデがギギーと鳴き声のようなものを出した後、体を丸めながら体を下ろした。

クロノ「あれ?」

応戦する気がないとでも言いたげな感じだ。

クロノ「戦わないでくれるの…?」

ムカデが頭を縦に振る。

クロノ「まさか…話が通じる?」

ムカデはもう一度頭を縦に振る。

(ウソだろ?あれか?ルカのママさんが調教したからか?ルカとその味方には手を出さないようにって言っといたのか?何にせよ、ラッキーだ。それなら、レオリー達が戻ってくるまで…いや。)

クロノ「この檻から出る方法とかあんのか?」

ムカデが檻の外の壁に首を向ける。

クロノ「んん?」

見ると、壁の一部分だけ色が違う。

そこだけ濃い。

クロノ「あれをどうするの?押すとか?」

ムカデが首を縦に振る。

そして、首を一瞬で前に突き出すような動きをする。

クロノ「思い切りやれってこと?」

ムカデが首を縦に振る。

(なんかこうして見るとちょっとかわいいかも…)

右手を壁の濃い部分に向け、魔力を発射する。

魔力は壁に当たり、その部分が壁に沈む。

すると、フェンスが地面に戻っていく。

どうやら、スイッチだったようだ。

クロノ「なるほど。助かったよ!ありがとう!虫にも良い奴はいるんだな!」

ムカデは無視して天井に空いていた穴に入っていった。

クロノ「さて、行きますか。罠がまだあるんだったか。さっさと行かないとな。」

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