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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
6話:道化師にも戦場はある
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その6・Soul eater

[クロノ]

いよいよ自分の出番だ。

ロナルド「準備はよろしいですか?」

クロノ「心の準備以外なら全部できた。」

ロナルド「緊張しておられるので?」

クロノ「俺こういうの苦手なんだよ。恥ずかしくて恥ずかしくて。」

ロナルド「舞台に上がればそんな緊張もなくなりますよ。」

クロノ「だといいよなぁ。」

まぁ実際運動会のリレーとかだと、走る直前はすごく緊張するがバトンを渡されて走ると緊張のことなんか忘れてしまう。

クロノ「そういや俺が何の魔獣と当たるかって知ってんの?」

ロナルド「えぇ。実況のピギー以外の関係者は。召使いなんかには教えていませんが。」

クロノ「ってことはあんたも知ってるわけか。」

ロナルド「はい。ですが、教えることはできません。」

クロノ「いいけどさ。やっぱ緊張するな〜!ヤバイのと当たったらどうしよ〜!」

ロナルド「貴方なら何が相手でも勝てますよ。」

クロノ「途中でリタイアしたらどうなんの?」

ロナルド「本戦に出場する権利がもらえなくなりますね。」

クロノ「おぅふ…」

ピギー「さぁ今日最後の出場者だ!」

ロナルド「出番ですよ。武器は持っていかなくてよいのですか?」

クロノ「大丈夫だ。いける。」

ピギー「この男も今年初出場!一体どんなやつなんだ⁉︎ってことで出でよ、ヒーーーール‼︎」


入り口から舞台に出る。

その途端大きな歓声が沸き起こる。

ピギー「腰には剣を1本!その剣でどこまで戦えるのか!そして黒い仮面!他に特徴はねぇのか!さっきのテムだって上半身裸だったぜ!まぁ、こいつの戦いぶりを見てからいじるとしよう!さぁ、ヒールが相手をする魔獣はこいつだ‼︎」

反対側にある檻が開く。

檻からクマみたいに巨大な体をした四つ足の魔獣がノッソノッソと歩いてくる。

毛はベージュに近く、サバンナ辺りにでもいそうだ。

顔が縦に長く、馬というよりはアリクイだ。

この魔獣が現れた瞬間、観客がみな驚いたような声を出す。

ピギー「こいつは⁉︎おいヒールくん!あんたちょっと運が悪かったな…」

クロノ「なにこれ。」

ピギー「今年初出場のヒール。そんな男の初めての相手はカラドマ‼︎魂を喰らう化け物だ‼︎」

(あぁ、酒場でそんな話したな…)

相手の魂を餌とするカラドマという魔獣。

ピギー「おいヒール。お前カラドマのことは知ってるよな。戦ったことはあるか?」

クロノ「あるわきゃねぇだろ。」

どこにいるのかは分からないが、見えるように手を大きく横に振る。

ピギー「おーっとマジかよ。どうする?正直この魔獣とは戦わないのが身のためだとは思うぞ?逃げても恥じゃねぇ。むしろ戦うのはアホのやることだ。それでもやるか?」

(やらなきゃ本戦に出れないでしょうがっての。)

右手を掲げる。

ピギー「どうやらやる気のようだな。よぉし‼︎その勇気を買うぜ‼︎さぁ観客席の皆々様‼︎この無謀な大バカ野郎を精一杯応援してくれ‼︎」

一度はうろたえた観客席も盛り上がりを取り戻す。

ピギー「さぁヒール!命を賭けろ‼︎いざ尋常に!始め(ディッカ)‼︎」

合図とともに右手を前に突き出し、魔力を流す。

闇の魔力はロケットランチャーの形を創り上げる。

ピギー「おい、こいつは‼︎召喚魔法か⁉︎召喚陣無しにか⁉︎」

クロノ「ちげぇよ。」

照準をカラドマに合わせる。

カラドマはまだ状況が掴めていないのか、立ったままだ。

クロノ「発射(ファイア)‼︎」

引き金を引く。

魔法を凝縮した塊が射出口から発射され、猛スピードでカラドマを捉える。

わざわざロケットランチャーを創ってまで攻撃するのは魔力の無駄に思えるが、普通に右手から魔力を発射するより弾速が高い。

見た目はロケットランチャーだが実質はスナイパーガンのようなものだ。

まぁ爆発魔法を込めているからロケランのように爆発するわけだが。

カラドマの周囲に黙々と煙が立ち込める。

ピギー「なんなんだ?まさかやっちまってねぇだろうな?」

クロノ「まっさか〜。」

ピギー「いや、カラドマのことだ。ピンピンしてるかもしれん。気をつけろよヒール!」

ロケランを消して、腰の剣を抜く。

まだ煙が濃く立ち込めている中、突然その中から何かが伸びてくる。

自分の体に向けられて伸びたそれはかなりのスピードで近づいてくるが、ドッジロールで回避。

空を切った何かは煙の中に戻っていった。

ピギー「今のはアレだ‼︎やつの触手だ‼︎ヒール、あれにぶっ刺さったらあの世行きだぞ‼︎だが1個教えといてやろう‼︎触れるだけなら魂は取られない‼︎表面にギザギザが付いててな‼︎それによって傷つけられた部分から魂を取られるんだ‼︎傷さえつけられなきゃ触れても問題はない‼︎まぁ見たら分かるが、やつは触手をヒュンヒュン動かすから傷が付かずに触るってのは無理だ‼︎」

風の魔法で煙を晴らす。

口の先からさっきの触手が伸びている。

(あれが刺さったらアウトなやつか。)

ピギー「気をつけろ。図体デカイからって動きは全く遅くねぇからな!」

カラドマがこっちに向かって走りながら触手を伸ばす。

こちらもカラドマに向かって走る。

伸びてきた触手が当たるか当たらないかのギリギリでスライディングをして避け、魔力でその体勢のまま加速、あっという間にすぐ近くに寄る。

ピギー「あれを抜いた⁉︎」

ブレーキをしながら右足で立ち、胸の高さにあげた左足を曲げて、足の裏でカラドマを蹴る。

雷の魔力を込めて蹴ったが、効果はあまりなかったようだ。

クロノ「だったら‼︎」

右手で地面を殴り、地面を伝わらせてカラドマを凍らせる。

しかし、伸びた触手が戻ってくる。

右手を地面から離し、触手を避けながら距離を取る。

ピギー「いい攻撃だが通じていない!やはり去年のキッドマンみたいに剣で切り裂くしかないのか?」

(切り裂く…か…。)

しかし、この硬い体を俺の剣で切り裂けるだろうか。

刀ならばうまいこと斬れるかもしれない。

しかし、俺の剣は斬るよりも叩き切ることを考えた西洋的な剣だ。

(これじゃあ斬れねぇよなぁ…)

いったいどうすればいいのか。

(なら発想を変えてみようか。斬りたいなら斬る以外の方法で…あるいは剣じゃないもので斬る…)

剣じゃないもの…

(あるじゃないか。俺の右手に宿る闇の魔力で使えるものが。)

剣を腰に戻す。

ピギー「おっと武器をしまった?何をするんだ?」

カラドマがこちらを睨みつける。

クロノ「ついでだ。俺のチートスキルもこの舞台でお披露目してやろうじゃねぇか。」

右手を前に掲げる。

ピギー「なんだ?何をしている?何の構えなんだ?なにか発射するつもりか?」

カラドマがもう一度こちらへ突進してくる。

ピギー「おっとまた来たぞ‼︎」

触手がまた伸びてくる。

ピギー「避けろヒール‼︎避けろ‼︎」

しかし、動かない。

恐怖で動けないのではなく、あえて動かないのだ。

触手が自分の左肩に向かって伸びてくる。

それを右手で受け止める。

その瞬間、魔力を流し触手が刺さるエネルギーを魔力に変換する。

刺さりさえしなければ触れても大丈夫らしい。

なら刺さらないように、込められたエネルギーを全て魔力に変換してしまえば。

そうすればエネルギーは0となり、触手は刺さらないで、魔力を生み出すことができる。

パッシブカウンター。

欠点といえば、魔力に変換したエネルギーを体に流すとその部分はダメージを受けるという点だが、流す部分を自分で調節することができる。

変換した魔力の一部を足に送り、高速でカラドマの横に移動する。

その速度のままでカラドマに突っ込み、右手の指を伸ばし、ソードを創る。

ソードはカラドマの胴体を捉え、すり抜ける。

ソードは右手に闇の魔力を込め、指の先からレーザーブレードが伸びているように魔力を伸ばし、それに触れたものは切り刻まれはしないが、魔力を付着させることができる。

また、相手の体を透過するので、体内に魔力を設置することもできる。

右手で指を鳴らし、魔力を起爆する。

カラドマが悲鳴を上げる。

ピギー「なんだなんだ⁉︎よく分からんが効いてるぞ‼︎」

クロノ「ならとっとと終わっちまえ‼︎」

再びソードを創り、何度もカラドマを切り裂く。

カラドマは触手を自分の体に刺そうとはしてこなかった。

自分なりにこの後にどうなるのか分かっているのだろう。

クロノ「悪いが、容赦はできん。すまんな。」

右手の指を鳴らす。

設置した魔力から斬撃が大量に放たれ、カラドマの体内だけを切り刻む。


何十撃目かでカラドマは遂に倒れた。

ピギー「これは⁉︎これはこれは⁉︎これはいったいどうした⁉︎初参加の男が⁉︎カラドマを⁉︎全く攻撃を食らわずに⁉︎カラドマを⁉︎倒しちまったぞーーーー‼︎」

会場中が一気にハイテンションに包まれる。

ピギー「おいおいフザケンナよ‼︎キッドマンですら結構ギリギリだったのにこの野郎はピンピンしてやがる‼︎カラドマからロクに攻撃を食らわずに勝ちやがった‼︎ってか一回触手刺さったよな⁉︎あれどうやったんだよ⁉︎まぁいい‼︎勝負ありだ‼︎勝者はヒーーール‼︎勇敢な戦士に喝采を送ってやれぇ‼︎‼︎」


観客席が騒がしい中、さっさと舞台裏に引っ込む。

クロノ「っだぁ‼︎キツイ‼︎」

結構余裕そうな戦いだったが、実際魔力をふんだんに使いまくった戦いだった。

クロノ「疲れるっつーの‼︎…はぁ…」

ロナルド「素晴らしい戦いでした。さすがはクロノ様といったところですね。」

クロノ「魔力を使うのも疲れるけど、心が1番疲れたわい。食らったら魂とられるとかマジで大変なんだよ…」

キッド「おいヒール!」

キッドとマリアがやってくる。

キッド「てめぇカラドマ相手に完封勝利しちまうとはてめぇ‼︎」

マリア「すごいですよ‼︎さすがです‼︎」

クロノ「あぁ〜はいはい。落ち着いてくれって。俺疲れたんだよ…」

キッド「いや〜すごい戦いだった‼︎熱かったよ‼︎」

クロノ「はぁ…。」

キッド「よし、今から酒場に行くぞ‼︎夜まで飲みまくろう‼︎お前の分は俺が奢ってやる‼︎」

クロノ「あぁ〜ちょっといい?後で合流するからちょっといい?」

キッド「なんだ、どっか行くのか?」

クロノ「ちょっとな。先行ってて。」

キッド達と分かれる。


クロノ「おぉ、いたいた。」

選手達が泊まる部屋の通路で例のピエロを見つける。

クロノ「探したぞ。」

しかし相変わらずシカトされる。

クロノ「今日あんたとすれ違った時にあんた落し物してたぞ。ほらこれ。」

そう言って拾った絵を見せる。

ピエロはそれを見た途端奪うようにその絵を取る。

クロノ「お礼くらい言ってくれてもいいじゃんかよ。」

しかしピエロは何の反応も示さない。

クロノ「じゃあさ、礼はいいからその代わり教えて欲しいことがあんだけどさ。」

ピエロがこちらを向く。

初めてマトモな反応が来た。

クロノ「なんだってこんな大会に参加したのさ?あんたの様子、なんか普通じゃないけど。」

大会を楽しむといった様子もなく、誰か知り合いがいそうな感じでもない。

何か大きな目的か何かがあって、それは楽しめるようなことではないのだろう、と思った。

ピエロ「金がいるんだ。」

小さく呟いた。

(喋れるんだ…)

クロノ「金?」

ピエロ「病気を治すために…」

クロノ「病気ってあんたの?」

ピエロ「妹のだ。」

そう言ってピエロが部屋に戻ろうとする。

(隣の部屋だったんだ。)

クロノ「俺はリースって村でギルドやってるんだ。相談に乗るぜ。」

今度は返答をするために振り返る素振りすら見せず部屋に入っていった。

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