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Whenever, Forever 一(その3)

別に死ぬわけじゃないですけど,少しずつ途中で更新が止まっている小説群を投稿していきたいと思っています.

 その言葉を聴いた直は激昂してまた頼さんに飛び掛かろうとして、頼さんもそれに応じようとしたけれど、

「やめてください!」

 私が、二人の間に入って両手を目一杯広げて、二人を止めた。

 私は二人のサンドイッチになるかと思ったけれど、二人とも私の体に触れる前に急ブレーキをして止まりきった。そして、

「どちらにしろ、触られないよ」

 直がそう言い、

「そうだ、触れられるのは相当霊感の強いやつか、インディだけだ」

「その呼び方はやめてください! 秘境探検する学者みたいではありませんか!」

 堅苦しい日本語で拒絶の意を表明するインディゴさんに、私はだいぶ萌えた。

「……で、どんな意図なのかな、嬢ちゃん?」

 頼さんが背が高いから私を覗き込むように見ながら、訊ねてくる。

「……私は」

 私は俯いて、誰の目も見ることができずに、告げる。

「私は、直のことを――忘れてしまっても、構いません」

 その言葉に、少しだけ驚いたように見えたのは――インディゴさんだけで。

 男二人は、薄々はわかっていたようだった。……やはり世界最強の人間と、それと渡り合う男――それに私の彼氏は、違う。

「その代わり、私は直と一緒に、私の息子に会いたいんです。直のことを忘れるのなら、たぶん……深結のことも忘れるんでしょう?」

 インディゴさんと頼さんは、無言で応じた。

「深結に会いたい――直にも、成長した深結を見せてあげたい。その後なら、全てを忘れてしまっても構いません」

 だって。

「直を忘れること」は、七年前にしようとして――中途半端に、失敗したことだったから。

「わかりました。それならわたくしたちもついていきます」

 言外に「逃げられたりしたら困るのでわたくしたちが監視します」という含みをもたせて、しかしインディゴさんは承認してくれた。

「はい、それでいいです」

 私も承認。そして。

「インディゴさん、頼さん――それに、直」

 私は、振り向いて――私が直と頼さんの間に立っているから大丈夫だ、たぶん――直の目を見つめて、手を握ろうとして、(くう)を掴む――

 ああ、本当に、掴むことはできないんだね、直。

 けれどふと気づいて、彼の左手に握る――剣の(ヒルト)を、そっと握ろうとする。

 今度は、掴める。ぎゅっと、握り締める。少し、温かい――気がした。

 そうして私は、またインディゴさんと頼さんのほうに向き直る。

 隣に立つ直は、私を見ていつものように――七年前までのように、少し困ったように笑って、そして頷く。

 私は言う。

「今日一日、また、よろしく――よろしく、お願いします」


 今日一日は、私の再生の道。

 一生――決して、思い出すことのないだろう、一日。

 とらわれ続ける〝過去〟を、そっと胸の奥に閉まって。

 前に進みだす、再生の日。


最近『クズの本懐』を読み終わりました.ああいうどろどろのぐちゃぐゃ大好きです.え? この話は?

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